主文
1被告が平成7年7月31日付けで原告に対してした,
(1)平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額を7億4341万3032円として計算した額を超える部分(2)平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度の法人特別税の更正処分のうち,課税標準法人税額を2億7091万1000円として計算した額を超える部分をいずれも取り消す。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告が平成7年7月31日付けで原告に対してした,
1平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額1億6589万8112円,納付すべき税額5315万5100円を超える部分2平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度の法人特別税の更正処分のうち,課税標準法人税額5434万3000円,納付すべき税額135万8500円を超える部分をいずれも取り消す。
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第2事案の概要
本件は,被告が,原告の平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度における法人税及び法人特別税について,原告が株式を低廉な価額で取得したことにより発生した経済的利益を益金の額に算入すべきであるとして,更正処分をしたのに対し,原告がこれを不服として,上記各処分のうち申告額を超える部分の取消しを求めている事案である。
1法令の定め
法人税法(昭和40年法律第34号。
ただし,平成4年法律第34号及び同年法律第39号による改正前のもの。
以下同じ。)22条1項は,内国法人の各事業年度の所得の金額について,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨規定する。
そして,同条2項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨規定している。
2前提となる事実(これらの事実はいずれも当事者間に争いがない。)(1)原告(平成13年8月1日変更前の商号は平山企画株式会社)は,平成3年3月27日,平山不動産株式会社(以下「平山不動産」という。)の代表取締役であり,原告代表者Aの父であるBとの間で,同年10月20日に同社の発行済みの全株式4万株(以下「本件株式」という。)を譲り受ける旨の株式売買約定書(以下「本件売買約定書」といい,この約定書に係る本件株式の売買契約を「本件売買契約」という。)及び株式評価合意書(以下「本件評価合意書」という。)を取り交わし,また,同年3月20日,B及び平山不動産との間で,覚書(以下「本件覚書」という。)を取り交わした。
上記各文書の概要は,次のとおりである。
ア本件売買約定書
aBは,同人の所有する本件株式を原告に売り渡し,原告はこれを買い受ける。
b本件株式の売買価額は,本件評価合意書に基づき,9億4328万円とする。
c原告は,平成3年3月27日に,Bに対し,売買代金の1割に当たる9432万8000円を手付金として支払い,同年10月20日に売買代金の残金8億4895万2000円を支払う。
dBは,上記残金の支払を受けると同時に,本件株式を原告に引き渡す。
ただし,実際の引渡しは,平山不動産の銀行借入金に対するBの個人保証を解除した後とする。
イ本件評価合意書
本件株式の評価に当たっては,複成原価法である純資産価額方式を採用し,平山不動産の平成2年8月から同年12月までを1事業年度とみなし,次の評価事項等を加味して1株当たりの純資産価額を算出する。
a減価償却資産については,平成2年12月現在の帳簿価額の70パーセント相当額で評価する。
b平山不動産が所有する別紙物件目録記載1の土地(以下「α土地」という。)及び同目録記載2の土地(以下「β土地」という。)については,相続税路線価(以下,単に「路線価」という。)で評価することとし,α土地については貸家建付地であることから27パーセント減額して3億3882万2000円と評価し,β土地については3億1878万円と評価する。
c平山不動産が所有する原告の株式12万株については,原告の平成2年7月期における資本金等の金額を基に,確定配当及び賞与を控除し,原告が所有する平山ビルサービス株式会社(以下「平山ビルサービス」という。)の株式の含み益を加算した金額に100分の50を乗じて評価する。
なお,平山ビルサービスの株式3万6000株は,7318万8000円と評価する。
d1株当たりの純資産価額の計算については,相続税評価額の計算明細書を使用して計算し,算出された相続税評価額による純資産価額から評価差額(相続税評価額による純資産価額から帳簿価額による純資産価額を控除した金額)の51パーセントを法人税額等相当額(清算所得に対する法人税,事業税,都道府県民税及び市区町村民税額をいう。
以下同じ。)として控除し,本件株式1株当たりの価額を2万3582円とする(本件評価合意書添付の「第5表1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の明細書」による。)。
ウ本件覚書
本件売買契約書に定める本件株式の売買代金9億4328万円は,平山不動産の平成2年12月31日現在の財務諸表に基づいて,本件評価合意書により算出されたものである。
本件株式の売買代金は,平山不動産の平成3年7月期の確定決算書が作成され次第,同書における利益に基づいて修正し,過不足金は速やかに精算されるものとするが,当初の利益と同書における利益の差額が当初売買代金の5パーセント以内であるときはこの限りでない。
(2)本件株式の売買に関する経緯等
ア原告は,平成3年10月20日,本件売買契約書に従って,Bに残金を支払い,本件株式の引渡しを受けた。
イ原告は,平成4年7月期決算報告書に,本件株式を投資有価証券9億4328万円として計上した。
ウ本件評価合意書に基づいて作成した平山不動産の平成2年8月1日から同年12月31日までの決算書(以下「本件仮決算書」という。)記載の「当期利益」は20億6842万1308円であり,同社の平成3年7月期決算報告書(以下「本件決算報告書」という。)記載の「法人税等控除前当期利益」は20億2289万6197円である。
なお,本件仮決算書の貸借対照表には,この段階では債務が確定していないBに対する役員退職金1億0150万円が「未払退職金」として負債の部に計上されている。
また,本件仮決算書によれば,資産の部に計上されている借室権利金は3426万円である。
エ以上のとおり,平山不動産の平成3年7月期の利益は,本件仮決算書の利益に比べ,4552万5111円減少したが,上記減少額は,本件売買契約書による本件株式の売買代金9億4328万円の5パーセントに相当する4716万4000円を下回ったため,Bと原告は,前記(1)ウの本件覚書に基づく過不足金の精算を行わないことで合意した。
オさらに,本件株式に関しては,次の事実が認められる。
a本件株式は,証券取引所に上場されておらず,気配相場のある株式にも当たらない。
b本件株式には評価の参考となる売買実例はなく,本件株式は公開途上にある株式でもなく,平山不動産と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額も見当たらない。
c平成2年7月期において,原告の期末現在の発行済み株式総数は20万株であり,そのうち平山不動産の持分は12万株である。
d平成2年7月期において,平山ビルサービスの期末現在の発行済み株式総数は4万株であり,そのうち原告の持分は3万6000株である。
(3)課税処分等の経緯
アa原告は,平成4年10月30日,被告に対し,原告の平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税について,別表1の確定申告欄記載のとおり確定申告をした。
なお,原告は,いわゆる青色申告法人であり,本件事業年度の法人税も青色申告によって行った。
bこれに対し,被告は,平成7年7月31日付けで,別表1の更正処分欄記載のとおり更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)を行うとともに,過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
cなお,本件法人税更正処分の通知書(以下「本件更正通知書」という。)には,更正の理由として,次のとおり記載されていた。
「貴社はBと平成3年3月27日に平山不動産株式会社の全株式を
943,280,000円で譲り受ける契約をし,平成3年10月20日に全株式を譲り受けていますが,当該株式価額の評価額の算定において,評価会社の保有する土地の評価を平成2年の路線価格を用い,全ての減価償却資産を簿価の70%で評価し,また,評価差額に対する法人税額等に相当する金額51%を控除する等の誤りが認められます。
そこで,当該株式価額の算定について,当該株式は非上場株式で気配相場がなく,売買実例等他の類似する株式もないこと,評価会社の保有する土地は下落傾向の強い地域であること等から土地の価額は平成3年分の路線価を時価として純資産方式で行い再計算したところ,1,531,044,000円となり当初の契約金額との差額587,764,000円が受贈益として計上もれとなりますので,同金額を当期の所得金額に加算しました。」
イa原告は,平成4年10月30日,被告に対し,湾岸地域における平和回復活動を支援するため平成2年度において緊急に講ずべき財政上の措置に必要な財源の確保に係る臨時措置に関する法律(平成3年法律第2号)に基づき,原告の平成3年8月1日から平成4年7月31日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の法人特別税について,別表2の確定申告欄記載のとおり確定申告をした。
bこれに対し,被告は,平成7年7月31日付けで,別表2の更正処分欄記載のとおり更正処分(以下「本件法人特別税更正処分」という。)を行うとともに,過少申告加算税の賦課決定処分を行った(以下,本件法人税更正処分及び本件法人特別税更正処分を併せて,「本件各更正処分」という。
ウ原告は,平成7年9月28日,国税不服審判所長に対し,上記ア及びイの各処分を不服として審査請求を行った。
これに対し,国税不服審判所長は,平成10年7月6日,上記審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(以下「本件裁決」という。)。
3本件各更正処分の根拠(適法性の主張)
被告が主張する原告の本件事業年度に係る法人税の所得金額は8億6449万7039円(このうち,本件株式の低額譲受けに係る受贈益は6億9859万8927円,その他の所得金額は1億6589万8112円),納付すべき税額(確定申告に係る法人税額を控除する前のもの)は3億2643万7800円であり,その計算根拠は,別表3のとおりである。
また,被告が主張する原告の本件課税事業年度に係る法人特別税の課税標準法人税額は3億1631万7000円,納付すべき税額(確定申告に係る法人特別税額を控除する前のもの)は790万7900円であり,その計算根拠は,別表4のとおりである。
さらに,本件株式の低額譲受けに係る受贈益に関する被告の予備的主張に基づいて算定した原告の本件事業年度に係る法人税の所得金額は11億4387万3395円(このうち,本件株式の低額譲受けに係る受贈益は9億7797万5283円,その他の所得金額は1億6589万8112円)であり,原告の本件課税事業年度に係る特別法人税の課税標準法人税額は4億2819万2375円である。
これに対し,本件法人税更正処分は,所得金額を7億5366万2112円(このうち,本件株式の低額譲受けに係る受贈益は5億8776万4000円,その他の所得金額は1億6589万8112円)とするものであり,本件法人特別税更正処分は,課税標準法人税額を2億7475万4000円とするものであって,いずれも上記各金額を下回るから適法である。
(なお,原告は,被告が本件各更正処分の根拠として主張する各項目の金額のうち,本件株式の低額譲受けに係る受贈益を所得金額に計上した点を除いて,明らかに争わないものと認められる。)
4当事者双方の主張
(被告の主張)
(1)本件株式の時価を求める必要性について
本件売買契約は,売主を原告代表者のAの父であるB,買主をAが代表者を務める原告として,親密な同族関係者間における平山不動産の経営権の移転を目的として成立したものであって,利害関係が相反する第三者間の市場取引とは異なる。
また,本件株式の売買においては,原告代表者であるAとその父であるBの間で,評価時点,評価方法及び個別の資産の評価の内容等を取り決め,それに基づいて作成した本件評価合意書により算出した1株当たりの金額を基に,本件株式の売買価額を算定していることからすれば,本件株式の売買価額は,特定の同族関係者間でのみ成立する任意の方法及び条件により決定されたものであり,経済的合理性を追求した市場価額とは認められない。
しかも,本件評価合意書における評価方法は,減価償却資産を一律に30パーセント減額して評価するなど,不合理なものであることが認められる。
さらに,平山不動産の評価時点が平成2年12月末日であり,平山不動産の保有する原告の株式及び原告の保有する平山ビルサービスの株式の評価の基となる財務諸表として平成2年7月期のものが使用されていることからすれば,本件株式の売買価額が,上記評価時点から約10か月を経過した本件株式の引渡しの時点における時価と乖離していることは,容易に推測できるところである。
このように,本件株式の売買は,利害関係が相反する者の間で経済的合理性を追求して行われたものとは認められず,その価額も合理的な評価に基づく時価とはいえないから,適正な価額,すなわち,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額を求める必要がある。
そして,本件においては,原告による本件株式の購入価額が本件株式の譲受けの時点における適正な価額(時価)に比して低廉であるか否かを検討する必要があり,具体的には,本件株式の評価時点及び時価の算定方法を検討すべきこととなる。
(2)本件株式の評価時点について
ア本件株式の売買価額が低廉であるか否かの基準とすべき本件株式の時価は,収益の実現する引渡しの日である平成3年10月20日時点における価額とすべきである。
すなわち,受贈益は,発生の基となる資産の移転があった時点で収益に計上すべきであり,当該資産は,その移転の時点における価額で評価されるべきであるから,本件株式の取得に係る受贈益は,法人税の課税所得の計算上,本件株式の引渡しの日における時価に基づいて算定すべきである。
また,本件株式の売買価額は,本件売買契約の締結の日である同年3月27日には確定しておらず,本件株式の引渡しの日である同年10月20日に確定したものと認められることからも,本件株式の売買価額が低廉であるか否かを評価する時点を同日とすべきことが明らかである。
イこれに対し,原告は,本件評価合意書が本件株式の評価時点を平成2年12月31日としたことは合理的であると主張するが,この時点を評価時点とした場合,引渡しの時点との間に約10か月の間隔が生じてしまい,引渡しの時点における本件株式の時価が正しく反映されないことからも,原告の主張する評価時点は合理性がないというべきである。
(3)本件株式の評価方法について
ア法人税法における評価方法
法人税法においては,非上場株式の評価方法について一律に定めた規定はないが,次のa及びbの各事情に照らせば,少なくとも同族株主が支配する子会社の株式の場合には,基本的には純資産価額方式が最適であり,この方法を用いる場合には,単に解散を前提とした処分価値を求める評価によるべきではなく,企業継続を前提とした時価純資産価額方式によるべきである。
a法人税法における株式の評価の目的は,経済取引における当該株式の交換価値を求めるものであり,売買当事者は特段の事情がない限り,当該会社の事業活動の継続を前提に株式を取引するのであるから,その評価は,基本的には企業継続(動的)であることを前提とすべきであって,清算する企業(静的)であることを前提とすべきではない。
そうすると,法人税法上,非上場株式を純資産価額方式で評価する場合,評価対象会社が解散することを前提としないときは,株式の価値としての会社の純資産価額は,単なる処分価額ではないというべきである。
b(a)また,法人税法上,非上場株式で気配相場のないものの価額を求める評価方法は,明文で規定されておらず,法人税基本通達(昭和44年5月1日付け直審(法)25国税庁長官通達。
ただし,平成12年6月28日付け課法27による改正前のもの。
以下同じ。)9114及び9115において,評価損を計上する場合の執行上の扱いが定められているのみであるが,評価損を算定する場合の時価も,資産を譲渡した場合の時価も,ともに客観的交換価値としては同じであるから,上記通達の考え方は,譲渡時の時価を求める場合にも,基本的に準用されるべきものと考えられる。
(b)そこで,法人税法基本通達の定めを見ると,同通達9114は,1売買実例のあるもの,2公開途上にある株式で上場等に際して株式の公募等が行われるもの,3株式発行法人と類似する法人の株式の価額があるもの,のいずれにも該当しない場合については,当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了のときにおける1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額をもって当該株式の価額とすることとしており,非上場株式の期末時価を求める場合の具体的な評価方法は定めていないものの,非上場株式を評価する場合の指標として,純資産価額が一般的と考えられることを明らかにしている。
そして,この場合の純資産価額は,法人税法の考え方からすれば,
前記aのとおり,単なる処分価額ではなく,時価をもって算出すべきである。
(c)一方,法人税法基本通達9115においては,課税上弊害がない場合に限り,1株式を保有する法人が評価対象会社にとって「中心的な同族株主」に該当するときは,評価対象会社は「小会社」に該当するものとして評価すること,2評価対象会社が保有する土地及び上場有価証券は当該事業年度終了の時における価額によることなど一定の条件を付して財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達)の例によって算定しているときは,特例的にこれを認めることとしている。
そして,上記1に関して,財産評価基本通達において「小会社」と
して評価するということは,評価方法としては純資産価額方式を採用するということであり,法人税の立場からすれば,親会社が100パーセント子会社の株式を評価する場合など,同族株主に支配される会社を当該同族株主が評価する場合,当該会社の株式の価値が当該会社の資産価値と密接な関係にあることから,純資産価額方式を最も適切な評価方法として採用することが求められているものである。
また,上記2の条件は,土地について,一般の市場価額と相続税評
価による土地評価額の間に開きがあり得ることから,これを是正することとしたものであり,法人税法上,非上場株式の価額を求める場合の資産評価が,基本的には一般の市場価額を求めるものであることが如実に示されている。
さらに,法人税法基本通達9115が「課税上弊害がない限り」と
したのは,財産評価基本通達を援用した評価が,状況によっては法人税法上の評価として不合理なものとなる場合が考えられるからであり,法人税法上は,財産評価基本通達を援用した評価が時価を反映しない場合,これを認めない立場をとっており,この点においても,法人税が基本的に資産を時価評価することが前提とされていることが窺われる。
(d)以上のとおり,法人税法基本通達9114及び9115の規定に照らせば,法人税法は,本件株式のような,非上場株式で気配相場のないものの評価方法として,資産を純資産価額方式により時価評価することを想定しているものというべきである。
イ本件に適用する評価方法
Bは,平山不動産の発行済株式の全部を保有している同族株主であり,譲渡後は原告がその立場に立つことになるから,平山不動産は原告の100パーセント子会社という関係になるところ,前記アb(c)のとおり,法人税の立場からすれば,親会社にとって100パーセント子会社の株式の価値をその純資産価額と切り離して考えられないことから,純資産価額方式が適合することとなる。
また,法人税法基本通達9115は,「課税上弊害がない場合」に限り適用されるものであり,子会社が含み益の極めて多い土地を保有している場合は,これに該当し,子会社の株式の評価に土地の含み益を反映されるために,法人税法基本通達9114の定めを適用すべきであるところ,本件についても,平山不動産及び同社が株式を保有する原告は,多額の含み益を有する土地を持っており,その含み益を株式の価値に反映させる必要性があるから,上記の定めに従い,時価純資産価額方式により評価することが最も適切であると考えられる。
さらに,時価純資産価額方式を採用する場合,法人税法上は経済取引を前提とした動的な財産評価を行うべきであり,単に処分価値を求める評価を行うべきではない。
特に,本件株式の移転は,平山不動産の経営権の移転であるとともに,平山不動産が発行済み株式の60パーセントを保有する原告の経営権の移転を包含するものであって,事業活動の継続を前提とした会社資産の一括譲渡であることは明らかであるから,清算を前提とする評価を行うことは著しく不合理である。
そこで,被告は,本件株式の具体的な評価に当たっては,時価の算定が困難であることから,時価純資産価額方式を基本としつつ,土地等については,法人税法の執行上,条件付きで財産評価基本通達の例による純資産価額方式が認められているところでもあり,相続税の評価が時価より低めの評価額であることから,一部これを援用して,平山不動産の1株当たりの純資産価額等を基に算定した本件株式の評価を,後記(5)のとおり主位的に主張するものである。
しかしながら,原告が評価額を下げることのみに拘泥した主張をしていることから,被告は,法人税の本来の立場に立ち返り,可能な限り資産を市場価格による時価で評価して純資産価額を求める方法により算定した本件株式の評価を,後記(6)のとおり予備的に主張するものである。
ウ原告の主張に対する反論
a原告は,商法における株式の評価理論において,解散を前提とした処分価値を基準とする時価純資産価額方式を採用する見解があることを強調し,株式の時価について,商法と法人税において異なる時価を観念することはできないとして,処分価値を基準とする時価純資産価額方式を採用すべきであると主張する。
しかし,非上場株式について画一的な評価方法が確立されていない状況下において,商法と税法により評価目的が異なる場合には,それぞれの目的に適合した合理的な評価方法を選択することが適切であり,特定の評価方法を一律に採用しなければならないということはできない。
したがって,法人税の更正処分の適否を争う本件においては,法人の所得金額を算定するという法人税法の目的に沿った評価方法により本件株式の評価を行うべきであるところ,被告の主張する評価方法は,法人税法の目的に沿った合理的な方法というべきであるから,本件株式の評価方法として適切と認めることができる。
b原告は,解散を前提とした処分価値を基準とする純資産価額方式が合理的であるとし,この考えを前提に作成した本件評価合意書に基づいて算出した本件株式の売買価額が適正である旨主張する。
しかし,解散価値を基準とする純資産価額方式は,本件株式のよう
に,企業継続を前提とした株式の評価において,合理的な評価方法といえないことは明らかである。
また,本件評価合意書は,平山不動産が継続企業でないという前提で作成されている点で合理的でないことに加え,売買当事者であるB及び原告代表者のAが依頼した条件及び意向に基づいて評価,作成されたものであり,その評価は恣意的なものというほかない。
さらに,本件評価合意書における本件株式の評価は,1本件株式の評価時点と引渡しの日,本件売買契約の締結時点と引渡しの日の間隔が,通常の取引では考えられないほど開いていること,2本件覚書において,帳簿価額の変動を売買価額の変更の条件としており,含み損益等の発生を度外視していること,3平成2年12月末の仮決算書に,退職の事実がないにもかかわらず未払退職金を計上するなど,正当な時価の算定がされていないこと,4清算所得に対する法人税額等相当額を控除して評価額を大幅に減額していること,5平山不動産が保有する原告の株式の評価において,原告の純資産価額に基づく評価額に100分の50の割合を乗じており,さらに,原告の平山ビルサービスに対する出資の評価においても,同様の割合を乗じていること,等の点においても,不合理であるといわざるを得ない。
したがって,本件評価合意書における本件株式の評価方法は,合理的なものとはいえず,本件売買契約は,利害関係が相反する当事者間で純粋に経済的合理性を追求して行ったものであるということはできない。
これに対し,原告は,再調達価額による時価純資産価額方式に対して批判的な学説等を引用して,原告の評価方法が正当である旨主張するが,これらは商法上の株主間における紛争を念頭に置いたものであって,法人税の課税所得の算定において参考となるものではないから,原告の上記主張は失当である。
c以上のとおり,法人税における非上場株式の評価が問題とされている本件においては,単に処分価値を求める評価を行うべきではなく,企業継続を前提として時価純資産価額方式によって本件株式の評価を行うべきであって,法人税法上も解散を前提とした処分価値を基準とする時価純資産価額方式を最も合理的な方法として採用すべきであるとする原告の主張は失当である。
(4)法人税額等相当額の控除
法人税における非上場株式の評価の場合,当該株式の価額は,経済取引を前提とした客観的交換価値,すなわち,利害が相反する当事者間における取引価額であるところ,当該株式の取引当事者としては,特段の事情がない限り,評価対象会社の事業活動の継続を前提に株式を売買していると考えるべきであり,そのような場合には,株式の取引価額を決定するに当たり,会社の解散を前提として清算所得に対する法人税額等相当額を控除した純資産価額によることは通常考えられないから,企業継続を前提として時価純資産価額方式により株式の評価額を求める場合には,法人の資産の簿価と時価との差額(以下「評価差額」という。)に対する法人税額等相当額を控除せずに純資産価額を計算すべきである。
このことは,法人税の執行上の取扱いに関して,平成12年の法人税法基本通達の改正により,同通達9114の(3)において,純資産価額の計算に当たり評価差額に対する法人税額等相当額は控除しないことが明記され,従前の考え方が明確にされたことからも明らかである。
そうすると,本件株式については,1本件株式の所有権移転が実質的に平山不動産の経営権の移転であって,現に原告は,本件株式を買い受けた後,平山不動産の全株式を保有し続けていること,2平山不動産は,本件株式の引渡しの日の前後において,安定した業績を示しており,同日の時点で,近い将来,業績の悪化等により解散する状況にあったとはいえず,現にその後も解散した事実はないこと等の事実に照らせば,本件売買契約は,事業活動の継続を前提とした会社資産の一括譲渡であることは明らかであるから,本件株式については,清算所得に対する法人税等相当額を控除せずに純資産価額の計算をすべきである。
これに対し,原告は,本件株式の売却が困難であり,清算を前提にしなければ投下資本を回収できないことや,本件のように法人が株式を取得する場合,これにより得られる利益は,配当又は清算による残余財産の分配のいずれかであることを挙げて,本件株式の評価において,清算を前提として清算所得に対する法人税額等相当額の控除をすべき旨主張するが,本件売買契約が経営権の移転であって,清算を前提にしていなかったことは明らかであり,原告が現実には清算を前提としない行為をとりながら,訴訟上では清算を前提とすべきである旨主張することは,自己の行為と矛盾する主張を行うものであって,失当といわざるを得ない。
(5)本件株式の具体的な評価額に関する主位的主張
本件株式の評価額は,別表5の「被告主位的主張」欄記載のとおり,16億4187万8927円となる。
ア評価時点
前記(2)のとおり,本件株式の売買価額が時価に比して低廉であるか否かの基準とすべき時価は,本件株式の引渡しの日である平成3年10月20日時点における価額であり,同日に最も近い平山不動産の事業年度終了の時における同社の純資産価額等を基に算定される価額によるべきである。
したがって,平山不動産の純資産価額は,同社の平成3年7月期に係る本件決算報告書に基づいて算定すべきものと認められる。
イ評価方法
時価純資産価額方式により評価する。
なお,具体的な評価に当たっては,1土地については,評価の安全性を考慮し,路線価が時価の70ないし80パーセントをめどに作成されていることから,平成3年分の路線価を時価に代わるものとして採用し,2上場有価証券は一般の市場価額(市場の終値)を評価額とし,3繰延資産のうち,役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用で,支出効果がその支出の日以後1年以上に及ぶと認められるものについては,財産性がないものとして評価しないものとし,4Bが平成3年10月20日付けで退職していることから,同人に対する役員退職金を平山不動産の負債の額に含めることとした。
ウ評価額の内訳
a平山不動産の純資産価額16億4187万8927円
上記金額は,本件決算報告書の貸借対照表に基づいて,各資産及び負債を別表5の「被告主位的主張」欄記載のとおり評価し,資産の評価額合計45億8626万7305円から負債の評価額合計29億4438万8378円を控除した金額であり,各勘定科目の算定根拠は,次の(a)ないし(d)の各勘定科目については,以下に述べるとおりであり,また,そのほかの勘定科目については,本件決算報告書の貸借対照表のとおりである。
(a)有価証券2億5220万円
上記金額は,上場株式については証券取引所における平成3年10月20日(日曜日)の直近取引日である同月18日の取引価格の終値を,気配相場のある株式については公表された同日の最終約定値段を基に,別表8のとおり算定した価額である。
(b)土地7億6892万円
上記金額は,α土地の価額3億9321万5000円及びβ土地の価額3億7570万5000円の合計額であり,上記各土地の平成3年分の路線価を基に,別表11のとおり算定した価額である。
これに対し,原告は,β土地について,建築基準法上の容積率が
600パーセントであるにもかかわらず,容積率を500パーセント程度とし,路線価を個別補正により減額すべき旨主張するが,容積率を500パーセントとする根拠がないうえに,時価の8割程度とされる路線価について,路線価を採用する財産評価基本通達にもない個別補正によりことさら減額するものであって,不合理というほかない。
(c)平山不動産の所有する原告の株式7億0692万円
上記金額は,後記bの原告の純資産価額11億7825万4837円を,原告の発行済総株式数20万株で除して算出した1株当たりの金額5891円に,平山不動産の保有する株式数12万株を乗じて算出した金額である。
(d)未払退職金1億0150万円
上記金額は,平成3年10月20日に退職したBに対する役員退職金の額であり,負債の部に計上されるものである。
b原告の純資産価額11億7825万4837円
上記金額は,原告の平成3年7月期の決算報告書(以下「原告決算報告書」という。)の貸借対照表に基づいて,各資産及び負債を別表6の「被告主位的主張」欄記載のとおり評価し,資産の評価額合計61億5478万5964円から負債の評価額合計49億7653万1127円を控除した金額であり,各勘定科目の算定根拠は,次の(a)ないし(d)の各勘定科目については,以下に述べるとおりであり,また,そのほかの勘定科目については,原告決算報告書の貸借対照表のとおりである。
(a)別紙物件目録記載3の土地(以下「γ土地」という。)
1億8180万4000円
上記金額は,γ土地の平成3年分の路線価を基に,別表11のとおり算定した金額である。
これに対し,原告は,区分所有建物の敷地たる土地の評価におい
て,階層別効用率を加味すべきであるとして,路線価による評価額を30パーセント減額した金額で評価すべき旨主張するが,上記減額の根拠は明らかでなく,財産評価基本通達には階層別効用率により土地の評価を減額する定めはないことからも,原告の上記主張は理由がないというべきである。
(b)平山ビルサービスの株式 2億0660万
4000円
上記金額は,後記cの平山ビルサービスの純資産価額2億2956万2065円を平山ビルサービスの発行済み株式数4万株で除して算出した1株当たりの金額5739円に,原告の保有する株式数3万6000株を乗じて算出した金額である。
(c)有価証券(上場) 2億9717万
2240円
上記金額は,上場株式については証券取引所における平成3年10月18日の取引価格の終値を基に,別表9のとおり算定した価額であり,転換社債については,原告決算報告書のとおりである。
(d)施設利用権,保証料,組合加入料,プログラム料及び開発費
0円
上記各勘定科目については,前記イ3のとおり,評価しないことと
する。
c平山ビルサービスの純資産価額 2億2956万2065円
上記金額は,平山ビルサービスの平成3年7月期の決算報告書(以下「平山ビルサービス決算報告書」という。)の貸借対照表に基づいて,各資産及び負債を別表7の「被告主位的主張」欄記載のとおり評価し,資産の評価額合計6億1322万0326円から負債の評価額合計3億8365万8261円を控除した金額であり,各勘定科目の算定根拠は次のとおりである。
(a)有価証券 1億4913万
6080円
上記金額は,平山ビルサービスの保有する有価証券である上場株式
について,証券取引所における平成3年10月18日の取引価格の終値を基に,別表10のとおり算定した価額である。
(b)その他の勘定科目については,平山ビルサービス決算報告書のとおりである。
エ本件株式に係る受贈益相当額
以上のとおり,本件株式は,平山不動産の全株式であるから,その価額は同社の純資産価額と同額であり,原告は,時価16億4187万8927円の本件株式を9億4328万円で取得したのであるから,原告には,時価と購入価額との差額に当たる6億9859万8927円の受贈益が発生したものというべきである。
(6)本件株式の具体的な評価額に関する予備的主張
被告は,本件株式の評価が過大にならないよう,上記(5)の評価額を主張したものであるが,前記(3)イのとおり,原告が評価額を下げるためだけに拘泥した主張をすることから,法人税法の本来の立場に立ち返り,原告が本件各更正処分に係る調査の際に被告に提出した資料をも斟酌し,できる限り時価と認められるものを採用して求めた本件株式の価額を予備的に主張するところ,その価額は,別表5の「被告予備的主張」欄記載のとおり,19億2125万5283円となる。
ア評価時点
前記(5)アと同様に,平成3年10月20日時点における価額を求める。
イ評価方法
前記(5)イと同様に,時価純資産価額方式によって評価する。
なお,争いのある主要な勘定科目の評価に関する被告の主張は,次のaないしgのとおりである。
a土地について
土地については,法人税法基本通達9115(2)の規定からも明らかなとおり,一般の市場価額に基づき評価することが求められている。
一方,路線価は,取引によらない偶発的な課税原因から生ずる相続税の計算上,画一的に使用されるものであり,経済的合理性に基礎を置く法人税の所得の金額の算定に当たっては,市場の動向や当該法人の経営判断に基づいてその価値を判断すべきであるから,本来的な時価として適用されるものではない。
特に,本件株式の時価を算定に当たり基礎となる評価対象地には,平山不動産の保有する土地のみならず,原告の所有する土地も含まれており,路線価により評価した場合には過少評価となる懸念もあるところであって,本件株式の時価をより正確に計算するためには,売買実例等に基づく市場価格により評価する方が望ましいというべきである。
したがって,土地の時価の算定に当たっては,路線価によらない方法によることとする。
そして,国税不服審判所長は,本件裁決において,α土地,β土地及びγ土地(以下,併せて「本件各土地」という。)について,近隣の売買実例,公示価格及び基準地価格を基に,時点修正及び地域要因格差率等の適用による補正を行って標準的画地価格を算出し,各土地の個別事情を考慮したうえで時価を求めているところ,このような算定方法は,客観的で一般的にも妥当性の認められた方法であり,本件裁決において使用されている売買実例の取引日がいずれも平成3年10月20日に近いことから,本件裁決において使用されている本件各土地の時価算定の際の資料は,極めて客観性の高いものということができる。
そこで,本件各土地については,本件裁決における計算方法に則り,評価時点を同日に修正して再計算した金額を時価として主張する。
これに対し,原告は,上記評価方法が到底認められないとか,専門的知識等を持たない者によって行われたものであり,調査義務を尽くしておらず違法であるなどと主張するが,上記評価は,国土庁で定めた土地価格比準表(昭和50年1月20日付け50国土地第4号国土庁土地局地価調査課長通達「国土利用計画法の施行に伴う土地価格の評価等について」。
以下「比準表」という。)を使用した比準方式に基づいた,客観的かつ公正で合理的な評価方法であり,個別要因等の判断も国税不服審判所長において探知した事実に基づき行われているものであって,違法とされる余地は全くない。
b債権について
債権については,債権者が債権全額を回収できる権利を有しており,債権者にとってその経済的価値は,回収を放棄しない限り,債権額そのものであって,単に債務者の財務状況が悪いというだけで,貸倒れ等の事実の発生がない場合には,債権が回収不能の状況にあると評価できないことは明らかであり,当該債権の評価額を変更すべきでないと考えられるから,貸倒れ等の事実がない債権については,帳簿価額により評価することとする。
また,債権の評価損については,法人税の課税所得の計算上損金の額に算入することは認められていないが(法人税法33条),これは,金銭債権のように評価が困難なものについて評価損の計上を認めれば,客観性,確実性が担保されず,課税の公平が実現できないことに基づくものであるから,このような評価の困難な金銭債権については,貸倒れ等の事実の発生があるまでは,その評価額を変更すべきではない。
c退職金債務について
純資産価額方式による評価に当たっては,評価の時点においては将来の債務負担の基礎となるべき法律関係が成立しているにすぎず,その具体的な負担の時期や金額等を確定できないものについては,総資産の額から控除すべき負債に含めるべきではないから,退職金債務についても,評価の時点において退職の事実がない場合には,単なる見込額を負債に計上すべきではない。
d建物及び工具器具備品について
建物及び工具器具備品については,帳簿価額を評価額とする。
すなわち,法人税法上の評価については,相続税の場合と課税目的が異なる以上,時価評価を行う際,常に財産評価基本通達をそのまま適用することはできないのであって,物件ごとに多様な状況があるにもかかわらず,原告が主張するように帳簿価額から一律に30パーセント減額して評価する必要はないから,建物及び工具器具備品については,帳簿価額を評価額とすべきである。
e内装設備について
内装設備については,上記dと同様の理由により,帳簿価額を評価額とする。
なお,原告は,国税不服審判所における裁決例を引用して,内装設備のうち,建物と併せて賃貸しているものについて,独立の所有権の対象とならず,賃貸借契約終了の際には賃借人の費用で撤去しなければならない旨の条項のあるものもあるとして,そのような定めのある内装設備の評価額は0円とすべきであると主張するが,上記裁決は,相続税における附属設備の評価の事例であり,法人税における評価にそのまま適用できるものではないところ,本件の場合,評価の時点において資産が存在し実際に使用されていることからすれば,企業継続を前提とする評価において評価額が0円ということはあり得ないから,原告の上記主張は失当である。
fゴルフ会員権について
ゴルフ会員権については,ゴルフ会員権取引業者の間における取引相場価格が形成されているものについては,取引業者間での買相場の価額に基づいて評価し,それ以外のものについては,帳簿価額を評価額とする。
なお,原告は,被告の挙げる取引事例の妥当性が不明であること等を理由に,相続税の通達を基に,ゴルフ会員権を取引相場の7割で評価しているが,被告の挙げる取引事例は,ゴルフ会員権の取引相場を照会した結果の回答であり,客観的交換価値として妥当なことは明らかであるし,法人税における評価は,あくまで客観的交換価値を求めているものであって,評価の安全を考慮する相続税の場合と同様の調整をする必要はないから,原告の主張は失当であって,取引相場がある場合はそれを評価額とし,それ以外は帳簿価額を評価額とすべきである。
g貸倒引当金及び賞与引当金について
前記cのとおり,純資産価額方式による評価に当たり,総資産から控除すべき負債は,現実に一定額の消極的経済価値を有する具体的な債務として存在するもののみであり,貸倒引当金及び賞与引当金は,会計上の負債性引当金に相当するものの,現実に債務として確定しているわけではないから,取引相場のない株式の純資産価額の算定に当たり,これを負債として計上すべきではない。
ウ評価額の内訳(△はマイナスを表す。以下,同じ。)
a平山不動産の純資産価額19億2125万5283円
上記金額は,本件決算報告書の貸借対照表に基づいて,各資産及び負債を別表5の「被告予備的主張」欄記載のとおり評価し,資産の評価額合計48億7021万9261円から負債の評価額合計29億4896万3978円を控除した金額であり,各勘定科目の算定根拠は,次の(a)ないし(o)の各勘定科目については,以下に述べるとおりであり,また,そのほかの勘定科目については,本件決算報告書の貸借対照表記載のとおりである(なお,この項において,「帳簿価額」とは,本件決算報告書の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)。
(a)現金・預金16億6447万
0650円
上記金額は,外貨建てに係る現金・預金の帳簿価額2万8733・70米ドルを平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円)で換算した金額368万6533円と,邦貨建てに係る現金・預金の帳簿価額16億6078万4117円を合計した金額である。
(b)有価証券2億5220万円
上記金額は,前記(5)ウa(a)の主位的主張における金額と同額である。
(c)貸倒引当金0円
前記イgのとおり,貸倒引当金は負債として計上しない。
(d)建物551万7372円
上記金額は,帳簿価額である。
なお,原告は,賃貸物件であるとして,帳簿価額を30パーセント減額して評価しているが,このような評価が相当でないことは,前記イdのとおりである。
(e)内装設備6469万7058万
上記金額は,帳簿価額1億3562万4137万円から,後記(k)の借室権利金の評価に含めた物件に係る部分の帳簿価額7092万7079円を控除した後の金額である。
(f)工具器具備品1857万
9075円
上記金額は,帳簿価額である。
なお,原告は,賃貸物件であるとして,帳簿価額を30パーセント減額して評価しているが,このような評価が相当でないことは,前記イdのとおりである。
(g)α土地5億6523万円
上記金額は,前記イaのとおり,本件裁決における国税不服審判所
長の算定方法中,時点修正率を売買事例地については1・0390を1・0096に,公示地については0・9883を0・9604にそれぞれ修正し,その他は本件裁決と同様の算定方法により求めた金額である。
これに対し,原告は,対象地が高度商業地でないこと,貸家建付地
について評価減を行う必要があること等を理由として,被告の評価額を補正すべき旨主張するが,これらの補正は,国土庁の定めた比準表にないものであったり,原告の独断に基づくものであるなど,補正の必要性がないばかりでなく,補正の格差率の根拠も不明であって,客観性が全く認められないから,原告の上記主張は到底採用することができない。
また,原告は,平成11年を評価時点とする鑑定評価書に基づいて,原告の従前の主張に係るα土地の評価額よりさらに低額となる旨主張するが,上記鑑定評価書における個別的要因の標準化補正や地域格差を判断した内容及び根拠が不明であること,本件土地の評価時点である平成3年10月から平成11年までの間,格差率の変動が認められないと決めつけたうえで,同年の鑑定評価書の格差率を用いて本件土地を評価していること等に照らせば,原告の上記主張は到底採用することができない。
(h)β土地5億4504万1000円
上記金額は,前記イaのとおり,本件裁決における国税不服審判所
長の算定方法中,時点修正率を売買事例地については1・0015を0・9568に,基準地については0を0・9552に修正し,その他は本件裁決と同様の算定方法により求めた金額である。
これに対し,原告は,β土地は居住用が最有効の状況にあること,
最寄り駅まで遠いことから,被告の評価額を補正すべき旨主張するが,これらの主張は,事実を誇張したり,実態と異なる原告の主観に基づくものであるばかりでなく,補正の格差率の根拠も不明であり,客観性が全く認められないから,到底採用することができない。
(i)出資金(原告株式)5億7276万円
上記金額は,後記bの原告の純資産価額9億5479万5171円を原告の総株式数20万株で除して算出した1株当たりの金額4773円に平山不動産の保有株式数12万株を乗じて算出した金額である。
(j)差入保証金7億8093万0896円
上記金額は,帳簿価額7億8238万5256円のうち,賃貸借の終了時に返還されないδビル9階分の一部の保証金を控除した残額である。
(k)借室権利金1億8659万6100円
上記金額は,原告が被告に対し,本件各更正処分に係る調査の際に
提出した,平成4年当時の売買価額に基づいて評価した金額を記載した資料に基づき評価した金額のεビル3階分1億5179万6100円及びζビル1階分3480万円の合計額である。
(l)減価償却費△648万円
上記金額は,減価償却資産について,平成3年8月1日から同年10月20日までの期間に対応する減価償却費であり,資産の額から控除するものである。
(m)賞与引当金 0円
前記イgのとおり,賞与引当金は負債として計上しない。
なお,原告は,賞与引当金は一種の未払金として措置されたもので
あるとして,既に経過した期間に対応する額の未払金相当額を賞与引当金の額として負債に計上すべき旨主張するが,平成3年10月20日という評価時点において,その年末の賞与の支給額を計算することができない以上,原告の計算方法は現実的ということはできず,賞与引当金が現実に債務として確定していないことからも,これを負債として計上すべきではないから,原告の上記主張は失当である。
(n)法人税等引当金2億8319万0200円
上記金額は,法人税2億1516万2500円及び都民税4328万1400円並びに事業税2474万6300円を合計した金額であり,負債の部に計上されるものである。
(o)未払退職金1億0150万円
上記金額は,前記(5)ウa(d)の主位的主張における金額と同額であり,負債の部に計上されるものである。
これに対し,原告は,支給日が平成3年11月25日の未払退職金を新たに追加計上しているが,これらの未払退職金に係る者がいつ退職し,債務が確定したのか不明であるから,原告の主張する評価額は採用できない。
b原告の純資産価額9億5479万5171円
上記金額は,原告決算報告書の貸借対照表に基づいて,各資産及び負債を別表6の「被告予備的主張」欄記載のとおり評価し,資産の評価額合計58億9922万6298円から負債の評価額合計49億4443万1127円を控除した金額であり,各勘定科目の算定根拠は,次の(a)ないし(z)の各勘定科目については,以下に述べるとおりであり,また,そのほかの勘定科目については,原告決算報告書の貸借対照表記載のとおりである(なお,この項において,「帳簿価額」とは,原告決算報告書の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)。
(a)現金・預金10億1271万
8988円
上記金額は,外貨建てに係る現金・預金の帳簿価額4万3948・93米ドル及び10万0646・16オーストラリアドル(以下「豪ドル」という。)を,それぞれ平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円,1豪ドル100・85円)で換算した金額563万8647円及び1015万0164円と,邦貨建てに係る現金・預金の帳簿価額9億9693万0117円を合計した金額である。
(b)未成企画支出金970万8738円
上記金額は,帳簿価額2676万3138円のうち,Goldco DevelopmentsLtd.(以下「ゴールドコー社」という。)へ送金した不動産取得のための手付金1705万4400円について,平成3年10月20日の時点で,同社の資産状況,支払能力等に照らして全額が回収できないことが明らかであることから,同金額を帳簿価額から控除して算出した残額である。
(c)未収入金8738万6625円
上記金額は,外貨建て帳簿価額3万3214・65米ドル,2670・74豪ドル及び16万5367・5カナダドル(以下「加ドル」という。)について,平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円,1豪ドル100・85円,1加ドル113・07円)でそれぞれ換算した金額である426万1439円,26万9344円及び1869万8103円と,邦貨建て帳簿価額6415万7739円を合計した金額である。
これに対し,原告は,邦貨建て帳簿価額6415万7739円のうち,オーストラリアの関連会社であるThe Ferny’s Pty. Ltd.(以下「ファーニーズ社」という。)に対する未収入金である2052万7876円について,同社が債務超過にあったことが明らかであり,同社に対する債権を額面額で評価することはできないとして,額面額を減額して評価すべきであると主張する。
しかし,金銭債権については,貸倒れ等の事実がない場合,当初の
債権額で評価すべきことは前記イbのとおりであるところ,平成3年10月20日の時点で,ファーニーズ社が倒産等により法的整理がされた事実や,原告が債権放棄した事実はないから,上記未回収金について貸倒れ等の事実が発生したことは認められない。
また,原告は,ファーニーズ社が同月以後の損益計算書に照らし,
将来においても資力を回復して全額返済することは不可能であった旨主張するが,債権が貸倒れの状況にあるか否かは,評価時点で判断すべきであり,評価時点で知り得ない情報を基に評価時点での判断の適否を論ずることは失当である。
そして,同月の時点におけるファーニーズ社に対する債権の回収可
能性を見ても,同社が平成元年10月に設立され,実質的に活動したのは平成3年6月期であること,同期の役員報告書において,同社がオーストラリア不動産市場への更なる拡張を考えている旨記載されていること等に照らせば,同社に対する債権が,同社が実質的活動を開始した直後の同年10月に回収不能となるとは考えられないことからも,同社に対する債権を減額評価すべきであるとする原告の主張は失当である。
(d)仮払金433万6703円
上記金額は,仮払金の帳簿価額933万6703円のうち,原告が神奈川県秦野市ηの土地を購入する際に売主に支払った500万円について,同土地を平成元年7月28日に譲渡した際に原価に振り替えるべきであったものを失念してそのまま帳簿価額に計上していたことから,上記500万円を帳簿価額から控除した残額である。
(e)貸倒引当金0円
前記イgのとおり,貸倒引当金は負債として計上しない。
(f)建物1331万
6162円
上記金額は,帳簿価額2億1709万0226円から,後記(j)の土地の評価に含めたオーストラリアのマンションの帳簿価額2億0377万4064円を控除した残額である。
これに対し,原告は,賃貸物件の場合,自用物件に比べて流動性が
劣ることから,処分価値を基準として純資産を算定する場合には相当の減額をして評価することが必要であるとして,帳簿価額を30パーセント減額して評価するが,前記イdのとおり,そのような減額による評価を行うことは相当でないというべきである。
(g)内装設備1億9962万6901円
上記金額は,帳簿価額2億1485万4156円から,後記(t)の賃借借家権の評価に含めたビルに係る帳簿価額の合計額1522万7255円を控除した残額である。
これに対し,原告は,これらの内装設備について,賃貸借契約終了
の際に原告が原状回復義務を負うものであること,賃借建物に設置した物が独立した所有権の対象とならないこと等を理由として,内装設備の評価額は0円とすべき旨主張するが,前記イeのとおり,本件の評価時点において資産が実際に存在して使用されている以上,企業継続を前提とする評価額が0円ということはあり得ないから,内装設備は帳簿価額により評価することが相当である。
(h)工具器具備品7078万
2333円
上記金額は,帳簿価額8216万6558円から,後記(t)のビルに係る賃借借家権の評価に含めた帳簿価額の合計額1138万4225円を控除した残額である。
これに対し,原告は,建物と併せて賃貸している工具器具備品につ
いて,建物と同様の理由で帳簿価額を30パーセント減額して評価しているが,元来建物に付着するものではない動産の場合,建物と同様の理由により減額して評価する必要はなく,前記イdで述べたとおり,工具器具備品の場合,物件ごとに多様な状況があるにもかかわらず,帳簿価額から30パーセント減額して評価することは相当でないことからも,原告の上記主張は理由がない。
(i)γ土地2億0359万2000円
上記金額は,前記イaのとおり,本件裁決における国税不服審判所
の算定方法中,時点修正率を売買事例地については1・0721を0・9707に,基準地については0・9559を0・9203にそれぞれ修正し,その他は国税不服審判所と同様の算定方法により求めた金額である。
これに対し,原告は,格差率が不十分であること,階層別効用率を
加味していないこと等を理由として,被告の評価額を補正すべき旨主張するが,これらの主張は,比準表に定められた格差以上に補正を求めたり,比準表にない補正項目を独自の格差率で補正するなど,補正の必要がないばかりでなく,補正の格差率の根拠も不明であり,客観性が全く認められないから,原告の上記主張は到底採用できない。
(j)土地(その他)1億0488万4000円
上記金額は,オーストラリアのマンションの敷地について,原告の
評価額に基づき,外貨建て評価額104万豪ドルを平成3年10月20日時点の為替レート(1豪ドル100・85円)で換算した金額である。
(k)地上権2億3651万2710円
上記金額は,アメリカ合衆国サイパン島(以下「サイパン」とい
う。)の地上権(リース権)について,被告の本件各更正処分に係る調査の際に原告が提出した資料に基づき,1平方メートル当たりの単価を55米ドルとし,これを地積3万3517平方メートルに乗じた金額184万3435米ドルを,平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円)で換算した金額である。
これに対し,原告は,上記資料における地上権の評価額の単価が,
現地のブローカーにふっかけられた価格であるなどとして,地上権の価格を1平方メートル当たり10・79米ドルで算定すべき旨主張するが,現地のブローカーにより誤った価格を示されるといった原告の主張に沿う事実を窺わせる証拠がないことや,原告が本件各更正処分に係る調査時に被告に資料を提出した後,現在に至るまで地上権の評価の再確認をしていなかったこと自体,極めて不自然であること等に照らして,原告の上記主張を採用することはできない。
(l)出資金1億0953万5000円
上記金額は,太平洋クラブカントリー,立野クラシックゴルフ倶楽
部及び習志野カントリークラブのゴルフ会員権(帳簿価額の合計額2909万6000円)について,ゴルフ会員権取引業者間の買相場の価額に基づいて,それぞれ1800万円,2600万円及び2080万円と評価し,それ以外の出資金の帳簿価額合計4473万5000円と合計した金額である。
これに対し,原告は,上記各ゴルフ会員権を取引相場の7割で評価すべき旨主張するが,前記イfのとおり,被告の上記主張に係る金額は,ゴルフ会員権の取引相場を照会した結果の回答に基づくものであり,客観的交換価値として妥当なことは明らかであるから,原告の上記主張は失当である。
(m)差入保証金14億9793万5207円
上記金額は,帳簿価額15億6763万2707円から,後記(t)の賃借借家権の評価に含めた帳簿価額合計6669万7500円及び返還されない入会金に係る帳簿価額300万円を控除した残額である。
(n)投資備品1912万1692円
上記金額は,原告の主張額と同額である。
(o)投資有価証券(平山ビルサービスの株式)2億1895万2000円上記金額は,後記cの平山ビルサービスの純資産価額2億4331万3659円を平山ビルサービスの総株式数4万株で除して算出した1株当たりの金額6082円に,原告の保有株式数3万6000株を乗じて算出した金額である。
(p)投資有価証券(上場)2億9717万2240円
上記金額は,主位的主張に係る前記(5)ウb(c)記載の金額と同額である。
(q)投資有価証券(その他)3億7144万1315円
上記金額は,ファーニーズ社及びB.P.Resources Co.Ltd(以下「B.Pリソーセス社」という。)の評価額をそれぞれ1億2230万5837円及び9961万4928円とし,その余は原告の主張どおり1億4952万0550円として,それぞれ合計した金額である。
これに対し,原告は,ファーニーズ社が債務超過であるとして,純
資産価額方式により株式の価額を評価した結果,評価額は0円であると主張する。
しかしながら,原告は,ファーニーズ社について,債務超過である
旨主張するのみであり,同社が所有する不動産に係る原告の評価額662万5000豪ドルについても,ファーニーズ社の決算貸借対照表に同社が有する固定資産として,「Property, plant and eqipment」の項目において,「Freehold land」897万4351豪ドル,「Building」524万6436豪ドル,「Plant and eqipment」147万6784豪ドルが計上されているにもかかわらず,原告はオフィスビルの鑑定評価しか行っていないものと考えられ,評価の対象となる資産がどこまで含まれるのか不明であって,適正とはいえないから,原告の上記評価を採用することはできない。
したがって,被告は,ファーニーズ社の資産のうち,貸倒引当金及
び創業費を0円とし,その他は帳簿価額により評価して,純資産価額を算出したものである。
また,原告は,B.Pリソーセス社の純資産価額について,被告の主張する平成3年7月31日現在の貸借対照表のうち,リース権の価額を,原告の保有する地上権と同様に1平方メートル当たり10・79米ドルとして再評価しているが,前記(k)と同様の理由により,原告の再評価額は採用できない。
したがって,被告は,原告が本件各更正処分に係る調査の際に提出
したB.Pリソーセス社の純資産価額の算定表のうち,創立費及び開業費を0円として,純資産価額を算出したものである。
(r)長期貸付金6億6038万1992円
上記金額は,外貨建て帳簿価額425万5053・43豪ドル及び66万4217米ドルを,平成3年10月20日時点の為替レート(1豪ドル100・85円及び1米ドル128・30円)で換算した金額4億2912万2138円及び8521万9041円と,その他邦貨分の帳簿価額1億4604万0813円を合計した金額である。
これに対し,原告は,ファーニーズ社が債務超過であるとして,同
社に対する長期貸付金418万1822豪ドルについて,回収可能率54・07パーセントを考慮して減額評価すべき旨主張するが,金銭債権については,貸倒れ等の事実がない場合,当初の債権額で評価すべきことは前記(c)のとおりであるから,上記債権は帳簿価額で評価すべきである。
(s)長期立替金1億6279万9259円
上記金額は,外貨建て帳簿価額99万5564・51豪ドルを,平成3年10月20日時点の為替レート(1豪ドル100・85円)で換算した金額1億0040万2680円と,その他邦貨分の帳簿価額6239万6579円を合計した金額である。
これに対し,原告は,ファーニーズ社が債務超過であるとして,同
社に対する長期貸付金63万3102豪ドルについて,上記(r)と同様に減額評価すべき旨主張するが,金銭債権については,貸倒れ等の事実がない限り当初の債権額で評価すべきことは前記(c)のとおりであるから,上記債権は帳簿価額で評価すべきである。
(t)賃借借家権1億7000万円
上記金額は,θビル1階及び3階並びにιビル1階の借家権について,原告が本件各更正処分に係る調査の際被告に提出した資料に基づいて評価した金額の合計額である。
(u)保証料,組合加入金,プログラム料及び開発費0円
上記金額は,主位的主張に係る前記(5)ウb(d)記載の金額と同額である。
(v)減価償却費△2032万4000円
上記金額は,減価償却資産について,平成3年8月1日から同年10月20日までの期間に対応する減価償却費であり,資産の額から控除するものである。
(w)賞与引当金 0円
前記イgのとおり,賞与引当金は負債として計上しない。
(x)退職給与引当金309万6109円
上記金額は,負債の部に計上された帳簿価額である。
これに対し,原告は,要支給額の全額が負債に計上されなければな
らないとして,平成3年10月20日時点で給付すべき退職金の合計額を計上すべき旨主張するが,前記イcのとおり,評価時点において退職の事実がない場合,単なる見込額を負債に計上すべきではなく,法人が退職給与引当金として計上した金額のうち,法人税法の定める限度額の範囲内の金額を計上すべきであるから,原告の上記主張は失当である。
(y)株主配当金1000万円
上記金額は,原告決算報告書の利益処分計算書に記載された株主配
当金の金額であり,負債の部に計上されるものである。
(z)役員賞与金790万円
上記金額は,原告決算報告書の利益処分計算書に記載された取締役
賞与金の金額であり,負債の部に計上されるものである。
c平山ビルサービスの純資産価額2億4331万3659円
上記金額は,平山ビルサービス決算報告書の貸借対照表に基づいて,各資産及び負債を別表7の「被告予備的主張」欄記載のとおり評価し,資産の評価額合計6億2157万1920円から負債の評価額合計3億7825万8261円を控除した金額であり,各勘定科目の算定根拠は,次の(a)ないし(k)の各勘定科目については,以下に述べるとおりであり,また,そのほかの勘定科目については,平山ビルサービス決算報告書の貸借対照表記載のとおりである(なお,この項において,「帳簿価額」とは,平山ビルサービス決算報告書の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)。
(a)有価証券 1億4913万
6080円
上記金額は,主位的主張に係る前記(5)ウc(a)記載の金額と同額である。
(b)貸倒引当金
0円
前記イgのとおり,貸倒引当金は負債として計上しない。
(c)内装設備 831万
2378円
上記金額は,帳簿価額である。
これに対し,原告は,これらの内装設備について,賃貸借契約終了
の際に原告が原状回復義務を負うものであること,賃借建物に設置した物が独立した所有権の対象とならないこと等を理由として,内装設備の評価額は0円とすべき旨主張するが,前記イeのとおり,本件の評価時点において資産が実際に存在して使用されている以上,企業継続を前提とする評価額が0円ということはあり得ないから,内装設備は帳簿価額により評価することが相当である。
(d)工具器具備品2756万
8565円
上記金額は,帳簿価額である。
これに対し,原告は,建物と併せて賃貸している工具器具備品につ
いて,建物と同様の理由で帳簿価額を30パーセント減額して評価しているが,元来建物に付着するものではない動産の場合,建物と同様の理由により減額して評価する必要はなく,前記イdで述べたとおり,工具器具備品の場合,物件ごとに多様な状況があるにもかかわらず,帳簿価額から30パーセント減額して評価する必要はないことからも,原告の上記主張は理由がない。
(e)出資金(ゴルフ会員権)2860万
上記金額は,立野クラシックゴルフ倶楽部のゴルフ会員権(帳簿価
額1500万円)について,ゴルフ会員権取引業者間の買相場の価額に基づいて2600万円と評価し,それ以外の出資金の帳簿価額合計260万円と合計した金額である。
これに対し,原告は,上記ゴルフ会員権を取引相場の7割で評価すべき旨主張するが,前記イfのとおり,被告の上記主張に係る金額は,ゴルフ会員権の取引相場を照会した結果の回答に基づくものであり,客観的交換価値として妥当なことは明らかであるから,原告の上記主張は失当である。
(f)権利金
0円
返還されない権利金については,評価しないこととする。
(g)減価償却費△266万1000円
上記金額は,減価償却資産について,平成3年8月1日から同年10月20日までの期間に対応する減価償却費であり,資産の額から控除するものである。
(h)賞与引当金0円
前記イgのとおり,賞与引当金は負債として計上しない。
(i)退職給与引当金1052万
0110円
上記金額は,負債の部に計上された帳簿価額である。
これに対し,原告は,平成3年10月20日時点で給付すべき退職金の合計額を負債に計上すべき旨主張するが,かかる原告の上記主張が失当であることは,前記b(x)のとおりである。
(j)株主配当金200万円
上記金額は,平山ビルサービス決算報告書の利益処分計算書に記載
された株主配当金の金額であり,負債の部に計上されるものである。
(k)役員賞与金160万円
上記金額は,平山ビルサービス決算報告書の利益処分計算書に記載
された取締役賞与金の金額であり,負債の部に計上されるものである。
エ本件株式に係る受贈益相当額
本件株式は,平山不動産の全株式であるから,その価額は同社の純資産価額と同額であり,原告は,時価19億2125万5283円の本件株式を9億4328万円で購入したのであるから,原告には,時価と購入価額との差額に当たる9億7797万5283円の受贈益が発生したものというべきである。
(7)受贈益を計上すべき時期について
ア租税法上の「所得」は,経済上の利得を意味するものであり,ある利得が所得であるか否かは,私法上の行為自体ではなく,実現した経済的成果に即して判断すべきであるから,所得の発生時点については,所得の実現の時点を基準とすべきであり,受贈益は,それが資産を離れて単独で取引されるものでない場合,発生の基となる資産が引き渡されてはじめて実現するものと考えられる。
したがって,受贈益については,原則として,資産の移転があった時点で,その日の属する事業年度の益金の額に算入されるべきであるところ,本件株式の譲受けに係る受贈益は,本件株式が平成3年10月20日に原告に引き渡されたものであることから,本件事業年度における益金の額に算入されるべきである。
イこれに対し,原告は,本件売買契約が成立した時点で,原告が本件株式を取得する権利が確定しているのであるから,収益の発生時期は平成3年3月27日であるとし,原告に受贈益が発生したとしても,これを本件事業年度における益金の額に算入することはできない旨主張する。
しかし,原告の上記主張は,単に取引金額が私法上の契約時点において確定しているということをいうにすぎず,税務上の収益の計上時期に関する主張ということはできない。
また,このことをおくとしても,本件覚書の1項には,「本件株式売買代金は,・・・平成3年7月期の平山不動産の確定決算書が作成され次第それに基づき修正」することとされており,本件売買契約が成立した時点において,本件株式の売買価額が確定していなかったことが明らかであるし,原告の主張するとおりに会計処理をすれば,受贈益の発生の基となる資産の受入れがない段階で受贈益のみを計上する結果を生じることに照らせば,原告の上記主張は失当である。
(8)本件各更正処分が適法であること
前記(5)のとおり,本件株式の適正な価額すなわち時価は16億4187万8927円であり,原告から提出された資料を参考として再度算定した場合でも,前記(6)のとおり,19億2125万5283円となるから,原告による本件株式の購入価額9億4328万円が,本件株式の譲受けの時点における時価と比較して低廉であることは明らかである。
そして,本件各更正処分は,本件株式の時価が15億3104万4000円であり,本件株式の購入価額との差額に当たる5億8776万4000円の受贈益が原告に発生したとして行われたものであるところ,前記(5)で算出した受贈益の金額6億9859万8927円及び前記(6)で算出した受贈益の金額9億7797万5283円は,いずれも本件各更正処分の前提となる上記受贈益の金額5億8776万4000円を上回るものである。
したがって,本件各更正処分はいずれも適法であって,原告の主張には理由がないから,原告の請求は棄却されるべきである。
(9)本件各更正処分における手続上の違法に関する主張について
ア理由附記について
原告は,本件更正通知書に附記した理由において,どの時点を本件株式の評価時点としたかが不明であることから,本件法人税更正処分には理由附記の不備の違法がある旨主張する。
しかしながら,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては,その更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから,更正通知書記載の更正の理由が,そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものではないとしても,更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り,法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないと解される(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁)。
そして,本件更正通知書には,原告の本件株式の評価額の算定における誤り等を具体的に指摘したうえで,本件株式を再計算した場合の価額及び当該金額と当初契約金額との差額が受贈益となる旨の理由が附記されており,本件法人税更正処分が原告の帳簿の記載自体を否認するものではなく,本件株式の評価について納税者と法的な評価を異にしたいわゆる評価否認であることからすれば,本件更正通知書に附記された理由は,本件法人税更正処分の根拠について,理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に示しているから,更正の理由附記として何ら不備はなく,適法というべきである。
イ処分理由の差し替えについて
原告は,本件各更正処分が本件株式の評価時点をその引渡しの日である平成3年10月20日としながら,被告が第2回口頭弁論期日に陳述した準備書面(一)において,評価時点を本件売買契約締結の日である同年3月27日と主張したことが,理由の差し替えであり,法人税法130条2項の趣旨を没却するものであって認められない旨主張するとともに,被告が第4回口頭弁論期日に陳述した準備書面(三)において,評価時点を同年10月20日としたことが,原告の防御権を侵害し,違法である旨主張する。
しかしながら,被告は,受贈益の実現が引渡しの日である平成3年10月20日であることを前提としつつも,収益の計上額を算定するに当たり,本件売買契約が同族関係者間の取引であって第三者間の取引より履行が確実であることや,本来の評価時点を変更しても過大評価にならないことから,準備書面(一)において評価時点を同年3月27日としたものである。
そして,最高裁昭和56年7月14日第三小法廷判決(民集35巻5号901頁)は,原処分庁の譲渡差額の否認に関する同一物件に係る追加主張について,被処分者が熟知している価格に関するものであることから被処分者が格別の不利益を受けるものではないとしたうえで,被処分者に争訟上格別の不利益を与えるものでない場合はいわゆる理由の差し替えの枠外の問題である旨判示しているところ,本件の場合も,同一物の評価の問題であり,かつ,いずれの評価時点においても原告が有する財務諸表を基に算出しており,原告に争訟上格別の不利益を与えるものでないことが明らかであるから,理由の差し替えの枠外の問題というべきである。
また,仮に,被告が評価時点について本件各更正処分と異なる主張をしたとしても,本件の場合,評価の対象や収益計上する事業年度が同一であり,課税の根拠がいずれも法人税法22条2項の規定する受贈益であること等に照らして,処分の同一性は失われていないから,理由の差し替えに該当するものではない。
さらに,本件株式の評価時点に関する被告の主張が変遷したと認められるとしても,このことは,本件株式の評価についてより合理性の高い客観的交換価値を求めた結果であり,原告及び同族関係会社が作成,保有する決算報告書の数額を基礎としていることから,原告に格別の不利益を与えていないことに照らしても,原告の防御権を侵害したものとはいえない。
ウ調査義務違反の違法について
原告は,本件法人税更正処分について,Bの所得税に関する調査を行い,原告の法人税に関する帳簿書類等の調査を行わずにしたものであるから,法人税法130条1項に反して違法である旨主張する。
しかし,本件法人税更正処分に係る調査は,東京国税局課税第一部資料調査第一課(以下「資料調査第一課」という。)の職員による原告及びBに対する帳簿書類の検討及び関係者に対する事情聴取により始まり,東京国税局調査部(以下「調査部」という。)の職員によるAらに対する面接及び資料調査第一課から調査部への連絡により引き継がれたものである。
一方,法人税法130条1項は,いわゆる実額調査を原則として強制しているところ,その趣旨は,青色申告制度が納税義務者に一定の帳簿書類の備付け及び記帳を義務付けていることから,その帳簿書類を無視して更正されることがないことを納税義務者に保障したものと解される。
そして,上記の調査の場合,資料調査第一課の職員が原告及び関係者の申立てを参考に原告の帳簿書類を調査して作成した調査資料を基に,調査部の職員が帳簿書類等を検討し,その結果に基づいて「法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」を作成し,本件法人税更正処分が行われたことが認められるうえ,資料調査第一課及び調査部の職員はいずれも東京国税局の職員であり,国税通則法27条に規定する「国税局の当該職員」に当たる。
このようなことからすれば,本件法人税更正処分に係る調査は,原告の帳簿書類等を基礎とした調査結果に基づいて行われたことが明らかであるから,原告の上記主張は失当である。
(10)結論
以上のとおり,被告は,前記(5)のとおり,本件株式の時価が16億4187万8927円であり,原告に6億9859万8927円の受贈益が生ずると主張したところであるが,仮に原告の提出した資料を参考に本件株式の時価を再度算定した場合でも,前記(6)のとおり,その評価額は19億2125万5283円であり,9億7797万5283円の受贈益が生ずることとなる。
そして,本件各更正処分は,本件株式の時価が15億3104万4000円であり,5億8776万4000円の受贈益が計上漏れであるとして行われたものであるところ,上記受贈益の金額を上回る受贈益が原告に生じていることは,前記(5)及び(6)のとおりであるから,本件各更正処分はいずれも適法である。
(原告の主張)
(1)低額譲渡に関する考え方
内国法人の所得金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額について規定した法人税法22条2項は,低額譲渡の場合について規定していないものの,低額譲渡の場合にも益金が発生することは,判例においても認められている(最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決・民集49巻10号3121頁)。
しかし,物の価額は,買主と売主の意思の合致によって定まるものであり,意思の合致以前に確定的な金額が定まっているわけではない。
しかも,本件のように,取引の対象が非上場会社の株式である場合には,同種のものが大量に取引されているわけではないから,取引を通じて時価が定まっていくことも期待できない。
このようなことから,非上場会社の株式の評価は,将来の収益を勘案した予測値とならざるを得ない。
このように,時価が一義的に明確なものとして定まらない以上,低額譲渡か否かの判断については,慎重な考慮が必要であり,単に課税庁が採用した評価方法に一応の合理性が認められることをもって,これを下回る売買代金額による譲渡がすべて低額譲渡になると解することはできない。
特に,取引相場のない株式の場合,配当還元方式,収益還元方式,純資産価額方式,類似業種比準方式等のそれぞれ合理性の認められる評価方法が存在し,時価純資産価額方式においても,清算所得に対する法人税等を控除するか否か,退職金を控除するか否か,各資産の評価をどのように行うか等について,それぞれ合理性の認められる考え方が存在するのであって,これらのうち一つの評価方法又は一つの考え方を採用して株式を評価し,これを売買価額としても,それが特に不合理であると認められない限り,これによって算定された金額を低額ということはできない。
(2)取引相場のない株式の評価方法について
アそもそも,時価とは,客観的な交換価値のことであって,不特定多数の独立当事者間の自由な取引において通常成立すると認められる価額をいうものとされており,このことは,取引相場のない株式においても同様であるから,株式の時価とは,当該株式を「いくらだったら買うか,いくらだったら売るか」という,買主と売主の需給が合致した価額をいうものである。
しかし,取引相場のない株式については,独立した当事者間で売買されることは稀であり,買主と売主の需給が合致した価格を実際の取引から導き出すことは困難であるから,この場合の株式の時価は,合理的な人間であればいくらで買うか又はいくらで売るかという理論値にならざるを得ないのであって,取引相場のない株式の評価とは,合理的な人間を基準とした需給の合致点を理論的に考察することにほかならない。
イ取引相場のない株式の評価方法には,主なものとして,配当還元方式,収益還元方式,純資産価額方式,類似業種又は類似会社比準方式,取引先例方式があり,これらの方式にはそれぞれ合理性が認められるところ,原告とBは,本件売買契約において,純資産価額方式を採用して株式を評価し,その金額を売買価額としているから,以下の主張においては,純資産価額方式による株式の評価を前提とすることとする。
ウ時価純資産価額方式における評価方法としては,大別すると,企業を現時点で解散し清算したと仮定した場合に1株に対して払い戻される金額をもって株式の価格を算定する,処分価値を基準とする時価純資産価額方式と,同一の会社を新たに設立するとした場合に要する費用を基準として企業の純資産価額を算定する,再調達価値を基準とする時価純資産価額方式が考えられる。
再調達価値を基準とする時価純資産価額方式は,新たに会社を設立するか,既存の会社を買収するかの選択を行う場合の買主の立場に立てば,評価方法の一つとして考えられないわけではないが,そもそも株式は,会社の資産そのものに対する権利ではなく,当該資産を利用して得られる利益の分配に参加できる権利であって,企業資産の価額をそのまま株式の価額とすることはできないことや,合理的な買主であれば,企業の収益価値が企業の資産価値を上回らない限り,企業自体を買収しようとしないはずであることに照らせば,再調達価格を基準とする時価純資産価額方式は,合理的な売主と買主の需給の合致点を理論的に把握する株式の客観的交換価値の算定においては,合理性に乏しい評価方法といわざるを得ない。
エこれに対し,処分価値を基準とする時価純資産価額方式は,売主の見地からは,企業を解体して資産を処分した場合に得られる経済的利益が売却価値よりも高ければ売却はしないという意味で,売却代金額の算定の基礎となる金額であり,買主の見地からは,予想した収益が上がらなければ解散によって投下資本を回収するという意味で,売買代金額の算定の基礎となる金額であるから,合理的な売主と買主の取引価額の予想値として合理性を有する評価方法ということができる。
もっとも,処分価値を基準とする時価純資産価額方式に対しては,継続企業を解散したものと仮定して評価することについて批判があるが,そもそも取引相場のない株式の評価とは,買主と売主の需給の合致点の理論値を求めるものであるから,会社を解散したと仮定して評価することは,継続企業の原則と矛盾するものではない。
また,株主から経営をゆだねられた者は,最も株主の有利になる選択をすべきであるから,配当還元価値よりも清算価値の方が高ければ,経営者は企業を解散して清算すべきであるとも考えられる。
加えて,合理的な売主にとっては,会社を解散した場合の残余財産の分配によって得られる金額との対比が,株式売却金額算定の重要な目安となるし,合理的な買主にとっても,残余財産の分配によって得られる金額は,投下資本の回収可能金額として,売買価額算定の重要な目安となる。
したがって,解散価値を基準とする時価純資産価額方式は,合理的な売主と買主の需給の合致点を求める方法として,合理性を有するというべきである。
オそして,処分価値を基準とする時価純資産価額方式における資産の評価は,貸借対照表上の価額ではなく,現実に処分した場合に予想される価額により行われることとなる。
したがって,棚卸資産は,取得価格ではなく処分価格で評価されることになり,受取手形,売掛金,貸付金等の債権も,簿価すなわち額面額ではなく実際に回収可能な金額で評価されることになるし,資産性のない前払費用や繰延資産も,零と評価されることとなる。
また,企業を清算する場合には従業員の解雇は避けられないから,退職金も貸借対照表に計上されている引当金額ではなく,就業規則等に基づき算定された実際の退職金額を控除しなければならない。
さらに,清算した場合の残余財産分配請求権を基準として株式の価額を算定する以上,清算所得に対する法人税等も控除して評価されるべきこととなるのは当然である。
カところで,中小企業協同組合法に基づく企業組合の脱退組合員に対する持分払戻額が争われた最高裁昭和54年2月23日第二小法廷判決(民集33巻1号125頁)は,払戻額の算定において,「中小企業等協同組合法に基づく協同組合の組合員が脱退した場合における払戻持分の計算の基礎となる財産の評価は,当該協同組合の事業の継続を前提とし,なるべく有利にこれを一括譲渡する場合の価額を基準とするのであって,現実の解散による清算手続の一環として行うものではないから,組合が解散した場合であることを前提とする所論清算所得に対する公租公課相当額なるものを想定し,これを負債として計上すべきものではないというべきである。」と判示している。
この判例が,清算所得に対する退職慰労金,退職金及び租税を控除せずに組合の財産を評価した理由については,継続企業価値を念頭に置いて,その把握方法を損益法ではなく財産法によったものと考える見解があるが,企業資産の総和は,企業の将来の費用としての性質を有するにすぎず,企業の売上や減価償却費以外の費用の額の指標となるものではないし,企業資産の交換価値の総和も,資産の収益価値と交換価値が乖離していることに鑑みれば,継続企業の価値を保障するものではないことからすれば,企業の資産の交換価値又は帳簿価額の総和と,継続企業価値とは一致しないのが通常である。
そして,株式会社の場合,株主は退社して持分の払戻しを受けることはできないから,株式の価値を会社が所有している資産の価値を基準として算定する場合には,観念的に会社を解散したと仮定して算定する以外に方法がないのに対し,協同組合の場合,組合員には脱退して持分の払戻しを受ける権利が認められているから(中小企業等協同組合法20条),組合員が抽象的持分を現実に取得する際,組合の解散を観念する必要がない。
このようなことからすれば,上記判例は,協同組合の持分払戻しに関する特殊な事例というべきであり,株式の評価については別異に解すべきであると考えるべきであって,株式会社の場合には,株主であっても会社財産に直接手を付けることはできず,会社財産の客観的交換価値について直接取得する方法はないのであるから,再調達価値を基準とする時価純資産価額方式を採用することはできないというべきである。
キaこれに対し,被告は,本件売買契約が,親族関係にある者の間において平山不動産の「経営権の移転」を目的とするものであって,清算を前提としたものではないから,原告の主張する評価方法は,評価の対象とされる株式の発行法人の状況を無視しており,相当でない旨主張する。
しかし,清算価値を基準とする時価純資産価額方式が,現実に清算を予定している会社のみに適用される評価方法でないことは前記のとおりであるから,被告の主張はその前提において失当である。
bまた,被告は,本件売買契約が「経営権の移転」であることを理由に,企業そのままの状態における価値で評価すべきであるとも主張するが,その趣旨は明らかでないものの,清算を予定している会社でなければ清算価値による評価ができないと主張しているものと解される。
しかし,株式は会社の資産そのものに対する権利ではなく,当該資産を利用して得られる利益の分配に参加できる権利なのであるから,企業資産の価額をそのまま株式の価額とすることはできないのであって,企業の継続価値を考慮するとしても,評価の対象が株式である以上,株主としての企業の継続価値を評価しなければならないのであり,株主としては,配当か残余財産の分配でしかその価値を取得するしか方法がないことからすれば,その価値は,株主が有している価値ではないというべきである。
cさらに,被告は,被告の主張する評価方法を採用した理由として,原告が平山不動産の全株式を取得して支配株主となったことを挙げているが,原告が支配株主となったことと被告の主張する評価方法を採用することとは,無関係といわざるを得ない。
すなわち,支配株主の利益には,一般に,1内部留保,2役員報酬,3シナジーの利益,4収益改善期待利益,5解散の選択が考えられるが,これらの利益は,いずれも被告の主張を裏付けるものではない。
(a)内部留保は,法人の利益のうち配当されずに会社内に留保されたものであるところ,支配株主は,内部留保と利益配当の割合を自由に決定することができるが,適正な内部留保は,次期以降の法人の運転資金等に充てられるものであるから,支配株主であっても,自己のために使用することはできないのに対し,過度の内部留保が行われた場合には,少数株主の権利を侵害し,合理的な買主と売主の需給が合致する金額を引き下げることになる。
そして,支配株主であっても,内部留保金は次の決算期まで処分できないことは少数株主と同一であり,過度の内部留保は,将来の配当や分配を受ける残余財産に資することはあっても,株式を再調達価額で評価することを正当化する理由とはならないというべきである。
(b)支配株主は,会社の役員となって,配当に加えて役員報酬を取得することが可能であるが,原告は法人であるから,役員報酬を取得できる立場にないし,個人の場合でも,適正な役員報酬は,委任契約の正当な対価であって,会社支配の結果もたらされるものではないから,支配株主の株価を高める要因となるものではなく,支配株主の株価を高める要因となるのは,過大な役員報酬に相当する部分のみである。
(c)シナジーの利益とは,新たな株主が,従来から営んでいた事業と今回株式を取得した会社との間で取引を行うことによって上げることが可能な利益であるところ,このような利益は,取引が適正価格で行われていても,協同的効果として取得することができ,支配株主は,配当の外にシナジーの利益が得られれば,投下した資本に対する利回りがある程度低い率でも満足するであろうから,シナジーの利益は資本還元率の相違として把握されるべきものであり,シナジーの利益が存在することは,支配株主について株式を再調達価額で評価することを正当化する理由とはならないというべきである。
(d)支配株主は,会社を自己の思いどおりに経営することができるから,会社の経営を改善してより多額の収益を挙げることが期待でき,この点も支配株主の利益と考えられるが,このことは,将来における収益及び配当を増加させる可能性が強いということであるから,予想配当又は予想収益の増加要素として考慮されるべきであって,経営改善利益が存在することをもって,支配株主について株式を再調達価額で評価することを正当化することはできない。
(e)支配株主は,企業の継続価値と解体価値を比較して,解体価値の方が大きければ,会社の解散を選択して残余財産の分配を受けることができるが,このことは,株式を企業の清算価値で評価することを正当化するものであって,支配株主について株式を再調達価額で評価することを正当化する理由とはなり得ないというべきである。
dまた,被告は,法人税における非上場株式の評価について時価純資産価額方式を採用する場合,企業継続を前提とした財産評価を行うべきであり,単に処分価値を求める評価を行うべきでない旨主張する。
しかし,真に企業継続を前提とした株式の評価をするのであれば,株主が企業から得られる利益は,配当か支配株主として役員に就任した場合の役員報酬等の収益の取得しか考えられず,株式の価値は配当還元方式又は収益還元方式によって評価しなければならないから,そもそも時価純資産価額方式によって株式を評価することが誤りということになる。
加えて,被告による純資産価額方式による本件株式の評価においては,不動産,有価証券等の資産を処分価値によって算定していることは明らかであり,資産は処分し,企業は継続するという前提の評価は,全くあり得ない自体を前提とするものであって,失当といわざるを得ない。
eそして,企業の継続価値は,本来,企業の職種,保有資産,収益,経済状況等を把握,分析し,将来にわたって企業が得る収益を予測し,これに他の金融資産から想定される還元利回りに,危険性,将来性等の要素を加味して算定されるべきものであり,現在の企業資産の客観的交換価値が,継続企業の価値であるなどということはできない。
特に,平成2年及び3年当時の経済情勢を考えると,バブル景気の終焉により不動産の値下がりは始まっていたものの,収益価値と交換価値の間にはいまだ乖離があり,企業資産の交換価値をもって,企業の継続価値であるとは到底いえない状況であったというべきである。
このように,企業資産の価値と株式の価値とは,たとえ支配株主の保有する株式の場合であっても異なるにもかかわらず,株式の価値を企業資産の交換価値で把握しようとする被告の主張は,これを混同しているものであって,失当といわざるを得ない。
クなお,被告は,ある評価方法が,評価目的に沿った規範的観点からの前提事実,推論方法を採用しており,特に特段の不合理が認められない場合,この方法により得られた評価額は一応合理的なものとして容認すべきであると主張する。
上記主張自体は,ある意味において正当であると考えられるが,そうであるとすれば,原告の採用した評価方法において,特段の不合理な点が認められず,この方式によって得られた評価額が一応合理的なものとして容認されるのであれば,その評価額を本件株式の購入価額とした場合,本件株式の譲渡は,資産の低額譲渡ということはできないと解される。
そして,後記のとおり,原告とBによる本件株式の評価方法には合理性が認められるから,本件株式の売買価額がこの評価に基づいて定められた以上,本件株式の譲渡を資産の低額譲渡と認めることはできず,本件各更正処分はいずれも違法といわざるを得ない。
(3)本件株式の売買価額が合理性を有することについて
ア本件株式の売買に至る経緯
aBは,平山不動産の経営者として不動産賃貸業を行うとともに,株式投資も行っていたが,同社は平成2年に始まった株価の暴落のため約20億円の損失を被った。
Bは,多額の損失を出したことに加え,不動産業の将来性に対する不安や同人自身が体力の限界を感じたことから,同年春ころ,会社経営から引退することを決意した。
しかし,Bは,引退に際し,同人の所有に係る平山不動産の株式を原告に売却することを決めていたわけではなく,それ以外にも,平山不動産の解散による清算,第三者への株式売却,同社の自然消滅といったプランも有していた。
他方,原告は,平山不動産が原告の株式の60パーセントを保有しており,会社経営の安定のために,平山不動産の株式を買い取る必要があったことから,同年11月ころ,Bに対し,本件株式を買い取る意思を表示した。
なお,Bと原告代表取締役であるAの関係は,Aの母がBと再婚した際,養子縁組をしたことによって生じた養親子関係であり,Bには,他に3名の相続人が存在したのであって,AとBの関係は,通常の親子関係と異なり,オンビジネスな関係であった。
b原告とBは,本件株式の買取価格の判断を,税理士及び不動産鑑定士の資格を有するCにゆだねることとし,B,A及びCの三者で会合を開いて,株式の評価のための諸条件の打合わせを行った。
その際,原告とBの間で,評価時点を平成2年12月31日とすること,平山不動産のBに対する退職金について,同社の役員退職金規程を踏まえて別途協議すること等が合意された。
そして,Cは,上記合意に基づいて本件株式の評価を行ったところ,9億4328万円という評価額となり,この結果を原告及びBに報告した。
Aは,平山不動産,原告及び平山ビルサービスの財務状況から,本件株式の買取価額を5,6億円程度と考えていたことから,上記の評価額は高いと感じたが,本件株式を買い取る必要に迫られていたことから,この金額を受け入れることとし,平成3年3月初旬ころ,原告とBとの間で,本件株式の売買について合意が成立した。
c以上のとおり,原告とBとの間において,本件株式の売買に関する合意が成立したのは,平成3年3月初旬であったが,本件売買契約の締結の日は,平山不動産の設立記念日である同月27日とされ,同日,原告からBに対し,取引総額の1割の金額が支払われた。
また,Bが平山不動産の決算期である同年7月31日まで代表取締役を務めることが決められており,残金の決済は同人の代表取締役及び取締役退任後に行うこととされたことから,結局,同社の創業記念日である同年10月20日が決済日とされ,同日,残金の決済が行われた。
イ本件株式の売買価額の合理性
a前記のとおり,法人税の課税においては,時価によらない取引であっても,その一事をもって低額譲渡による受贈益の認定が行われるわけではなく,それが一般に合理的な経済人の行為として経済的合理性が認められる範囲内のものであれば,法人税法上は正常な取引として是認されるものと考えられるから,本件株式の評価も,このような観点から検討されなければならない。
b評価時点の設定について
(a)原告とBは,本件株式の評価時点を平成2年12月31日とすることを合意し,Cはこの合意に基づいて本件株式を評価し,同人の評価額を売買代金額として本件売買契約が成立したものである。
そして,株式の売買が低額譲渡であるとして受贈益が発生するか否かは,当該代金額が一般に合理的な経済人の行為として経済的合理性が認められる範囲内のものか否かにより決められるのであるから,株式の評価時点についても,経済的合理性の有無という観点から設定されなければならない。
(b)そこで,本件売買契約における本件株式の評価時点の設定について検討するに,通常,売買において,その取引価格を専門家の評価にゆだねようとする際,売買の目的物の価額が株式のように時の経過にしたがって変動する場合には,まず評価時点を設定しなければ評価することはできないから,本件売買契約のように,まず評価時点を設定し,専門家による評価を得て,これを基に代金額を定めて売買契約を締結することには,合理性が認められるというべきである。
(c)これに対し,被告は,本件株式について決済が行われた平成3年10月20日を評価時点として主張するが,この主張は,譲渡所得の発生に関する引渡基準をそのまま本件に持ち込もうとする点で失当であることを措くとしても,被告の設定した評価時点における被告の主張する評価方法との対比によってのみ,低額譲渡であるか否かを判断しようとする点において,失当というべきである。
すなわち,売買の目的物の価額が時の経過にしたがって変動する場
合の売買代金額の合理性は,評価時点の設定の合理性も含めて検討しなければ判断できないのであり,また評価時点の設定が合理的であれば,仮に他の時点での評価額が異なっていたとしても,そのことにより,一般に合理的な経済人の行為として経済的合理性が認められる範囲を逸脱したということはできない。
そして,本件の場合,原告及びBが本件株式の評価時点を設定して
専門家の評価を得た後に本件売買契約を締結したことは,合理的な行為と認められるから,平成2年12月31日を評価時点とした本件評価合意書における本件株式の評価は,是認されなければならないというべきである。
c本件評価合意書による評価が合理的であること
原告による本件株式の評価は,本件評価合意書に基づいて行われたものであるところ,上記評価は合理的というべきであって,このことは,当事者間に争いのある勘定科目に関する評価について,次のとおり合理性が認められることからも明らかである。
(a)退職金の計上について
本件評価合意書においては,Bの退職金を1億0150万円として,これを平山不動産の純資産価額の算定上,負債に含めることが合意されている。
この退職金額は,本件覚書5項において算定されたものであり,平山不動産の役員退職金基準により算定した金額(3億8400万円)よりもはるかに低額であって,過大な金額であるということはできない。
これに対し,被告は,退職の事実が発生する前に退職金を計上する
ことは不合理である旨主張するが,平山不動産は,Bの一人会社であり,経済的実質にかんがみれば,本件評価合意書の締結をもって,同人の退職金額が確定したことは明らかであるから,本件売買契約の時点で将来発生することが確実な退職金債務を控除して平山不動産の純資産価額を算定する方が合理的であるというべきである。
(b)減価償却資産を帳簿価額の70パーセントで評価したことについて平山不動産の減価償却資産である平山ビル,内装設備及び工具器具
備品の評価を帳簿価額の70パーセントとしたのは,これらの減価償却資産がいずれも賃貸の目的とされていたり,貸室内に設置されて貸室とともに賃貸に供されていることから,所有者としても自由に処分できない以上,資産の評価に当たって,相当の減額を行うことが合理的であるからである。
一方,本件評価合意書は,平山不動産の借家権のうち特約により転
売可能なものは,転売可能な金額で評価しているため,借室権利金の額は帳簿価額よりも4ないし5倍も高い評価となっており,平山不動産の減価償却資産に借室権利金の額を加算した評価額は,別表12のとおり,帳簿価額よりも5523万3106円も高額となっている。
このようなことに照らしても,本件減価償却資産及び借室権利金の評価には,経済的合理性が認められるというべきである。
(c)土地の評価について
i土地の価格の変動について
昭和58年ころに始まったいわゆるバブル景気の下においては,多
くの金融機関が土地融資に力を入れたことなどから,土地の価格が上昇したが,大蔵省(当時)の指導による不動産融資の総量規制が平成2年4月に開始された後,土地融資の資金は激減し,土地の新規購入者がいなくなり,土地の価格の下落が始まった。
このように,本件株式の評価時点である同年12月31日には,総量規制により土地の取引が停止しており,地価が下落しているのは確実であるが,どの程度下落しているか不明な状態にあったところ,このような地価の動向をいち早く認識していた不動産価格の専門家であるCが採用し,東京都心部における不動産の専門家として同様の認識を有していたB及び原告が合意したのが,同日時点で公表されていた路線価をそのまま時価として採用する方法であった。
確かに,路線価は,公示価格の8割程度をめどに付設されている
が,その基となった公示価格は同年1月1日時点のものであり,上記の経済情勢にかんがみれば,同年に公表された路線価を同年12月31日時点の価格として用い,かつ,個別補正を行わないとする評価方法にも,合理性が認められるというべきである。
α土地の評価について
α土地は,κの西側に所在する幅員8メートルの道路に沿接する,
面積狭小,奥行短小の土地であり,κの東側が著名な物販店を中心とする地域であるのに対して,α土地の周辺は小規模な飲食店を中心とする地域であり,同土地上に存する平山ビルの入居者も小規模飲食店である。
α土地の周辺は,容積率が700パーセントと指定されているが,正面街路の幅員が8メートルと狭いため,建築基準法52条による容積率は480パーセントにすぎず,平山ビルは老朽化しており,4階建てであるがエレベーターはなく,階段の幅も80センチメートルと狭い。
ところで,土地の評価は最有効使用の原則に基づいて評価される
ものの,評価対象地に最有効使用を妨げる要因があれば,相当の減額評価が必要となるところ,α土地の場合,最有効使用の原則に照らせば,6階建ての建物の建築を前提に評価すべきであるが,敷地面積43・3平方メートルの土地上の建物にエレベーターを設置すれば,有効賃貸床面積がごく僅かとなり,経済的合理性を欠くこととなるから,相当に減額して評価しなければならない。
そして,評価時点である平成2年12月31日においては,地価が下落しているのは確実であるが,どの程度下落しているか不明な状況にあったことは前記のとおりであり,このような時点における土地の評価としては,同日の時点で公表されていた路線価をそのまま用い,かつ,本来行われるべき画地に対する個別補正を行わずに評価するという本件評価合意書の評価方法にも,合理性が認められるというべきである。
α土地上の平山ビルについて,土地の有効利用を図るために建替
えをしようとすれば,賃借人に退去を求めるために,相当な対価の提供が必要であり,財産評価基本通達25は,このような点を考慮して,貸家建付地については評価減を認めているところであって,本件評価合意書がα土地について27パーセントの貸家建付地の評価減を行ったのも,同様の理由によるものである。
これに対し,被告は,企業継続を前提とした評価においてこのよ
うな評価減を行うことは不合理である旨主張する。
しかしながら,被告の主張する継続企業の価値とは,個々の資産についてみれば,資産を保有し続けることによって生じる使用・収益価値にほかならないところ,我が国の場合,特に評価時点である平成2年12月31日当時,不動産の交換価値と収益価値は大きく乖離しており,これを同一視することはできないから,被告の主張するような,資産は取引価格で評価するが,通常の取引において当然に考慮されるべき借家人の存在は無視する方法は,合理的な評価ということはできない。
したがって,貸家建付地の評価については,土地は交換価値で評
価しつつ相当の評価減を行うという,財産評価基本通達の認める方法か,土地建物を一体の財産とみて,収益価値により評価する方法の,いずれかによることが合理的であるから,本件評価合意書によるα土地の評価も,合理性を有するというべきである。
なお,原告が本件において主張するα土地の評価は,後記(4)エe(a)のとおりであり,その詳細については,別表13のとおりである。
β土地の評価について
β土地は,幅員10メートル,勾配10度の坂道に沿接する面積狭
小,奥行短小の土地であり,周辺にはマンションとオフィスビルが混在しているが,本件土地の北側に隣接しているのは寺院であり,都市計画法上の商業地域に指定されているが,人通りが少なく,用途的には居住用が最有効の状況にある。
建築基準法上の容積率は600パーセントであるが,α土地と同様,面積狭小でエレベーターの設置が困難であるため,5階以上の建物の建築ができず,平山不動産では購入時から現在に至るまで,4台分の駐車場として賃貸し,月額21万5000円の賃料収入を上げているにすぎない土地である。
本件評価合意書は,β土地について,平成2年12月31日時点で公表されていた路線価に地積を乗じてそのまま評価しているところ,この評価は,Cが,当時の不動産市況,β土地が面積狭小で正面道路が勾配の大きい坂道であること等の事情を総合考慮して判断した結果であり,合理性を有するものというべきである。
なお,原告が本件において主張するβ土地の評価は,後記(4)エe(b)のとおりであり,その詳細については,別表14のとおりである。
被告の評価に対する反論
被告は,本件各土地の評価を行うに際し,取引事例を示し,それ
に個別要因標準化補正と地域要因格差率を乗じて比準価格を算定しているが,被告が採用した取引事例は,それぞれわずか1事例であり,その所在が不明であるのみならず,地積,地形,道路の沿接状況等も示されていないこと等,その評価方法は,到底認められるものではない。
また,被告が主張する本件各土地の評価は,不動産評価に必要な
民法,行政法規,経済学,会計学及び不動産鑑定理論に関する専門的知識や,実務経験及び高等の専門的応用能力のない者によるものであることが明らかであり,処分庁として尽くすべき調査義務を尽くさない違法な評価というべきである。
(d)出資金の評価について
本件評価合意書は,平山不動産の所有する原告の株式について,
原告の平成2年7月期の簿価純資産額10億8563万7965円から,その後支出された確定配当及び賞与2500万円を控除し,原告の100パーセント子会社である平山ビルサービスについては,原告における同社株式の帳簿価額8667万2800円に7318万8000円の含み益を加算し,これらの計算によって得られた11億3382万5000円に100分の50を乗じて純資産額を算定し,これを発行済株式総数2万株で除して,1株当たりの金額を算定したものである。
これに対し,被告は,本件評価合意書における原告の株式の評価
が不合理である旨主張するが,原告の平成2年7月期の帳簿価額の中には,別表15のとおり,換価性のない資産,不良債権等が含まれており,これらの金額を勘案して,原告の純資産額を帳簿価額の100の分の50とすることには合理性があるというべきである。
なお,原告の株式評価のうち,大きな比重を占める海外資産の評
価について詳述すれば,後記ないしのとおりである。
債権の評価について
債権の評価に当たっては,資産価値として債権の交換価値を評価
することと,法人が期間損益計算において損金とするために,貸倒損失を計上したりすることが,異なる性質の問題であるということを認識しなければならない。
すなわち,法人の期間損益計算において,貸倒れを認めるか否か
は,法人のいかなる資産の増加に担税力の基礎となる所得を認めるべきかという政策的観点から判断されるものであるから,純資産減少の原因となる事実について,企業会計の場合よりも厳格な制約を加えることは当然起こり得るという観点に立って,貸倒損失を認める場合がかなり限定されている。
これに対し,株式の売買において,取引当事者が会社の資産価値
をどのように評価すべきかという観点に立った場合には,上記のような政策的観点を考慮せずに,回収可能性や貸倒れの危険性から資産の価値を評価するのが合理的である。
したがって,株式の評価においては,評価の対象となる会社の債
権について,たとえ債務者に破産の申立等の事実が発生していなくても,債務超過であれば,回収可能性や貸倒れの危険性を考えて評価減をすることは当然である。
原告のファーニーズ社に対する債権の評価について
ファーニーズ社は,日本の投資家を集めて貸ビル事業をオースト
ラリアで行い,将来は会社を転売してキャピタルゲインを得る目的で,同国において設立された会社である。
ファーニーズ社は,当初,投資家4名を集めて,オーストラリアで
貸ビルを購入する予定であったが,結局投資家が2名しか集まらず,資金が不足したため,原告が約7億5000万円を貸し付けてビルを購入することとなった。
ビルの売主はゴールドコー社であり,購入価格は約15億円であった。
同社は,ファーニーズ社にビルを売却する際,同社に年間100万豪ドルの賃料の支払を保証していたが,実際には資金難から平成3年2月までに5万ドルの賃料を支払ったのみであった。
その後,ファーニーズ社は,債務不履行を続けるゴールドコー社にビルの管理をゆだねられないことから,自らビルを管理するようになったが,このビルには相当の空室が存在したため,利益が生じない状態が続いた。
ファーニーズ社の平成2年6月期の決算貸借対照表によれば,資産合計1624万6980豪ドルに対し,負債合計は1651万0605豪ドルで,26万3625豪ドルの欠損が生じたこととされているが,所有資産のうち,1606万7935豪ドルと評価されている上記貸ビルに係る土地,建物及び付属設備の価額は,その半額にも満たない金額であった。
そして,ファーニーズ社としては,上記貸ビルが唯一の営業用資
産であり,貸ビル業を継続して収益を上げ債務を返済することも不可能であったから,原告のファーニーズ社に対する貸付金及び立替金債権は,全額回収が不可能であったところ,原告代表者であるAは,当時ファーニーズ社の役員を兼務しており,同社の状況については最も熟知している立場にあったことから,Cに以上の状況を説明し,原告の株式の評価における海外不良資産の減額を申し入れたものである。
ゴールドコー社の株式について
原告が所有していたゴールドコー社の株式は,オーストラリアで
の事業を企画していた原告がゴールドコー社のパートナーになった際,同社から寄贈された無償取得の株式であり,原告の貸借対照表における上記株式の帳簿価額は,取得時の取引価格を基に計上したものである。
ゴールドコー社の経営は,原告代表者のAが取締役に就任した平
成元年11月ころは堅調に見えたが,平成2年にオーストラリアの不動産市況が低迷し,ファーニーズ社に約束した賃料の保証金が支払えない状態が続いた。
同年6月期のゴールドコー社の貸借対照表には,連結で591万8454豪ドル,企業単体で743万8573豪ドルの純資産が計上されているが,これは,同社が仕入れた土地の上に建物を建築して販売する事業を行う会社であったところ,当時オーストラリアの地価は値下がりしていたにもかかわらず,これを無視して,反対に実現可能利益を加算した不適正な資産評価をしたものであり,Aも,同年7月に責任追及をおそれて同社の取締役を辞任している。
同社は,既に平成元年11月13日には差押命令を受けるほど経営が逼迫し,平成3年11月5日に破産申請を行っている。
以上の事実に照らせば,平成2年12月31日時点において,原告の所有するゴールドコー社の株式は,無価値であったというべきである。
H.K.オーストラリアの出資金について
H.K.オーストラリアは,オーストラリアのフェリーメイソンの土地を開発するために,原告の100パーセント出資によって設立された会社であるところ,H.K.オーストラリアの貸借対照表において69万5648豪ドルと記載されている固定資産(フェリーメイソンの土地)の平成2年12月31日時点の時価は,50万豪ドルと評価され,これにしたがって,平成2年7月期の同社の純資産額を算定すると,別表15下欄記載のとおり,43万7716豪ドルとなり,これを同年12月31日時点の為替レートで邦貨換算した金額は,4558万3744円となる。
なお,Aの陳述書(甲9)の別添資料1において,原告のH.K.オーストラリアに対する未収入金,出資金及び長期貸付金を0円と記載したことは誤りであって,このことはA自身も認めているところである。
原告の平成2年12月31日時点の純資産額
原告の資産の評価額は,その他換価性のない未成企画支出金や繰
延資産を0円と評価すると,帳簿価額より8億9643万8144円減少することとなるから,仮にγ土地,ゴルフ会員権等に多少の含み益が生じているとしても,原告の簿価純資産額に平山ビルサービスの株式に関する含み益を加算し,確定配当及び賞与を控除した金額に100分の50を乗じて算定した本件評価合意書記載の評価は,平山不動産が所有する原告の株式を過小評価したものではなく,このことは,原告が平成3年10月20日時点において,別表6の「原告主張」欄記載のとおり,債務超過と評価されることからも明らかである。
したがって,本件評価合意書の評価には,合理性が認められると
いうべきである。
(d)評価差額に対する法人税等の控除について
評価差額に対する清算所得に係る法人税等を控除することが合理的
であることについは,前記(2)オのとおりであり,いわんや,評価差額に対する法人税等の控除が,一般に合理的な経済人の行為として経済的合理性が認められる範囲内のものでないなどということはできないのであるから,本件評価合意書において,評価差額の51パーセントを法人税額等相当額として控除したことをもって,低額譲渡であることの根拠とすることはできない。
d収益還元価格等を考慮した平山不動産の平成2年12月31日時点の株式価(a)Cは,平成2年12月31日時点の平山不動産の株式価額を算定する際,同社が所有する貸ビル,α土地及びβ土地の収益価格を求め,これを基に純資産価額を算定する方法も試算しているところ,このような収益還元法による不動産の評価が本件において合理性を有することは明らかである。
また,被告が主張するように,企業を継続的価値に基づいて評価す
るのであれば,資産の評価は,処分した場合に得られる売買価格ではなく,今後企業が当該資産から継続して取得できる価値,すなわち収益還元価格で評価する方が合理的である。
しかも,平成2年12月31日当時は,なおもバブル期における不動産の投機的取引の余波が残存していたことにより,企業が当該資産から継続して取得できる価値である収益還元価格と,本来この収益価格を反映すると考えられる売買価格とに乖離が生じていたのであるから,企業の継続的価値を評価するためには,不動産等の資産を収益価格で評価する方が合理的である。
したがって,Cが本件評価合意書に記載された株式の価額を収益価
格によって検証することは合理的であるところ,その結果,α土地及び貸ビルの評価は2億3967万2000円,β土地の評価は2億0578万1000円となり,これを基に平山不動産の株式を算定すると,8億6056万2000円となる。
(b)さらに,平山不動産,原告及び平山ビルサービスの平成2年12月31日時点の各資産を当時の実際の価値を検討して精査すると,平山不動産の純資産価額は,評価差額に対する法人税等を控除しなくても,9億3348万1000円となる。
e小括
以上によれば,本件評価合意書に記載された本件株式の評価方法に合理性があることは明らかであり,このことは,前記dのとおり,平山不動産の純資産価額が,不動産について収益価格を用いた場合に8億6056万2000円となり,また,平山不動産,原告及び平山ビルサービスの平成2年12月31日時点の各資産を当時の実際の価値を検討して精査した場合には,評価差額に対する法人税等を控除しなくても9億3348万1000円となり,いずれも本件評価合意書に基づく売買価格と著しい相違が生じてないことからも裏付けられる。
さらに,本件評価合意書では,転売可能な借家権について転売可能価格で評価するというBの希望を入れて,εビル3階及びζビル1階の借室権利金の価格を,帳簿価額3426万円よりもはるかに高額である1億5000万円で評価しており,このことからも,原告,B及びCは,本件評価合意書において合理的な評価を追求しており,意図的に低額譲渡を行ったものではないことが窺われる。
そして,本件評価合意書の評価に,合理的な経済人の行為を逸脱するような不合理な点は認められないから,本件株式の売買価額は適正な価額と比較して低廉であるということはできず,本件株式の低額譲受けにより原告に受贈益が発生したとして行われた本件各更正処分はいずれも違法である。
(4)平成3年10月20日時点における本件株式の評価額についてア総論
原告が本件株式を平成2年12月31日時点で評価して売買価額としたことは,株式の取引における評価,売買金額についての当事者の合意,売買契約の締結,代金の決済という通常の取引経過に合致した流れにおける評価であり,何ら不合理な点はなく,評価方法自体も合理的であることは前記のとおりであって,本件売買契約による本件株式の譲渡を資産の低額譲渡と認めることはできない。
これに対し,被告は,本件株式の評価時点を平成3年10月20日と主張しており,この主張が,譲渡所得の収益計上時期に関する引渡基準と株式売買価額の合理性の問題とを混同するものとして失当であることは前記(3)イb(c)のとおりであるが,仮に本件株式の評価時点を被告の主張する平成3年10月20日としても,その評価額は,後記イないしエのとおり,9億0745万0142円となり,本件株式の売買代金額9億4328万円を下回るから,原告に対する本件株式の譲渡が資産の低額譲渡に該当すると認めることはできない。
イ平山ビルサービスの平成3年10月20日時点の純資産額について(なお,この項において,「帳簿価額」とは,平山ビルサービス決算報告書の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)
平山ビルサービスの純資産価額については,後記aないしfのほか,被告の予備的主張に係る金額と同額であり,その合計額は,別表7の「原告主張」欄記載のとおり,1億8019万1279円となる。
a貸倒引当金 △130万円
被告は,予備的主張において,貸倒引当金について,現実に債務として確定していないことから,取引相場のない株式を純資産価額で評価する際には負債として計上すべきでない旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,株式の交換価値とは,当該株式について買主と売主の需給が合致した点であり,非公開株式の交換価値の場合は,合理的な買主と売主の需給の合致点という理論値であるから,たとえ現実に発生していない債務であっても,合理的な買主であれば考慮するものと考えられる負債性引当金については,これを無視して純資産価額を算定することはできないというべきである。
そこで,合理的な買主であれば貸倒引当金を考慮するか否かを検討するに,法人税法52条1項は,内国法人が有する売掛金,貸付金その他これに準じる債権の貸倒れによる損失の見込額として,各事業年度において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち,当該金額のうち政令で定める一定の限度について,当該事業年度の所得の計算上損金の額に算入する旨規定しており,これを受けて,同法施行令97条が貸倒引当金の繰入限度額について規定しているところ,貸倒引当金の損金算入が認められた趣旨は,企業が活動を行う以上,貸金の貸倒れによる損失は避け難いことによるものであり,同条の定める繰入限度額についても,合理的な経験値から算出されたものであるとされている。
したがって,合理的な買主であれば,貸金を額面額で評価せず,少なくとも合理的な経験値に基づく貸倒引当金を考慮して純資産価額を算定するものというべきであり,被告の上記主張は失当である。
b内装設備0円
平山ビルサービスの内装設備は,いずれも賃借不動産における内装設備費,空調工事費,改修工事費及び消火栓工事費の合計額であり,これらの設備は,いずれも賃貸借契約の終了時に同社が原状回復義務を負うか,又は原状回復に代えて賃貸人に無償で所有権を移転しなければならないものであって,独立した所有権が認められず,有益費償還請求権の対象にもならないから,その交換価値は存在しないというべきである。
これに対し,被告は,法人税法上の評価は単に処分価値を求めるべきではないとして,帳簿価額による評価を主張する。
しかし,帳簿価額は,減価償却により将来の法人の費用となるべき金額の合計額にすぎず,会社の資産の客観的交換価値を示したものではないし,被告の評価は,不動産や有価証券については取引価格すなわち客観的交換価値を主張しながら,客観的交換価値が存在しない資産については,帳簿価額で評価するというものであるから,被告の上記主張は,明らかに合理性を欠くものといわざるを得ない。
c工具器具備品1929万7995円
工具器具備品については,独立した所有権は失われていないものの,いずれも賃貸用物件に備え付けられているものであって,直ちに取り外して売却することはできず,処分の自由が存在しないから,相当程度減額して評価されなければならない。
したがって,財産評価基本通達が定める借家権割合を参照して,帳簿価額より30パーセント減額した評価額とすることが相当である。
d出資金(ゴルフ会員権)2080万円
立野クラシックゴルフ倶楽部の会員権の評価額について,被告は
2600万円と主張し,その根拠として,平成3年10月16日から同月31日までの間に上記会員権が2600万円で売買された事例を挙げているが,上場株式等と比較して取引数が少ないゴルフクラブの会員権について,取引事例をそのまま当該会員権の客観的交換価値とすることは危険であり,そのため,課税実務上の取扱いにおいても,課税時期の取引相場の70パーセントの価格で評価することとされている(昭和48年2月2日付け直資3‐3国税庁長官通達)。
したがって,上記会員権は,2600万円の7割である1820万円と評価すべきであり,上記評価額と富士エースカントリークラブの会員権260万円の合計額2080万円をもって,出資金の純資産価額とすべきである。
e賞与引当金2165万9267円
非公開株式の交換価値が,合理的な売主と買主の需給の合致点という理論値であることからすれば,現実に発生していない債務であっても,合理的な買主であれば考慮するような未払金については,これを無視して純資産価額を算定すべきでないことは前記aのとおりであるから,現実に債務として確定していないことを理由に賞与引当金を負債に計上すべきでないとする被告の予備的主張は失当である。
ところで,法人税法54条が定める賞与引当金は,一般的な引当金ではなく,一種の未払金として措置されたものと解され,その繰入限度額の計算も,平山ビルサービスが採用していた支給期間基準方式の場合,過去の支給実績にかんがみ,過去1年間の賞与の支給額から当該事業年度に対応した賞与の額を控除して計算するものである。
すなわち,賞与引当金は,同社の年末の賞与の算定期間が6月1日ないし11月30日とされているのに対して,決算期を7月31日までとすると,決算期において既に対象期間のうち2か月が経過していることから,これに対応する額について未払金の計上を認めるものである。
したがって,当該金額は,既に経過した期間に対応する額の未払金である以上,株式を評価する上で当然考慮を要するものであり,被告の主張する株式の評価時点である平成3年10月20日の時点における賞与引当金の額は,2791万3000円(平山ビルサービスの年末の賞与の支給総額)÷183日(賞与算定対象期間である同年6月1日から11月30日までの日数)×142日(同年6月1日から10月20日までの日数)=2169万5267円となる。
f退職金2630万0275円
非公開株式の交換価値は,合理的な売主と買主の需給の合致点という理論値であり,合理的な買主が投下資本の回収ができない金額で株式を購入することは考えられないから,株式の交換価値が投下資本の回収可能額を上回ることはあり得ない。
ところで,非公開株式の投下資本の回収方法としては,持分の払戻しが認められない以上,配当と残余財産の分配しかない。
そして,合理的な判断をする株主であれば,企業収益を上げて配当を受領するよりも会社を解散して残余財産の分配を受ける方が有利と判断すれば,解散を前提とした処分価値を基準とする時価純資産価額方式によって株式を評価することがあり得るのに対し,解散を前提とした処分価値を基準としない時価純資産価額方式は,いわば絵に描いた餅を基準とする株式の評価方法であって,合理的な買主が採用すべき基準ということはできない。
そして,時価純資産価額方式による評価において,解散を前提とした処分価値を基準とする以上,退職金を評価時点における実額で控除して純資産価額を算定しなければならないから,退職金の控除を認めない被告の主張は失当である。
ウ原告の平成3年10月20日時点の純資産価額について(なお,この項において,「帳簿価額」とは,原告決算報告書の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)
原告の純資産価額については,後記aないしnのほか,被告の予備的主張に係る金額と同額であり,その合計額は,別表6の「原告主張」欄記載のとおりであり,マイナス1億5055万8352円となる。
a未収入金7795万8171円
被告は,原告のファーニーズ社に対する未収入金について,平成3年10月20日時点において貸倒れ等の事実が発生していないことから,減額すべき理由はない旨主張する。
しかし,本件は,法人の損金に計上できるか否かではなく,株式の評価が争われている事案であって,原告のファーニーズ社に対する未収入金についても,貸倒れの事実の有無ではなく,上記評価時点における現実の回収可能性を問題としなければならない。
しかるに,ファーニーズ社の上記評価時点における時価純資産額は,別表16記載のとおり,マイナス568万8140豪ドルであり,時価資産額を負債総額で除した回収可能率は54・07パーセントにすぎず,しかも,同社の主な営業活動は賃貸不動産投資であるところ,オーストラリアにおける賃貸産業は当時急速に落ち込んでおり,同社の所有物件についても収益が向上する見込みはなく,かえって売主であるゴールドコー社が約定していた保証賃料の支払を怠ったことから収益性は著しく低下し,評価額も取得価額を著しく下回る状況にあり,上記評価時点においてファーニーズ社の資産状態が好転する見通しはなかったものである。
これに対し,被告は,原告がファーニーズ社の決算貸借対照表に記載された固定資産の全部について鑑定評価を行っていないと非難するが,原告は,建物,敷地及び付属設備の価値を収益還元法により評価したものであり,被告の上記主張に係る固定資産は,すべて評価対象に含まれているから,被告の上記非難は失当である。
したがって,ファーニーズ社が上記評価時点において債務超過にあったことは明らかであり,このような会社に対する債権は,合理的な株式の買主の立場からは,額面額から相当程度減額した金額で評価せざるを得ないことから,原告は,当時のファーニーズ社の時価資産と負債総額の状態に照らして回収可能率を計算し,同社に対する債権額を評価したものである。
b貸倒引当金 △500万円
現実に発生していない債務であっても,合理的な買主であれば考慮するような未払金については,これを無視して純資産価額を算定すべきでないから,現実に債務として確定していないことを理由に貸倒引当金を負債に計上すべきでないとする被告の予備的主張は失当である。
c建物(γ) 932万1313円
貸家であることから,30パーセントの評価減を行ったものである。
d内装設備 0円
原告の内装設備は,いずれも賃借不動産について工事が行われた内装設備工事費であり,このうち,借家権価格に含めて別に評価するものは,別表17記載の1673万9598円であり,その他の内装設備は,いずれも原告が賃貸借契約の終了時に原状回復義務を負うものである。
そして,これらの内装設備はいずれも独立した所有権が認められず,有益費償還請求権の対象ともならないから,その交換価値はないものといわざるを得ない。
したがって,内装設備は,借家権の評価に含まれるものと交換価値が存在しないもののみであり,その評価額は0円である。
e工具器具備品4954万7633円
工具器具備品のうち,借家権の評価に含まれるものの金額を控除し,その余については,賃貸物件に備え付けられていることから,帳簿価額の70パーセントで評価した。
fγ土地 1億2726万3000円
(a)階層別効用率を勘案した評価について
γ土地は,区分所有建物(原告の所有部分は3階)の敷地であり,建物と独立して取引の対象となる可能性はなく,また,賃貸事業用建物の価額が建物の階層により異なることは,顕著な事実であるから,区分所有建物の敷地たる土地の評価において,階層別効用率(建物の各階層における快適性,収益性等の効用が異なるため,その効用を比率化したもの)を加味することは当然である。
そして,特に商業地の場合,通行人の目を引くことにより収益に結
びつく1階と,その他の階とは収益力が異なり,また2階,3階と階を重ねるごとに収益力が劣るから,交換価値も異なるというべきであり,原告の上記主張価額は,この階層別効用率を勘案し,1階を100パーセント,3階を70パーセントとする不動産取引の慣習に基づいて,γ土地を更地価格の70パーセントで評価したものであって,合理的な評価というべきである。
(b)更地価格の評価について
被告は,予備的主張において,γ土地を路線価により評価すること
が不当であるとして,本件裁決と同様の算定方法による評価を主張している。
しかし,当初は被告自身が,本件株式の評価時点である平成3年10月20日において,地価が急激に下落する状況にあり,γ等の地域がその傾向を最も強く反映していることから,正常な取引状況における売買実例の抽出が困難であり,公示価額もこのような状況に対応していないとして,平成3年分路線価を時価とすることが最も適切である旨主張していたものである。
しかも,被告の予備的主張に係る評価額は,1所在が不明な1事例のみの取引事例地と,基準地価格との平均額を基礎とし,2地域性を考慮せずに比準表をそのまま適用し,3γ土地のようにセットバックが完了した土地について,その分地積が狭くなるにもかかわらず,この点を評価に全く反映させておらず,4当時の公示価格が地価の下落を忠実に反映していないことを認識していながら,基準地価格をそのまま評価に持ち込もうとすること,等の点において不合理といわざるを得ない。
さらに,γ土地及び建物の収益価額が6522万円と評価されることに照らしても,原告の評価額は決して低額とはいえない。
(c)よって,路線価を基にして階層別効用率を勘案した原告のγ土地の評価は,合理的なものというべきである。
g地上権4639万9463円
被告は,原告が本件各更正処分に係る調査の際に提出した資料において,サイパンに有する地上権の単価を55米ドルとした旨主張する。
しかしながら,この単価は,原告が被告から上記資料を急いで作成するよう要請されたことから,現地のブローカーに電話で問合わせた際,回答を受けた金額にすぎず,裏付けとなる資料を取り寄せなかったものであるところ,上記金額は,現地ブローカーにふっかけられた価格であり,しかも原告が地上権を有する土地が原野であるのに対し,上記金額は商業地の価格であった。
そこで,原告は,サイパンにおける当時の地上権設定にかかる実際の取引事例に基づいて,改めて地上権の価額を別表18のとおり評価したものである。
そして,原告が地上権を有するサイパンの土地と取引事例地を対比すれば,現状ブッシュである土地を対象とする原告の地上権の評価が,取引事例地の場合より高いことはあり得ないから,サイパンの地上権の価額に関する原告の主張に合理性が認められることは明らかである。
h出資金9009万5000円
ゴルフ会員権については,仮に売買事例が存在したとしても,その価額に70パーセントを乗じて評価すべきであることは前記イdのとおりであるから,その評価額は次のとおりとなり,その余の出資金の評価額は,原告の平成3年7月期の帳簿価額のとおりである。
(a)太平洋クラブカントリー1800万円×70パーセント=1260万(b)立野クラッシクゴルフ倶楽部2600万円×70パーセント=1820万(c)習志野カントリークラブ2080万円×70パーセント=1456万i投資有価証券(平山ビルサービスの株式) 1億6214万4000円詳細については,前記イ及び別表7の「原告主張」欄記載のとおりである。
j投資有価証券(その他) 1億6083万6610円
前記aのとおり,ファーニーズ社は明らかな債務超過会社であるか
ら,その株式は0円と評価されるべきである。
また,B.Pリソーセス社の株式は,別表19のとおり,1131万6060円と評価されるべきである。
そして,上記科目に係る上記各社以外の会社の投資有価証券の評価額は,合計1億4952万0550円であるから,投資有価証券(その他)の評価額は,1億6083万6610円とすべきである
k長期貸付金 4億6667万8278円
原告の主張する評価額は,ファーニーズ社に対する長期貸付金418万1822豪ドルについて,同社の資産及び営業状態にかんがみ,回収可能率を54・07パーセントとして評価したものであり,これに反する被告の主張は,前記aのとおり,株式の評価と損金の計上とを混同し,かつ,ファーニーズ社が債務超過会社にならないと判断したうえで,帳簿価額をもって評価額とするものであるから,失当といわざるを得ない。
l長期立替金 1億1691万4173円
前記kと同様,ファーニーズ社に対する長期立替金合計99万0602豪ドルについて,回収可能率を54・07パーセントとして評価したものである。
m賞与引当金5891万4852円
前記イeのとおり,未払金としての性質を有する賞与引当金については,経過期間に対応する金額を控除しなければならないところ,平成3年10月20日の時点における賞与引当金の額は,6888万9000円(原告の年末の賞与の支給総額)÷183日(6月1日から11月30日までの日数)×142日(同年6月1日から10月20日までの日数)=5345万4852円に,546万円(平成3年7月期決算賞与支給明細書記載の決算賞与支給額合計440万円と「総務部社員の決算慰労金支給伺い書」記載の決算慰労金106万円の合計額で,いずれも同年10月20日までに支出が確定していたもの)を加えた,合計5891万4852円である。
n退職金1736万6124円
前記イdのとおり,純資産価額方式による株式の評価は,企業の解散価値を基準とするものであり,退職金は負債の額に含めて評価されなければならないから,被告の主張する評価額は失当である。
エ平山不動産の平成3年10月20日時点の純資産価額について(なお,この項において,「帳簿価額」とは,本件決算報告書の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)
原告の純資産価額については,後記aないしiのほか,被告の予備的主張に係る金額と同額であり,その合計額は,別表5の「原告主張」欄記載のとおり,9億0745万0142円となる。
a貸倒引当金△70万円
貸倒引当金を計上しなければならないことは,前記イaのとおりである。
b建物 386万2160円
貸家であることから,帳簿価額から30パーセントの評価減を行った。
c内装設備4528万7940円
内装設備のうち,εビル3階取付分の帳簿価額7014万7874円及びζビル1階取付分の帳簿価額77万9205円については,被告の主張に従って借家権価格に含めて評価したため,0円と評価した。
λビル取付分の帳簿価額6469万7058円については,賃貸借契約終了時に賃貸人が帳簿価額で買い取る旨の特約があるが,平山不動産が上記物件を転貸していることから処分が制限されるため,貸家に取り付けた内装設備として,帳簿価額の70パーセントの価額で評価した。
d工具器具備品1317万4042円
貸家に取り付けた分については,処分価値を考慮して,帳簿価額
1801万6808円の70パーセントで評価し,自用分56万2277円を加算した。
e土地
(a)α土地 3億9321万5000円
原告の更地価格の評価に関する基本的な考え方は,前記ウf(b)のとおりである。
また,α土地は,間口約6メートル,奥行約7・22メートルの面積狭小地であり,正面道路の幅員は8メートルである。
被告は,α土地の価格を地価公示地点(中央5‐2)の比準価格と所在不明の取引事例地との平均値で算定しているが,このような評価が不合理なことは,前記ウf(b)のとおりである。
さらに,被告が用いた上記地価公示地点は,αの中でも一等地であ
るのに対して,α土地はκの西側に位置した小規模飲食店の多い土地であり,正面道路の幅員が狭いため,建築基準法52条1項本文による容積率は480パーセントにすぎず,地積も43・3平方メートルしかなく,実際上建築可能な建物は,有効床面積を著しく減少させるエレベーターの設置を必要としない4階建てが限度である。
このような地域特性及び公法上の規制にかんがみれば,本来α土地
の基準地として上記地価公示地点を用いることは不適切であるが,あえて上記地価公示地点を用いて基準地に比準した価格を求めるとすれば,上記地価公示地点の公示価格を用いて比準価格を算定した鑑定評価書(甲95)において認められた地域格差(211分の100)程度の格差は認められなければならない。
そこで,この格差を用いてα土地の価額を算定すると,別表13のとおり,3億5895万7346円となり,従前の原告の主張価額3億9321万5000円よりも3425万7654円低額であるが,評価における誤差の範囲内と考えられる。
(b)β土地3億1183万5150円
原告の更地価格の評価に関する基本的な考え方は,α土地と同様で
ある。
また,β土地は,間口約10メートル,奥行約7メートル,地積75・90平方メートルの面積狭小,奥行短小の土地であり,指定容積率は600パーセントであるが,建築基準法56条1項1号の斜線制限により5階建てが限度であり,エレベーターを設置すれば有効床面積が僅少になるという欠陥のある土地であって,現に立体駐車場とする計画も立てられたが採算が合わずに断念されたところであり,5階建ての建物の建築を目指しても床面積は290平方メートルにしかならず,これは上限容積率(75・90平方メートル×600パーセント)の63・6パーセントにすぎない。
そこで,仮に,平成3年の基準地価格に比準してβ土地の価額を算定すると,β土地は居住用が最有効使用であること,最寄り駅まで遠いこと等を考慮して補正を行った結果,別表14のとおり,3億2584万2495円となるところ,この金額は,原告の主張する金額である,平成3年分路線価を基に上記事情を考慮した個別補正率を0・17として算出した価額3億1183万5150円よりも1400万7345円高額であるが,その差異は5パーセント未満であって,評価における誤差の範囲内ということができる。
(c)以上のとおり,α土地については相続財産評価よりも3425万7654円低く,β土地については相続財産評価よりも1400万7345円高い価額が算定されたが,いずれも評価における誤差の範囲内であり,しかも,両土地の価額を合計すれば,かえって相続財産評価よりも低額になるから,原告が相続財産評価の手法に従って本件土地を評価したことには合理性が認められるというべきである。
f出資金(原告株式) 0円
詳細については,前記ウ及び別表6の「原告主張」欄記載のとおりである。
g差入保証金 7億4316万3256円
(なお,原告は,第25回口頭弁論において陳述された最終準備書面の50頁及び別紙9において,差入保証金の主張額を「7億8093万0896円」と記載しているが,その主張内容に照らし,上記7億4316万3256円を主張額とするものと解する。)
差入保証金のうち,借家権価格に含めて評価されるεビル3階及びζビル1階の保証金は,0円と評価した。
h賞与引当金 118万9928円
前記イe記載のとおり,未払金としての性質を有する賞与引当金については,経過期間に対応する金額を控除しなければならないから,控除すべき賞与引当金の金額は,153万3500円(原告の年末の賞与の支給総額)÷183日(6月1日ないし11月30日の日数)×142日(6月1日ないし10月20日の日数)=118万9928円となる。
i未払退職金1億0896万5000円
未払退職金の内訳は,別表20記載のとおりである。
オ小括
以上のとおり,仮に本件株式の評価時点を平成3年10月20日としても,その評価額すなわち平山不動産の純資産価額は,上記エのとおり,9億0745万0142円であり,本件株式の売買代金9億4328万円を下回るから,本件株式の購入価額が適正な価額よりも低廉であることから原告に受贈益が発生したとする被告の主張は失当である。
(5)受贈益の計上時期について
仮に,本件株式の購入が資産の低額譲渡に当たり,原告に受贈益が発生したとしても,本件売買契約は,平成3年3月27日に締結されたものであって,上記受贈益は同日に確定しているから,当該受贈益は平成3年7月期において計上されるべきであるにもかかわらず,本件各更正処分は,原告の平成4年7月期の法人所得に対して行われたものであるから,違法というべきである。
これに対し,被告は,株式の引渡しが平成3年10月20日に行われたことから,受贈益が確定したのは同日である旨主張するが,税法においては権利確定主義が確定した判例であり,本件売買契約の成立により権利が確定している以上,受贈益も売買契約の成立により確定していると解さなければならない(相続税法基本通達1・1の2共7(2))。
また,本件覚書の第1項には,売買代金の補正条項があるが,これは一定の事実が発生した場合に売買代金が補正される旨規定するにすぎないものであり,契約の効力自体は同年3月27日に発生しているから,その時点で権利は確定したものというべきであり,仮にそうでないとしても,上記補正は,平成3年7月期の決算に基づいて行われるのであるから,上記事業年度終了時点で権利が確定していることは明らかである。
さらに,実質的に見ても,上記補正条項は,Bが平山不動産において株式投機を行い,同社の財産を著しく減少させることを防ぐために設けられた規定であり,同社が通常の営業を続ける限り,上記補正条項が効力を発することはあり得ない状況にあったことや,被告自身も認めるとおり,本件売買契約の履行が確実であったことからも,本件売買契約による原告の受贈益は,契約締結の時点で確定したというべきである。
したがって,本件売買契約によって原告に受贈益が発生したとしても,原告の平成3年7月期において発生したものというべきであるから,原告の本件事業年度及び本件課税事業年度における法人所得に対してした本件各更正処分は,違法な処分であって,取り消されなければならない。
(6)本件各更正処分に関する手続上の違法について
ア本件法人税更正処分における理由附記の不備の違法
本件更正通知書に附記された本件法人税更正処分の理由は,前記「前提となる事実」(3)アcのとおりであるところ,上記理由によっては,本件株式の評価時点をどの時点として評価したかが不明である。
このような理由附記が容認されるとすれば,課税庁は評価時点を変更することによって評価額を変更することができるから,更正処分に対する抗告訴訟において容易に理由の差し替えをすることが可能となり,青色申告制度を根底から覆すことにもなりかねない。
したがって,本件法人税更正処分には,理由附記の不備の違法があるというべきである。
イ理由の差し替えによる違法
a被告は,本件各更正処分において,本件株式の評価時点をその引渡しの日である平成3年10月20日としておきながら,本件の第2回口頭弁論期日に陳述した準備書面(一)において,株式の低額譲渡を理由として更正処分を行うに当たり最も重要な要素である株式の評価時点を,本件売買契約締結の日である同年3月27日と主張している。
しかるに,評価時点に関するこのような主張の差し替えを課税庁に許容すれば,更正の通知書に理由附記を要求する法人税法130条2項の趣旨を没却し,被処分者の防御権行使に格別の不利益が生じるから,このような理由の差し替えは違法なものとして認められないというべきである。
bまた,被告は,本件の第4回口頭弁論期日に陳述した準備書面(三)において,本件株式の評価時点を再び変更して,平成3年10月20日としているところ,このような主張の変更は,国税の更正等の期間制限に関する国税通則法70条1項の適用を回避するものであるとともに,原告の防御権を侵害するものであって,違法であるから,このような理由の差し替えを許容することはできない。
ウ本件法人税更正処分における調査義務違反の違法
本件法人税更正処分に先立って行われた調査は,資料調査第一課の担当職員による調査のみであり,調査部職員による調査は行われていない。
また,上記調査が不十分なものであったことは,被告が本件訴訟において本件株式の評価時点をはじめとする重要な主張をたびたび変更していることからも明らかである。
そして,青色申告法人である原告に対しては,原告の帳簿書類の記載を否認するに足りる十分な調査を行わなければ,更正処分はできないのであって(法人税法130条1項),もし被告が十分な調査を行っていれば,本件訴訟の提起後に本件株式の評価時点等の重要な主張をたびたび変更することはあり得ないはずである。
したがって,本件法人税更正処分及びその調査の結果に基づく本件法人特別税更正処分は,いずれも調査手続違反の違法により取り消されなければならない。
5争点
以上によれば,本件の争点は,次のとおりである。
(1)原告による本件株式の購入価額が,適正な価額に比較して低廉であることにより,本件事業年度において原告に受贈益が発生するか否かについてア本件株式の評価時点
(争点1)
イ本件株式の評価方法
(争点2)
ウ本件株式の評価に当たり,法人税額等相当額を控除することの要否(争点3)
エ本件株式の具体的な評価額
(争点4)
(2)仮に原告に受贈益が発生した場合,本件事業年度における益金として計上すべきか否か。
(争点5)
(3)本件各更正処分における手続上の違法の有無について
ア本件法人税更正処分における理由附記の不備による違法の有無
(争点6)
イ本件各更正処分に係る処分理由差し替えによる違法の有無
(争点7)
ウ本件法人税更正処分における調査義務違反による違法の有無
(争点8)
第3当裁判所の判断
1本件売買契約の経緯等
前記前提となる事実,証拠(甲2ないし5,8,9,乙8,31,33,証人C,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,本件売買契約の経緯等に関して,次の事実を認めることができる。
(1)Bは,平山不動産の代表取締役として不動産賃貸業を行うとともに,株式投資を行っていたが,平成2年ころ,株価の暴落により約20億円の損失を被った。
その際,同社は,札幌市所在の自社ビルを売却してこの損失を補填したが,Bは,このような巨額の損失を出したことに加え,不動産市況の悪化により不動産事業の将来性に不安を抱いたことや,持病の白内障に冒されていたことから,同年春ころ,同社の全株式である本件株式を原告又は第三者に売却して,会社経営から引退することを決意した。
(2)一方,原告は,不動産の有効利用に関する調査・企画・建築に関する業務等を目的とする株式会社であり,その発行済み株式の60パーセントを平山不動産が保有していた。
原告の代表取締役であり,平山ビルサービスの代表取締役及び平山不動産の非常勤役員であったAは,同人の母がBと再婚した際,養子縁組をしたことにより,Bの養子となった。
その後,Bは,Aが20歳のときに同人の母と離婚して別の女性と再婚しており,Bの相続人に当たる者としては,Aのほか,同人の姉,再婚後の妻及び同人との間の子の4名がいた。
原告は,Bが同人の保有する平山不動産の株式を第三者に売却したり,相続により同人が保有していた平山不動産の株式が分散することにより,同社が株式の60パーセントを保有する原告の会社経営が不安定となることを防止するために,平成2年11月ころ,Bから本件株式を買い取ることとした。
(3)原告とBは,本件株式の売買価額の判断を,原告の顧問税理士であり,顧問不動産鑑定士であるCにゆだねることとし,B,A及びCの三者で会合を開いて,本件株式の評価を同人に依頼するとともに,評価のための諸条件の打合わせを行った。
その際,原告とBは,1評価時点を平成2年12月31日とすること,2平山不動産のBに対する退職金については,同社の役員退職金規程を踏まえて別途協議すること,3本件株式の売買について,当分の間,第三者や従業員に公表しないことを合意し,株式の評価の詳細については,Cに一任したうえで,適宜意見交換することとした。
Cは,平成3年2月下旬ないし3月初旬ころ,B及びAに対し,上記合意に基づく本件株式の評価額として,9億4328万円という金額を提示した。
Aは,上記評価額を高いと思ったものの,本件株式を早期に買い取りたいことから,原告代表者としてこの金額を受け入れることとし,Bも異議を唱えなかったことから,上記金額をもって本件株式の売買価額とすることとされた。
また,Bは,同年7月末日まで平山不動産の代表取締役に在任することとされていたが,Aは,それまでに株式投資が行われることにより,上記評価時点である平成2年12月31日時点において求めた同社の利益が確保できなくなることを懸念して,同日時点における同社の利益を平成3年7月期の決算までに上記売買代金の5パーセント(4716万4000円)以上減少させた場合には,その減少額を本件株式の売買価額から差し引くことを条件とする旨希望したことから,本件覚書が取り交わされることとなった。
(4)本件売買契約は,平山不動産の設立記念日である平成3年3月27日に締結されることとされ,同日,Bと原告の間において,本件売買約定書及び本件評価合意書が取り交わされ,また,同日,B,原告及び平山不動産の間において,本件覚書が取り交わされた。
そして,同日,原告からBに対し,手付金として,本件株式の売買価額の1割に相当する金額が支払われた。
また,本件株式の売買代金の残金の決済は,Bが平山不動産の代表取締役及び取締役を退任した後に行うこととされたことから,結局,同社の創業記念日である同年10月20日が決済日とされ,同日,原告からBに対し,残金の支払が行われるとともに,Bから原告に対し,本件株式が引き渡された。
なお,平山不動産の平成3年7月期の利益は,本件仮決算書における利益と比較して,4552万5111円減少したが,上記減少額は,本件売買契約書における本件株式の売買代金9億4328万円の5パーセント(4716万4000円)を下回ったことから,本件覚書に基づく過不足金の精算は行われなかった。
(5)平山不動産における本件売買契約の締結前後における各事業年度の営業利益又は損失,及び,当期利益又は損失の額は,次のとおりである。
ア昭和62年8月1日から昭和63年7月31日まで
営業損失5833万5949円,当期損失1億2795万2467円イ昭和63年8月1日から平成元年7月31日まで
営業損失6042万7308円,当期利益4億4596万8554円ウ平成元年8月1日から平成2年7月31日まで
営業損失4280万6579円,当期損失19億6311万8237円エ平成2年8月1日から平成3年7月31日まで
営業利益1747万2924円,当期利益17億4508万1597円オ平成3年8月1日から平成4年7月31日まで
営業利益1967万1929円,当期損失1億1725万9340円カ平成4年8月1日から平成5年7月31日まで
営業利益1471万4378円,当期利益3998万8519円
また,本件株式が原告に引き渡された後も,平山不動産は営業を継続しており,解散した事実はない。
2本件株式の評価に関する問題の所在
法人税法22条2項は,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売,有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供,無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨規定しているところ,譲受時における適正な価額より低い対価をもってする資産の譲受けの場合も,当該資産の譲受けに係る対価の額と,上記資産の譲受時における適正な価額との差額が,無償による資産の譲受けに係るものとして,収益の額を構成するものと解される。
そして,被告は,本件売買契約が,Bと,その養子であるAが代表取締役を務める原告との間の取引であって,B及びAが本件株式の評価時点や評価方法について取決めをしていること,本件株式の購入価額の基礎とされた評価時点から本件株式の引渡しまでに長期間が経過していること等から,本件株式の購入価額が,本件株式の適正な価額に比して低廉であり,原告には,本件株式を低額で譲り受けたことにより,本件株式の時価と購入価額の差額に相当する受贈益が発生した旨主張している。
これに対し,原告は,本件評価合意書において採用された本件株式の評価方法が合理的と認められる以上,本件評価合意書の評価額に基づく本件株式の売買価額が適正な価額に比して低廉とはいえないから,本件株式を譲り受けたことにより原告に受贈益が発生したと認めることはできない旨主張している。
したがって,本件においては,本件株式を低額で譲り受けたことにより受贈益が発生したか否かを判断するに当たり,本件株式の適正な価額を求める必要があり,そのためには,本件株式の評価時点,評価方法,具体的な評価額の算定方法等について判断する必要があるというべきである。
そこで,以下,これらの点について検討することとする。
3本件株式の評価時点(争点1)について
(1)本件においては,本件株式の適正な価額,すなわち,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である時価を求めるに当たり,本件株式のどの時点における時価を評価すべきかが問題となるところ,被告は本件株式の引渡しの日である平成3年10月20日を評価時点とすべきであると主張しているのに対し,原告は,本件株式を平成2年12月31日時点で評価して売買価額としたことは合理的であるとして,同日を評価時点とすべきであると主張している。
(2)そこで検討するに,本件株式の評価は,本件株式を低額で譲り受けたことにより原告に受贈益が発生したか否かを判断するために必要とされるものであるから,本件株式については,このような受贈益が発生したとされる時点における時価により評価されるべきである。
そして,法人税法における所得とは,経済上の利得を意味するものであり,所得の発生の有無は,経済上の利得があったものといえるか否か,すなわち,実現した経済的成果に即して決せられるべきであるから,当該所得が実現した時点をもって,法人税法における所得の発生時点とすることが相当である。
このような前提に立つと,本件株式を低額で譲り受けたことにより原告に受贈益が発生したとすれば,当該受贈益は,その発生の基となる資産である本件株式を離れて単独で取引されるものでなく,本件株式の引渡しの時点においてその有無及び金額が確定するものであるから,本件株式が引き渡されることにより初めて実現するものというべきであり,そうであるとすれば,原告に当該受贈益による所得が発生することとなる時点は,本件株式が引き渡された時点ということとなる。
したがって,本件株式についても,その引渡しの日である平成3年10月20日の時点における時価により評価することが相当である。
(3)これに対し,原告は,本件売買契約の締結により本件株式を取得する権利が確定した以上,原告に受贈益が発生したとしても,その発生した時点は,本件売買契約が締結された平成3年3月27日の時点である旨主張する。
しかしながら,本件売買契約の締結により,原告に本件株式を取得する権利が生じたとしても,本件株式の引渡しがない段階においては,その譲受けに伴う受贈益を得ることが確実とはいえないから,当該受贈益が実現したと評価することはできないというべきである。
また,本件株式の売買価額については,本件覚書において,平山不動産の平成3年7月期の確定決算書が作成され次第,それに基づいて修正し,過不足金は速やかに精算されるものとするが,その差額が当初売買代金の5パーセント以内であるときはこの限りでないとする合意が成立していることに照らせば,上記合意が平山不動産におけるBの株式投資を抑制する趣旨に出たにすぎないものであったとしても,本件株式の売買価額は,本件売買契約の締結の日である同年3月27日の時点において確定したとはいえない。
したがって,原告の上記主張は理由がないというべきである。
(4)さらに,原告は,本件株式の評価時点を引渡しの日とすることは,譲渡所得の発生に関する引渡基準をそのまま持ち込むものであって,失当である旨主張する。
しかしながら,原告が本件株式を低額で譲り受けたことにより受贈益が発生した場合,その受贈益は本件株式の引渡しによって実現することに照らせば,本件株式の評価時点について,当該受贈益の発生の時点である本件株式の引渡しの日とすべきであることは,前記(2)のとおりであって,本件株式の評価時点の判断に当たり,譲渡所得の発生に関する引渡基準をそのまま用いたわけではないから,原告の上記主張は理由がない。
(5)したがって,原告による本件株式の購入価額が低廉であるか否かを判断するために,本件株式の適正な価額を評価するに当たっては,本件株式の引渡しの日である平成3年10月20日時点における時価をもって評価することが相当である。
4本件株式の評価方法(争点2)について
(1)本件株式は,証券取引所に上場されておらず,気配相場のある株式にも当たらないことは,前記「前提となる事実」(2)オaのとおりであるところ,このような取引相場のない株式を評価する方法としては,収益還元方式,配当還元方式,取引先例価格方式,類似業種比準方式,純資産価額方式等の方法が,それぞれ一定の合理性を有する方法として認められているところである。
そこで,本件株式の評価について,上記の評価方法の中からいずれを採用することが適切であるかについて検討する。
まず,前記「前提となる事実」(2)オbのとおり,本件株式には評価の参考となる売買実例はなく,平山不動産と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額が見あたらないことからすれば,本件株式の評価について,取引先例価格方式及び類似業種比準方式を採用することはできない。
また,前記1のとおり,本件売買契約は,Bが保有していた平山不動産の発行済株式の全部に当たる本件株式を原告に譲渡したものであること,原告が本件株式を譲り受けることにより,平山不動産が原告の100パーセント子会社という関係になることが認められるところ,このような事情にかんがみれば,本件株式の買主である原告としては,平山不動産の経営権を取得したことにより,業務執行上の判断のみならず,同社の存続,会社資産の譲渡,解散,清算等を決することも可能となったものであり,同社の資産は実質的に原告に帰属することとなったものということができる。
そうであるとすれば,親会社である原告にとって,子会社である平山不動産の株式を評価するには,同社の純資産価額を考慮することが不可欠であるというべきであるから,本件株式を評価するに当たっては,純資産価額方式によることが相当であるというべきである。
(2)次に,純資産価額方式に属する株式の評価方法としては,帳簿上の純資産価額に基づいて株式の評価額を算定する簿価純資産価額方式と,会社財産を時価で評価して算出した純資産額に基づいて株式の評価額を算定する時価純資産価額方式が認められる。
このうち,簿価純資産価額方式は,帳簿上の会社財産の評価額については取得価額で表示されることにより,当該財産の実際の価値と相違する場合が多いこと,期間損益の観点から毎期の費用として配分するために未配分とされた費用の額を示す資産が多いこと等に照らして,株式の実際の価値を明らかにする方法としては適切でなく,一定の評価時点における株式の実際の価値を明らかにするためには,当該時点における会社財産の時価を基準とした,時価純資産価額方式により評価することが相当というべきである。
(3)そして,法人税額の算定を目的として本件株主のような非公開株式の価額を評価する場合に,時価純資産価額方式により評価することが相当であることは,法人税法基本通達9114が,法人税法上,非上場株式で気配相場のないものの評価損を算定する場合において,本件株式のように,売買実例がなく,公開途上にある株式で上場等に際して株式の公募等が行われるものに当たらず,類似の法人の株式の価額もない場合について,当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額をもって,当該株式の価額とすることとしており,また,法人税法基本通達9115が,本件株式の場合のように,株式を保有する法人が評価対象会社にとって財産評価基本通達188の(2)に定める「中心的な同族」に該当するときは,当該株式は評価対象会社が「小会社」に該当するものとして,財産評価基本通達の例によって評価することを認めており,その場合,原則として純資産価額方式により評価されること等からも,裏付けられるものというべきである。
(4)ところで,本件株式を時価純資産価額方式により評価する場合の評価方法について,被告は,法人税法における株式の評価について,評価対象会社における事業活動の継続を前提とした純資産価額を基準として評価すべきであるとするのに対し,原告は,合理的な売主と買主の取引価額の予想値である株式の客観的交換価値を把握するには,企業を解体して資産を処分した場合に得られる経済的利益を基準とすることが合理的であるとして,解散を前提とした処分価値を基準とする純資産価額により評価すべきであると主張する。
そこで検討するに,企業を解体して資産を処分した場合に株主が得られる経済的利益が,企業を継続した場合に得られる利益よりも大きければ,前者の経済的利益により株式を評価すべきであることからすれば,会社の価値が不動産などの個々の資産の価値に帰着するような場合や,会社が近い将来解散,清算する可能性が高く,株式の価値が残余財産分配請求権に帰着するような場合には,会社の解散,清算により営業を解体することを前提として,個々の会社資産を処分した場合の価値を基準とした純資産価額により株式を評価することにも,一定の合理性が認められるというべきである。
しかしながら,本件のように,法人税額の算定に当たり,株式の低額譲受けに係る受贈益の発生の有無を判断するために当該株式の評価を行う場合,その評価に当たっては,不特定多数の当事者間で自由な経済取引が行われる場合における交換価値を基準とすべきであるところ,売買当事者間において,当該株式に係る会社の事業活動が継続することを前提に取引を行うことが想定されることが通常である場合には,当該会社が継続企業であることを前提とした交換価値を基準として株式を評価することが合理的というべきである。
そして,本件株式の場合,原告は,平山不動産の株式が第三者に譲渡されたり,分散すること等により,同社が株式の60パーセントを保有する原告の会社経営が不安定となることを防止するために本件株式を買い取ったものであること,平山不動産が本件売買契約の前後の6事業年度において,隔年で当期利益を計上しており,本件売買契約締結前の3事業年度において営業損失を計上したものの,その後の3事業年度において営業利益を計上していること,本件株式の譲渡後も平山不動産が解散をせずに営業を継続していることが認められるところ,これらの事実に照らせば,本件売買契約は,近い将来に平山不動産が解散し,清算されることを前提として行われた取引ではなく,同社の事業活動が継続することを前提に,同社の経営権を譲渡することを目的として,本件株式が譲渡されたものと認めるのが相当である。
したがって,本件株式の評価を行うに当たっては,平山不動産の解散を前提として個々の会社資産を処分した場合の価値を基準とするのではなく,同社の企業継続を前提とした交換価値を基準として,同社の時価純資産価額を求めることが相当というべきである。
5清算所得に対する法人税額等相当額の控除の要否(争点3)について(1)前記のとおり,本件株式の適正な価額,すなわち,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である時価を求めるに当たっては,評価対象会社である平山不動産の企業継続を前提として,時価純資産価額方式により評価することが相当である。
そして,取引相場のない株式の売買において,評価対象会社の企業継続が前提とされている場合,売買当事者間において,当該会社が解散し,清算されることにより,残余財産を分配することが現実に想定されていないことからすれば,合理的な売買当事者が売買価額を決定するに当たり,当該会社の純資産価額から当該会社の解散を前提とした清算所得に対する法人税額等相当額を控除した金額を基準とすることは,想定し難いものというべきである。
本件株式の売買の場合も,平山不動産の経営権を譲渡してその事業活動を継続することが取引の前提とされており,同社が解散し,清算されることが前提とされていなかったことが明らかである。
そうであるとすれば,このような状況における通常の売買当事者が,本件株式の売買価額を決定するに当たり,同社の純資産価額から同社が解散した場合に支払うべき清算所得に対する法人税額等相当額を控除した金額を基準とすることには,合理性が乏しいといわざるを得ない。
(2)これに対し,原告は,本件株式の売却が困難であり,清算を前提にしない限り投下資本を回収できないこと,原告のような法人が株式を取得した場合,これにより得られる利益が配当又は清算による残余財産の分配のいずれかであること等から,平山不動産の清算を前提とした法人税額等相当額を控除すべきであると主張する。
しかし,本件売買契約が平山不動産の経営権の移転を目的とするものであって,同社の解散,清算が想定されていないかったことは前記のとおりであり,このような場合においてまで,同社の解散,清算を前提とした残余財産の分配額により同社の資産価値を評価し得ることを根拠として,法人税額等相当額の控除を認めることは,法人税額の算定のために取引相場のない株式を評価する場合における企業継続を前提とした純資産価額の評価方法としては,相当でないというべきである。
そして,法人税法上,本件株式の評価のために時価純資産価額を求めるに当たり,法人税額等相当額の控除を認めるべきでないことについては,平成12年課法219国税庁長官通達による改正後の法人税基本通達9114において,法人が,非上場株式(売買実例のあるもの,及び,公開途上にある株式で当該株式の上場又は登録に際して株式の公募又は売出しが行われるものを除く。)の評価損を算定する場合に関するにおいて,1株当たりの純資産価額の計算に当たり,評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しない取扱いとされたことからも,裏付けられるものというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3)以上のとおりであるから,本件株式を時価純資産価額方式により評価する場合には,清算所得に対する法人税額等相当額の控除を行わずに評価することが相当である。
6本件株式の具体的な評価額(争点4)について
(1)総論
前記4(4)のとおり,本件株式の評価を行うに当たっては,平山不動産の企業継続を前提とした交換価値を基準として,同社の時価純資産価額を求めることが相当であるから,以下,本件株式の引渡しの日である平成3年10月20日の時点における同社の時価純資産価額について,資産及び負債に係る各勘定科目ごとに,具体的に検討することとする。
なお,被告は,本件株式の具体的な評価額に関する主位的主張として,平成3年10月20日に最も近い平山不動産の事業年度終了時における同社の純資産価額等を基に算定した価額を主張し,予備的主張として,法人税法の本来の立場に立ち返り,原告が本件各更正処分に係る調査の際に被告に提出した資料も斟酌して,できる限り同日時点における時価と認められるものを採用して算出した価額を主張しているところ,これらの主張自体から明らかなとおり,被告自身が,主位的主張よりも予備的主張に係る価額の方が本来の時価により近接した価額であることを前提として具体的な評価額に関する主張をしていることからすれば,同社の資産,負債に係る各勘定科目の評価額を検討するに当たっては,主位的主張の根拠を構成する勘定科目の説明として主張されているか,予備的主張の根拠を構成する勘定科目の説明として主張されているかには必ずしもかかわることなく,個々の勘定科目ごとに被告のこれらの各勘定科目に係る主張(以下,これらの主張に係る額を,単に「主位的主張額」「予備的主張額」という。)と原告の主張とを併せて考慮したうえで,時価として最も合理的な金額を判断する方法によることが相当であるから,以下,この方法により,各勘定科目の評価額を検討することとする。
(2)平山不動産の純資産価額に関する具体的な検討(なお,この項において,「帳簿価額」とは,本件決算報告書(乙8)の貸借対照表に記載された金額及び同表の基礎とされた帳簿上の金額をいう。)
ア現金・預金(帳簿価額16億6477万2355円,被告主位的主張額16億6477万2355円,予備的主張額16億6477万0650円,原告主張額16億6477万0650円)16億6477万0650円
平山不動産の現金・預金のうち,外貨建てに係る現金・預金の帳簿価額が2万8733・70米ドルであり,平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円)で換算すると368万6533円となること,邦貨建てに係る現金・預金の帳簿価額が16億6078万4117円であることは,当事者間に争いがないから,上記各金額の合計16億6477万0650円をもって,同日時点における評価額とすることが相当である。
イ有価証券(帳簿価額2億7552万5670円,被告主位的・予備的主張額2億5220万円,原告主張額2億5220万円)2億5220万円
平山不動産の有価証券のうち,上場株式については証券取引所における平成3年10月20日(日曜日)の直近取引日である同月18日の取引価格の終値を,気配相場のある株式については公表された同日の最終約定値段を基に,別表8のとおり算定した結果,これらの合計額が2億5220万円となることは,当事者間に争いがないから,同月20日の時点における有価証券の評価額は,2億5220万円とすることが相当である。
ウ貸倒引当金(帳簿価額△70万円,被告主位的主張額△70万円,予備的主張額0円,原告主張額△70万円)0円
a取引相場のない株式の価額を求めるに当たり,企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行う場合には,評価時点において現実に評価対象会社に帰属していると認められる経済的価値のみを純資産として評価の基礎とすべきであって,評価時点においては将来の債務負担の基礎となるべき法律関係が成立しているにすぎず,その具体的な負担の時期,金額等を確定できないものについては,現実に一定額の消極的経済価値を有する具体的な債務として確定しているものではないから,純資産価額の評価に当たり資産の額から控除すべき負債に含めることは,相当でないというべきである。
そして,貸倒引当金は,会計上の負債性引当金,すなわち,将来の支出を生じさせる見積負債としての引当金に当たるものにすぎず,現実に具体的な債務として確定しているわけではないから,純資産価額の算定に当たり,これを資産の額から控除すべき負債に含めないことが相当である。
bこれに対し,原告は,法人税法52条1項が合理的な経験値に基づく一定限度の貸倒引当金の損金算入を認めていることから,本件株式の合理的な買主であれば,合理的な経験値に基づく貸倒引当金を考慮して純資産価額を算定するとして,帳簿価額と同額の貸倒損失金を計上すべきであると主張する。
しかしながら,上記規定により一定限度の貸倒引当金が損金に算入されることが認められるとしても,そのことによって,当該貸倒引当金が現実に具体的な債務として確定することが認められるわけではないから,純資産価額の評価に当たり,このような貸倒引当金を負債として計上することは,相当でないというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
エ建物(帳簿価額551万7372円,被告主位的・予備的主張額551万7372円,原告主張額386万2160円)386万2160円
平山不動産の所有に係る建物であるα土地上の平山ビル(甲8)が賃貸物件であることは,当事者間に争いがないところ,原告は,賃貸に供されている建物については,賃貸人による処分が制限されていることから,他の賃貸に供されている減価償却資産と同様,帳簿価額551万7372円から30パーセント減額して評価すべきであると主張する。
そこで検討するに,本件株式の評価に当たっては,平山不動産の清算を前提とした個々の会社財産の処分価値としての純資産価額ではなく,企業継続を前提とした純資産価額を求めるべきであるから,継続した事業活動の一環として賃貸の用に供されている資産については,そのことにより所有者の処分の自由が制限されるからといって,一律に減額して評価することが直ちに相当であるということはできない。
しかしながら,建物の賃貸借の場合,借家人の地位が借地借家法等により特に保護される反面,賃貸人の建物に関する処分の自由が制約されることから,このような借家人の地位に伴う経済的価値を借家権の価額として把握したうえで,建物の評価に当たって,借家権の価額が建物に占める割合を考慮して減額することが一般的に行われている。
現に本件においても,原告の有する「賃借借家権」が資産として積極的に評価されることについて当事者間に争いがなく,貸家建付地であるα土地及びγ土地の評価に関する被告の主位的主張及び原告の主張において,借家権割合を考慮した減額評価が行われているところである 。
そして,建物の評価において,借家権の価額を考慮した減額評価をするに当たっては,本来であれば,借家権の残存期間,権利金の授受の有無,賃料,家屋の価額等の諸事情を勘案すべきであるところ,これらの事情を個々の建物について考慮したうえで借家権の客観的な価額を算出することが困難であることにかんがみれば,本件の場合,賃貸建物について,評価の安全性の見地に照らして,帳簿価額から一般に借家権割合として用いられる30パーセントの割合の減額を行う方法により評価することにも,一定の合理性が認められるものというべきである。
したがって,建物の評価額は,帳簿価額551万7372円から30パーセントを減額した,386万2160円とすることが相当である。
オ内装設備(帳簿価額1億3562万4137円,被告主位的主張額1億3562万4137円,予備的主張額6469万7058円,原告主張額4528万7940円)4528万7940円
a内装設備のうち,εビル3階取付分の帳簿価額7014万7874円及びζビル1階取付分の帳簿価額77万9205円については,借家権の価額に含めて評価することが相当であることについて,当事者間に争いがないことから,これを評価しないこととする。
b原告は,内装設備のうち,借家権の価額に含めて評価しないλビル取付分について,賃貸借契約終了時に賃貸人が帳簿価額で買い取る旨の特約があるものの,当該物件が他に転貸されていることから処分が制限されるとして,他の賃貸に供されている資産と同様,帳簿価額の70パーセントの価額で評価すべきであると主張する。
そこで検討するに,賃貸に供されている建物を評価するに当たり,借家権を考慮して30パーセントの減額評価を行うことに合理性が認められることは,前記エのとおりであるところ,賃貸借の目的物である建物に取り付けた内装設備についても,建物と一体として賃貸の用に供され,建物と同様に処分が制限されることからすれば,その評価に当たっては,建物と同様の割合で減額することが相当である。
そして,λビル取付分の内装設備が賃貸借の目的物である建物に取り付けられたものであることは,当事者間に争いがないから,上記内装設備の評価額は,帳簿価額の70パーセントである4528万7940円とすることが相当である。
カ工具器具備品(帳簿価額1857万9075円,被告主位的・予備的主張額1857万9075円,原告主張額1317万4042円)1317万4042円a工具器具備品のうち,自用分について,帳簿価額に基づき56万2277円と評価すべきであることは,当事者間に争いがない。
bまた,原告は,工具器具備品のうち,貸家に取り付けられたものについては,賃貸に供されていることにより処分が制限されることを考慮して,帳簿価額の70パーセントで評価すべきであると主張する。
そこで検討するに,賃貸に供されている建物を評価するに当たり,借家権を考慮して30パーセントの減額評価を行うことに合理性が認められることは,前記エのとおりである。
そして,工具器具備品は,本来独立した動産であるものの,貸家に取り付けた分については,建物とともに賃貸の用に供され,建物と同様に処分が制限されていることからすれば,このような工具器具備品の評価については,賃貸に供された建物と同様の割合で減額することが相当である。
したがって,工具器具備品の評価額は,自用分の帳簿価額56万2277円と,貸家取付け分に係る帳簿価額1801万6808円の70パーセントに相当する1261万1765円とを合計した,1317万4042円とすることが相当である。
キα土地(帳簿価額2170万円,被告主位的主張額3億9321万5000円,予備的主張額5億6523万円,原告主張額3億9321万5000円)
3億9321万5000円
a証拠(甲8,93ないし95,乙2,4,11,14,37,41,45,46,証人C,原告代表者)によれば,次の事実を認めることができる。
α土地は,地積43・30平方メートルの土地であり,正面道路の幅員は8メートルであり,歩道はない。
α土地は,κの西側に位置しており,容積率は700パーセントであるが,正面道路の幅員が8メートルにすぎないことから,建築基準法52条1項により,実際の容積率はその6割である480パーセントにすぎず,地積も43・3平方メートルしかない。
このため,実際上建築可能な建物は,有効床面積を著しく減少させるエレベーターの設置を必要としない4階建て程度までの建物に限られる。
このようなことから,平山不動産は,α土地上に地上4階建ての平山ビルを所有し,これを賃貸に供している。
一方,被告が用いた地価公示地点(中央52)は,東京都中央区αに所在する141平方メートルの土地であり,それぞれ歩道を有する並木通り及び花椿通りに面した角地にある。
b(a)被告は,本件裁決において採用された評価方法である,近隣の売買実例価格と公示価格についてそれぞれ時点修正及び地域要因格差率等の適用により補正した価格を平均して標準的画地価格を算出し,各土地の個別事情を考慮して時価を算定する方法が適切であるとして,α土地について,本件裁決における評価方法(その詳細は,別表21,24及び25のとおりである。
甲1)に則り,評価時点を平成3年10月20日に修正して再計算した金額を時価として主張する。
(b)しかしながら,上記評価方法については,標準的画地価格の算定の基礎として用いられた売買実例価格に関し,当該売買に係る土地の所在,地積,地形,道路の沿接状況等が明らかでなく,α土地の評価において参酌することが適切な売買実例であるか否かは不明といわざるを得ない。
また,証拠(甲93)によれば,公示価格又は基準価格を基に,比準表を用いて対象地の価額を算定する場合には,自然的及び社会的条件からみて土地の用途が同質と認められるまとまりのある地域ごとに,その地域の価格水準からみて30パーセント以内に分布する地理的範囲を一応の目安として,比準表を適用することとされていることが認められるところ,上記aで認定した事実によれば,α土地は,上記地価公示地点と異なり,歩道のない狭い街路に面しており,本件裁決においても,別表21のとおり,地域要因格差率が100分の66・73とされているところであり(甲1),上記地価公示地点の公示価格に比準表を適用してα土地の価額を算定することには,疑問の余地があるというべきである。
さらに,上記評価方法においては,このような売買実例価格及び公
示価格に基づいて算定された価格の平均値をもって標準的画地価格を算出しているところ,このような価格の平均値をもって対象地の価額を算出する方法が,当該対象地の時価を算定する方法として適切であることを認めるに足りる主張,立証はなく,このような評価方法が十分な合理性を有するということはできない。
そして,上記評価方法が時価の算出方法として適切でないことは,
被告自身が本件更正通知書に添付した「純資産価額の算定における土地の評価について」と題する書面において,「本件株式譲渡の評価時点である平成3年10月20日は,現在なお続いている地価の下落状況下にあり,さらに本件評価会社の保有する土地は,「α」,「β」及び「γ」に所在するため,下落傾向が最も強く反映される地域であることから,正常な取引事情下において行われた売買実例を抽出することが困難であり,公示価額も急激な地価の下落に対応し得ない状況であると判断される。」として,「平成3年分路線価を「時価」と認定することが,本件土地評価においては最も適切な評価方法であると判断される」と説明したうえ(甲8,34),第2回口頭弁論期日に陳述された被告準備書面(一)において,平成3年分路線価に基づく価額を主張をしていることからも,裏付けられるというべきである。
したがって,上記評価方法により算定された被告の予備的主張に係
る評価額をもってα土地の評価額とすることは,相当でないというべきである。
(c)これに対し,原告は,上記地価公示地点の公示価格をあえて用いたうえで,鑑定評価書(甲95)において認められた地域格差(211分の100)を用いて,別表13のとおり,α土地の価額を3億5895万7346円と算定しているが,そもそも上記公示価格から比準する方法によりα土地の価額を算出する方法自体に疑問の余地があることは前記(b)のとおりであるから,上記価額をもって,α土地の評価額とすることはできない。
c(a)他方,法人税額の算定に当たり,取引相場のない株式を評価するために純資産価額を求める場合,土地の評価は,合理的な当事者間の市場取引における価額によるべきであるから,取引によらない偶発的な原因により生じる相続税額を算定する際に基礎とされる路線価を用いることは,本来相当でないというべきである。
(b)しかしながら,証拠(甲8,9,34)及び弁論の全趣旨によれば,本件株式の評価時点である平成3年10月20日時点においては,地価が下落する傾向にあり,特に本件各土地の所在するα,β,γ等の地点は,下落傾向が強く反映される地域であったことが認められる。
そして,上記のような地価の下落傾向に加え,路線価が一般に公示
価格を一定程度下回るものであることからすれば,同日時点における時価を評価するために,原告の主位的主張のとおり,平成3年分路線価に基づいてα土地を評価することには,一定の合理性が認められるというべきであり,このことは,前記b(b)のとおり,被告自身が本件各更正処分において,正常な取引事情下において行われた売買実例を抽出することが困難であり,公示価額も急激な地価の下落に対応し得ない状況であるとして,本件各土地を上記路線価に基づいて評価していたことからも,裏付けられるというべきである。
そうすると,α土地について,別表11のとおり,平成3年分路線価により評価し,さらに貸家建付地であることを考慮して減額を行うと,その価額は3億9321万5000円となるところ,かかる評価方法が不合理であることを認めるに足りる具体的な主張,立証がないことに照らせば,上記価額をもって平成3年10月20日時点におけるα土地の評価額とすることも,不合理ということはできない。
(c)なお,原告は,平成2年12月31日の時点で公表されていた路線価を用いてα土地を3億3882万2000円と評価した本件評価合意書の評価方法にも,合理性が認められる旨主張する。
しかしながら,証拠(乙2,37)によれば,上記路線価は平成2年分路線価であると認められ,これに基づく上記評価は,平成3年分路線価よりも本件株式の評価時点である平成3年10月20日から離れた時点における評価であることや,本件評価合意書の評価においては,個別補正も行われていないことにかんがみれば,本件評価合意書の評価は,平成3年分路線価に基づく前記(b)の評価と比較して,合理性に乏しいといわざるを得ない。
dしたがって,α土地の平成3年10月20日時点における評価額は,3億9321万5000円とすることが相当である。
クβ土地(帳簿価額1億3693万8000円,被告主位的主張額3億7570万5000円,予備的主張額5億4504万1000円,原告主張額3億1183万5150円)3億7570万5000円
a証拠(甲8,93,94,乙2,5,12,15,38,41,47,48,証人C,原告代表者)によれば,次の事実を認めることができる。
β土地は,地積75・90平方メートルの,奥行短小の土地であり,前面道路の幅員は10メートルであり,約10度の勾配がある。
β土地の指定容積率は600パーセントであるが,建築基準法56条1項1号の斜線制限により,建築可能な建物は5階建てが限度であり,エレベーターを設置した場合には,床面積が僅少となる。
β土地は,現況において,更地に近い状態で駐車場として利用されているにすぎない。
一方,被告が用いた基準地(新宿531)は,東京都新宿区μに所在する132平方メートルの土地であり,前面道路は,幅員12メートルの勾配のない道路である。
b(a)被告は,本件裁決において採用された評価方法である,近隣の売買実例価格と基準地価格についてそれぞれ時点修正及び地域要因格差率等の適用により補正した価格を平均して標準的画地価格を算出し,各土地の個別事情を考慮して時価を算定する方法が適切であるとして,β土地について,本件裁決における評価方法(その詳細は,別表23ないし25のとおりである。
甲1)に則り,評価時点を平成3年10月20日に修正して再計算した金額を時価として主張する。
(b)しかしながら,上記評価方法については,α土地の場合と同様に,売買実例価格に係る土地の所在,地積,地形,道路の沿接状況等が明らかでなく,このような売買実例価格をβ土地の評価において参酌することが適切か否かは,不明といわざるを得ないうえに,上記の売買実例価格と,基準地価格に基づいて算定された価格の平均値を基礎として対象地の価額を算出する方法に,十分な合理性を認めることはできない。
そして,上記評価方法が時価の算出方法として適切でないことは,
前記キb(b)のとおり,被告が「純資産価額の算定における土地の評価について」と題する書面において,本件株式の譲渡の時点である平成3年10月20日には地価が下落状況にあり,特に本件各土地の所在地は下落傾向が最も強く反映される地域であることから,正常な取引事情下における売買実例を抽出することが困難であるとして,平成3年分路線価を時価と認定することが適切である旨説明したうえ,本件口頭弁論において,平成3年分路線価に基づく評価額を主張していることからも,裏付けられるというべきである。
したがって,上記評価方法により算定された被告の予備的主張に係
る価額をもってβ土地の評価額とすることは,相当でないというべきである。
(c)これに対し,原告は,上記基準地における基準地価格から比準する方法により,別表14のとおり,β土地の価額を3億2584万2495円と算定しているが,原告の主張及び本件の各証拠によっても,算定に当たり用いられた地域格差率(135分の100)を算出した具体的な根拠が必ずしも明らかとはいえないことに照らせば,上記価額をもってβ土地の評価額とすることはできない。
c(a)他方,法人税額の算定に当たり,取引相場のない株式を評価するために純資産価額を求める場合に,路線価を用いて土地の時価を評価することは,本来相当でないものの,本件株式の評価時点である平成3年10月20日時点においては,地価が下落する傾向にあり,特に本件各土地の所在する地点は,その傾向が強く反映される地域であったことからすれば,平成3年分路線価に基づいて同日時点におけるβ土地を評価することに一定の合理性が認められることは,前記キcのとおりである。
そうすると,β土地について,平成3年分路線価を基に評価した価額は,別表11のとおり,3億7570万5000円となるから,上記価額をもって,平成3年10月20日時点におけるβ土地の評価額とすることが相当である。
(b)なお,原告は,平成3年分路線価に基づく上記評価額から,面積狭小,奥行短小であることを考慮して算出した個別補正率0・17を用いて減額した価額である3億1183万5150円が,β土地の評価額として相当である旨主張する。
しかしながら,原告は上記個別補正率の根拠について,本件で実際
に建築できる建物がせいぜい容積率500パーセント程度であることを前提に,建築基準法上の容積率600パーセントに対する上記容積率の比を基に算出した値である旨主張しているが,容積率を500パーセントとしたことに客観的な根拠が認められないことからすれば,上記個別補正率をもって減額することが合理的ということはできない。
加えて,路線価が公示価格を一定程度下回るものであることは前記
のとおりであるところ,このような路線価について,客観性の乏しい上記個別補正率をもって更に減額評価することには,疑問があるといわざるを得ない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(c)また,原告は,平成2年12月31日の時点で公表されていた路線価を用いて,個別補正を行わずに,β土地を3億1878万円と評価した本件評価合意書の評価方法にも合理性が認められる旨主張するが,このような評価が,平成3年分路線価に基づく前記(a)の評価と比較して合理性に乏しいことは,前記キc(c)のとおりである。
dしたがって,β土地の平成3年10月20日時点における評価額は,3億7570万5000円とすることが相当である。
ケ出資金(原告の株式)(帳簿価額1億5809万5100円,被告主位的主張額7億692万円,予備的主張額5億7276万円,原告主張額0円)5億4012万円原告の純資産価額は,後記(3)のとおり,9億0036万1622円であり,その発行済株式数は20万株であるから,原告の株式の時価は,1株当たり4501円となるところ,前記「前提となる事実」(2)オc及び弁論の全趣旨によれば,平山不動産が平成3年10月20日の時点で,原告の株式12万株を保有していたことが認められるから,平山不動産の保有する原告の株式の同日時点における評価額は,5億4012万円となる。
コ差入保証金(帳簿価額7億8238万5256円,被告主位的主張額7億8238万5256円,予備的主張額7億8093万0896円,原告主張額7億4316万3256円。
なお,原告主張額を上記金額と解すべきことについては,前記「原告の主張」(4)エgのとおりである。)7億8093万0896円
証拠(甲39)によれば,平山不動産の差入保証金の帳簿価額の内訳は,別表26の「簿価」欄記載のとおりであり,このうち,δビル9階分の保証金の一部145万4360円が解約料償却分とされており,賃貸借の終了時に返還の対象とならないことが認められるから,差入保証金の評価額は,帳簿価額の合計額から上記145万4360円を控除して,7億8093万0896円とすることが相当である。
これに対し,原告は,εビル3階及びζビル1階の差入保証金については,借家権価格に含めて評価することが相当であるとして,これらの評価額を0円とすべき旨主張するが,εビル3階及びζビル1階については,平山不動産が賃借したうえで転貸しており,差入保証金と借室権利金は帳簿上個別に評価されていること(甲39,乙41により認める。)に照らせば,差入保証金として借家権価格に含めずに評価することが相当というべきである。
サ借室権利金(帳簿価額3137万2000円,被告主位的主張額3137万2000円,予備的主張額1億8659万6100円,原告主張額1億8659万6100円)1億8659万6100円
証拠(乙41)によれば,原告が被告に対し,本件各更正処分に係る調査の際に提出した資料において,εビル3階及びζビル1階の借室権利金に関する売買事例等に基づく評価額が,それぞれ1億5179万6100円及び3480万円とされ,その他帳簿上に記載された借室権利金の評価額は,繰延資産であることから,0円とされていることが認められる。
そして,上記資料における評価額は,具体的な実例に基づくものであり,その合理性を否定するに足りる主張,立証がないことに照らせば,時価の評価額として帳簿価額よりも適切であるというべきであるから,上記資料における評価額の合計1億8659万6100円をもって,借室権利金の評価額とすることが相当である。
シ減価償却費(帳簿価額0円(記載なし),被告主位的主張額0円(主張なし),予備的主張額△648万円,原告主張額△648万円)△648万円被告は,減価償却資産について,平成3年8月1日から同年10月20日までの期間に対応する減価償却費として648万円を資産の額から控除することが相当である旨主張するところ,原告はこれを争わないから,平山不動産の純資産価額の評価に当たり,減価償却費648万円を資産の額から控除することとする。
ス賞与引当金(帳簿価額80万円,被告主位的主張額80万円,予備的主張額0円,原告主張額118万9928円) 0円
a前記ウaのとおり,取引相場のない株式の価額を求めるに当たり,企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行う場合,評価時点においては将来の債務負担の基礎となるべき法律関係が成立しているにすぎず,具体的な負担の時期,金額等を確定できないものについては,現実に具体的な債務として確定していないことから,これを負債に含めることは相当でないというべきである。
bなお,法人税法54条1項(ただし,平成10年法律第24号により廃止される前のもの。
以下,この項について同じ。)は,法人が使用人及び使用人兼務役員に対して支給する賞与に充てるため,各事業年度において損金経理により賞与引当金勘定に繰り入れた金額のうち,これらの者に当該事業年度終了の日の属する年の前年において支給された賞与の額及び同日の属する年において同日までに支給された賞与の額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額を損金の額に算入する旨規定しているところ,上記規定は,賞与引当金が,過去の実績に照らした賞与の支給を見越して計上されるものであり,既に経過した期間に対応する未払金として措置されたものと解されることから,過去の実績から支給が確実と考えられる賞与引当金について,一定の条件の下で損金算入を認めたものと解され,この規定によって,賞与引当金が現実に具体的な債務となるわけではないから,純資産価額の算定に当たり,これを負債として控除することは相当でないというべきである。
セ法人税等引当金(帳簿価額2億7781万4600円,被告主位的主張額2億7781万4600円,予備的主張額2億8319万0200円,原告主張額2億8319万0200円)2億8319万0200円
被告は,上記予備的主張に係る法人税等引当金の価額について,法人税2億1516万2500円,都民税4328万1400円及び事業税2474万6300円を合計した金額である旨主張し,原告は,上記各税額の内訳及び上記合計額が法人税等引当金の評価額として相当であることについて,明らかに争わない。
したがって,法人税等引当金の評価額は,2億8319万0200円とすることが相当である。
ソ未払退職金(帳簿価額0円,被告主位的・予備的主張額1億0150万円,原告主張額1億0896万5000円)1億0150万円
a平成3年10月20日にBが平山不動産を退職し,同人に対する役員退職金の額が1億0150万円であることは,当事者間に争いがないところ,上記金額は,同日時点において確定した債務として,負債に計上することが相当である。
b原告は,これに加えて,別表20記載のとおり,D及びEに対する退職金合計746万5000円も負債に計上すべきであると主張する。
そこで検討するに,証拠(甲97)によれば,上記2名に対する退職金の支給日は,平成3年11月25日であることが認められるものの,同年10月20日の時点までに,上記2名が退職したことを認めるに足りる証拠はないから,同日の時点で,上記2名に対する退職金債務が具体的な債務として確定していたということはできない。
そうすると,前記ウaのとおり,本件における純資産価額の評価に当たり,評価時点において現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,上記2名に対する未払退職金を負債に計上すべきであるとする原告の上記主張は採用できない。
cしたがって,未払退職金の評価額は,1億0150万円とすることが相当である。
タ平山不動産の資産及び負債に係る各勘定科目のうち,上記アないしソ以外の各勘定科目について,帳簿価額により評価すべきことは,当事者間に争いがないところ,これらの各勘定科目の評価額は,別表5のとおりである。
(3)原告の純資産価額について
ア総論
前記のとおり,平山不動産は,平成3年10月20日の時点において,原告の発行済み株式総数20万株の過半数に当たる12万株を保有していたものであるところ,弁論の全趣旨によれば,原告の株式については,証券取引所に上場されておらず,気配相場のある株式にも当たらず,評価の参考になる売買実例や,事業規模等が類似する他の法人の株式も見当たらないこと,原告が今日に至るまで解散することなく営業を継続していることが認められるから,原告の株式の時価については,平山不動産の株式と同様に,企業継続を前提として,時価純資産価額方式により評価することが相当である。
そこで,以下,平成3年10月20日の時点における原告の時価純資産価額について,資産及び負債に係る各勘定科目ごとに検討する。
イ原告の純資産価額に関する具体的な検討
a現金・預金(帳簿価額10億1501万2215円,被告主位的主張額10億1501万2215円,予備的主張額10億1271万8988円,原告主張額10億1271万8988円)10億1271万8988円
原告の現金・預金のうち,外貨建てに係る現金・預金の帳簿価額を平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円,1豪ドル100・85円)でそれぞれ換算した金額と,邦貨建てに係る現金・預金の帳簿価額を合計した金額が10億1271万8988円となることは,当事者間に争いがないから,上記金額をもって,同日時点における現金・預金の評価額とすることが相当である。
b未成企画支出金(帳簿価額2676万3138円,被告主位的主張額2676万3138円,予備的主張額970万8738円,原告主張額970万8738円)970万8738円
原告の未成企画支出金のうち,ゴールドコー社へ送金した不動産取得のための手付金1705万4400円について,同社の平成3年10月20日現在における資産状況,支払能力等に照らして,全額が回収できないことは,当事者間に争いがない。
したがって,未成企画支出金の評価額は,帳簿価額2676万3138円から上記手付金1705万4400円を控除して算出した,970万8738円とすることが相当である。
c未収入金(帳簿価額8914万円,被告主位的主張額8914万円,予備的主張額8738万6625円,原告主張額7795万8171円)8738万6625円(a)原告の未収入金のうち,外貨建てに係る未収入金の帳簿価額が3万3214・65米ドル,2670・74豪ドル及び16万5367・5加ドルであり,平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円,1豪ドル100・85円,1加ドル113・07円)でそれぞれ換算すると426万1439円,26万9344円及び1869万8103円となること,邦貨建てに係る未収入金の帳簿価額が6415万7739円であることは,当事者間に争いがない。
したがって,未収入金については,外貨建てに係る未収入金の上記
為替レートによる邦貨換算額と,邦貨建てに係る未収入金の帳簿価額の合計8738万6625円をもって,同日時点における評価額とすることが相当である。
(b)これに対し,原告は,平成3年10月20日の時点でファーニーズ社が債務超過にあったことは明らかであるとして,同社の時価資産と負債総額から回収可能率を54・07パーセントと計算し,これに基づいて同社に対する債権額を減額評価したうえで,未収入金の総額が7795万8171円である旨主張する。
しかしながら,債権については,債権者がその全額を回収できる
権利を有していることからすれば,その経済的価値は,原則として,債権額により評価すべきであり,債務者の資産状況,支払能力等に基づく債権の回収可能性に応じて債権額を直ちに減額評価することは,客観性,確実性の確保に困難が伴うため,課税の公平を害するおそれがあることから,相当でないというべきであって,このことは,法人税法上,課税所得の計算において,債権の評価損を損金の額に算入することが認められていないこと(同法33条1項,2項)からも窺われるものというべきである。
したがって,法人税額の算定における債権の評価に当たっては,
貸倒れにより債権全額を回収できないことが明らかとなるなどの事実が生じない限り,その債権額において資産として評価することが相当であって,債権の回収可能性を考慮した減額評価を認めることはできないというべきである。
そこで,ファーニーズ社について,貸倒れにより債権全額を回収
できないことが明らかとなるなどの事実が生じたか否かについて検討するに,証拠(甲8,20ないし26,96の1ないし6,原告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,ファーニーズ社は,平成元年10月19日,オーストラリアにおいて貸しビル事業を目的として設立された会社であること,同社がゴールドコー社からビルを購入した際,同社が年間100万豪ドルの賃料の支払を保証していたにもかかわらず,実際には資金難により平成3年2月までに5万ドルしか支払わなかったことや,上記ビルに空室が存在して利益が上がらなかったこと等から,上記ビルを収益還元法により評価した場合のファーニーズ社の同年6月期における財務状況は,別表16下段記載のとおり,負債が資産を大幅に上回っており,しかも実質的な資産は5億円の抵当権が設定された上記ビルのみという状態であったこと,他方において,同社が同年10月20日時点において倒産したり,原告が債権放棄をした事実はなく,その後ファーニーズ社は平成10年に清算結了したことを,それぞれ認めることができる。
他方,原告は,ファーニーズ社の平成3年6月期の貸借対照表(甲
20)に計上されている土地,建物及び設備備品について,同年11月15日時点の評価額が662万5000豪ドルにすぎないこと(甲26)から,同社の財務状況は,別表16下段記載のとおりであって,債務超過は明らかであったと主張する。
しかしながら,上記評価額は,収益還元法によるものであり,取
得後約2年しか経過していない土地を含む評価であるにもかかわらず,帳簿価額1569万7571豪ドルを著しく下回るものであることや,上記評価額自体が,上記評価額に含まれる資産は,ファーニーズ社の平成3年6月期の貸借対照表(甲25。
その記載内容は,別表16のとおりである。)に記載されている固定資産(「Property,plant and equipment Freeholdland」「Building」「Plant and equipment」)と明確に一致せず,さらに,原告が本件各更正処分に係る調査の際提出した資料(乙41)では,上記評価額が設備を含まないものとして扱われており,上記評価の対象とされる資産の内容が明確でないことに照らせば,上記評価額をもって,ファーニーズ社が債務超過に陥っていたことが明らかであると認めることはできない。
そして,平成3年10月20日の時点において,ファーニーズ社は設立後わずか約2年しか経過しておらず,実質的な営業活動を開始したばかりであり,同年6月30日の営業年度終了において作成された役員報告書にも,「会社は現状において,オーストラリア不動産市場への更なる拡張を考えている。」と記載されていること(甲25),同年10月20日の時点において,同社が倒産したり,原告が債権放棄をした事実はないこと等に照らせば,前記のようなファーニーズ社の財務状況を考慮しても,原告のファーニーズ社に対する債権について,同日の時点において貸倒れ等の発生により全額回収できないことが明らかになっていたとまでは認められず,他に,同社に対する上記債権が全額回収できないことが明らかになったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告のファーニーズ社に対する未収入金は,その債
権額に基づいて評価すべきであって,原告の上記主張は採用することができない。
d仮払金(帳簿価額933万6703円,被告主位的主張額933万6703円,予備的主張額433万6703円,原告主張額433万6703円) 433万6703円仮払金の帳簿価額933万6703円のうち,原告が神奈川県秦野市ηの土地を購入する際に売主に支払った500万円について,平成元年7月28日に同土地を譲渡した際に原価に振り替えるべきところを失念して,帳簿上そのまま仮払金として計上していたことは,当事者間に争いがない。
したがって,仮払金の評価額は,帳簿価額から上記500万円を控除した433万6703円とすることが相当である。
e貸倒引当金(帳簿価額△500万円,被告主位的主張額△500万円,予備的主張額0円,原告主張額△500万円) 0円
法人税額を算定するために取引相場のない株式の価額を求めるに当たり,企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行う場合には,現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,貸倒引当金についても,これを負債として計上すべきでないことは,前記(2)ウaとおりである。
f建物(帳簿価額2億1709万0226円,被告主位的主張額2億1709万0226円,予備的主張額1331万6162円(γのみ),原告主張額932万1313円(γのみ))932万1313円
原告の保有する建物のうち,オーストラリアのマンションについて
は,後記jの土地の評価に含めて評価し,γ土地上の共同建物のみを建物の科目において評価することは,当事者間に争いがない。
また,γ土地上の建物の帳簿価額が1331万6162円であることも,当事者間に争いがない。
さらに,原告は,上記建物が賃貸物件であることを理由として,帳簿価額から30パーセント減額して評価すべきである旨主張するところ,上記建物が賃貸借の目的とされていることは,当事者間に争いがなく,賃貸に供されている建物を評価するに当たり,借家権を考慮して30パーセントの減額評価を行うことに合理性が認められることは,前記(2)エのとおりである。
したがって,上記建物の評価額は,帳簿価額1331万6162円の70パーセントに相当する932万1313円とすることが相当である。
g内装設備(帳簿価額2億1485万4156円,被告主位的主張額2億1485万4156円,予備的主張額1億9962万6901円,原告主張額0円)1億9962万6901円
(a)原告の内装設備(その内訳は,別表17のとおりである。
甲39,乙41及び弁論の全趣旨により認める。)のうち,θビル1階及び3階並びに松原ビル1階に係る内装設備の価額合計1522万7255円について,借家権価格に含めて別途評価することは,当事者間に争いがない。
(b)また,原告は,νビル(γ土地上の建物。
甲93,94により認める。)に係る内装設備151万2343円についても,別途評価する旨主張しており,原告の主張は,上記内装設備の評価をγの建物に含める趣旨と解されるところ,原告決算報告書の貸借対照表において,建物と内装設備が別個の科目として評価されていることに照らせば,γの建物の帳簿価額は,上記内装設備を含まない趣旨であることが明らかであるから,上記内装設備も,建物とは別に,帳簿価額により評価することが相当である。
(c)さらに,原告は,その他の内装設備について,いずれも原告が賃借した不動産について工事が行われたものであり,原告が賃貸借契約の終了時に原状回復義務を負うものであって,独立した所有権が認められず,有益費償還請求権の対象ともならないから,その交換価値は存在せず,評価額を0円とすべき旨主張する。
しかし,将来賃貸借契約が終了した時点における資産価値であれば
ともかく,本件株式の評価時点においては,これらの内装設備は資産として実際に存在し,原告の事業の用に供されていることに照らせば,これらの資産について,将来的な交換価値が存在しないことを理由に,評価額を0円とすることは相当でないというべきである。
また,証拠(甲69,70)によれば,原告の賃借物件に係る賃貸借契約書において,原告が賃借物件内に施した内装設備について,賃貸人の承諾を得て新賃借人に譲渡することができる旨の約定が存在する場合があることが認められ,このような場合には,当該内装設備に将来的な交換価値があることは否定できないから,原告の上記主張はその前提を欠き,失当というべきである。
したがって,その他の内装設備についても,資産としての価値を認
めるべきであり,その評価は,帳簿価額によることが相当である。
(d)以上によれば,内装設備の評価額は,帳簿価額2億1485万4156円から,別途借家権価格に含めて評価することとした内装設備に係る価額1522万7255円を控除した,1億9962万6901円とすることが相当である。
h工具器具備品(帳簿価額8216万6558円,被告主位的主張額8216万6558円,予備的主張額7078万2333円,原告主張額4954万7633円)4954万7633円
原告の工具器具備品のうち,後記tのビルに係る賃借借家権の評価に含まれるものの価額合計1138万4225円について,これを工具器具備品から控除して評価すべきことは,当事者間に争いがない。
さらに,原告は,その余の工具器具備品について,賃貸物件に備え付けられていることから,帳簿価額の70パーーセントで評価すべき旨主張するところ,建物とともに賃貸に供されている工具器具備品について,建物と同様の割合による減額評価を認めることが相当であることは,前記(2)カのとおりであるから,上記工具器具備品については,帳簿価額の70パーセントで評価することが相当である。
したがって,原告の工具器具備品の評価額は,帳簿価額8216万6558円から賃借借家権の評価に含まれる価額1138万4225円を控除した残額7078万2333円の70パーセントに相当する,4954万7633円とすべきである。
iγ土地(帳簿価額1億5743万円,被告主位的主張額1億8180万4000円,予備的主張額2億0359万2000円,原告主張額1億2726万3000円)1億8180万4000円
(a)証拠(甲8,93,94,乙2,6,41,47,48,証人C,原告代表者)によれば,次の事実を認めることができる。
γ土地は,地積132・23平方メートルの土地であり,区分所有建物の敷地である。
γ土地上の建物(νビル)は,鉄筋コンクリート造3階建ての店舗・住宅で,原告の所有部分は3階であり,原告のγ土地の持分は,1万分の2706である。
一方,被告が用いた基準地(港9)は,東京都港区γに所在する
385平方メートルの土地である。
(b)被告は,γ土地について,β土地と同様,評価時点を平成3年10月20日として,近隣の売買実例価格と基準地価格についてそれぞれ時点修正及び地域要因格差率等の適用により補正した価格を平均して標準的画地価格を算出し,各土地の個別事情を考慮して時価を算定する方法(その詳細は,別表22,24及び25のとおりである。
甲1)により算出した金額を時価として主張する。
しかしながら,γ土地についても,α土地及びβ土地と同様に,
上記評価方法に用いられた売買実例価格に係る土地の所在,地積,地形,道路の沿接状況等が明らかでなく,このような売買実例価格をγ土地の評価において参酌することが適切か否かは,不明といわざるを得ないうえに,売買実例価格と,基準地価格に基づいて算定された価格の平均値を基礎として対象地の価額を算出する方法についても,十分な合理性を認めることはできない。
そして,上記評価方法が時価の算出方法として適切でないこと
は,前記(2)キb(b)のとおり,被告の「純資産価額の算定における土地の評価について」と題する書面において,正常な取引事情下における売買実例を抽出することが困難であるとして,平成3年分路線価を時価と認定すべきである旨説明し,第2回口頭弁論期日に陳述された被告準備書面(一)においても,平成3年分路線価に基づく評価額を主張していることからも,裏付けられるというべきである。
したがって,上記評価方法により算定された被告の予備的主張に
係る価額をもってγ土地の評価額とすることは,相当でないというべきである。
(c)他方,法人税額の算定に当たり,取引相場のない株式を評価するために純資産価額を求める場合に,路線価を用いて土地の時価を評価することは,本来相当でないものの,本件株式の評価時点である平成3年10月20日時点においては,地価が下落する傾向にあり,特にγなど本件各土地の所在する地点は,その傾向が強く反映される地域であったことから,平成3年分路線価に基づいて同日時点におけるγ土地を評価することに一定の合理性が認められることは,前記(2)キcのとおりである。
そうすると,γ土地について,平成3年分路線価を基に評価した価額は,別表11のとおり,1億8180万4000円となるから,上記価額をもって,平成3年10月20日時点におけるγ土地の評価額とすることが相当である。
(d)ところで,原告は,区分所有建物の場合,建物が独立した取引の対象となることはないこと,賃貸事業用建物の価額が建物の階層により異なることから,区分所有建物の敷地であるγ土地の評価について,階層別効用率を加味すべきであるとしたうえで,原告の所有部分が3階であることから,階層別効用率を勘案して,更地価格の70パーセントで評価すべきであると主張する。
しかしながら,路線価に基づく評価方法を定めた財産評価基本通達
において,階層別効用率は採用されていないことに照らせば,γ土地を路線価に基づいて評価するに当たり,階層別効用率を採用して評価することは,相当でないというべきである。
また,Cは,区分所有建物の敷地の評価に当たり,階層別効用率を
考慮することが商慣習であり,当然である旨供述するが(甲39,93),このような事実を認めるに十分な証拠はなく,γ土地の時価を求めるに当たり,これを採用することが相当であるということはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(e)以上によれば,γ土地の平成3年10月20日時点における評価額は,1億8180万4000円とすることが相当である。
j土地(その他)(帳簿価額3751万9700円,被告主位的主張額3751万9700円,予備的主張額1億0488万4000円,原告主張額1億0488万4000円) 1億0488万4000円
原告は,上記科目に係る土地であるオーストラリアのマンションの敷地の評価額が104万豪ドルであり,平成3年10月20日時点の為替レート(1豪ドル100・85円)で換算した額は1億0488万4000円である旨主張するところ,被告は,上記主張を明らかに争わないものと認められるから,上記土地の評価額は上記金額とすべきである。
k地上権(帳簿価額9078万3665円,被告主位的主張額9078万3665円,予備的主張額2億3651万2710円,原告主張額4639万9463円)2億3651万2710円
(a)証拠(甲41ないし44,91,92,乙41)によれば,原告がサイパンに有する地上権(リース権)について,次の事実を認めることができる。
原告は,平成3年10月20日当時,サイパンのξ及びοに地上権を有していたところ,ξの地上権については,昭和61年4月24日に1平方メートル当たり8・66米ドルで取得し,昭和62年9月10日にその一部を1平方メートル当たり16・66米ドルで売却しており,οの地上権については,昭和63年8月3日に1平方メートル当たり22米ドルで取得した。
原告は,平成3年11月ころに,サイパンの地上権の売却を考えた
際,現地ブローカー等に電話で市場の動向を確認したところ,取引金額としては1平方メートル当たり50ないし70米ドルであるとの回答を得た。
そして,原告は,被告による本件各更正処分に係る調査の際,上記回答を踏まえ,近くのエリアにおけるゴルフ場開発計画など,将来的な需要を見込んだ取引価額として,各地上権とも1平方メートル当たり55米ドルと評価した資料を被告に提出した。
上記単価を地上権に係る土地の地積(合計3万3517平方メートル)に乗じて算出した金額184万3435米ドルを平成3年10月20日時点の為替レート(1米ドル128・30円)で換算した金額は,2億3651万2710円である。
また,原告は,上記資料において,B.Pリソーセス社の純資産価額の算定に当たり,同社の保有するサイパンのリース権を,平成2年6月の売買実例に基づき,1平方メートル当たり40米ドルと評価している。
その後,原告が平成3年当時のサイパンにおける近隣のリース権の
具体的な取引事例3件を調査した結果,これらの取引に係る契約書に記載されている取引価額の平均値は,1平方メートル当たり10・79米ドルであった。
(b)以上に基づいて,原告がサイパンに有する地上権の平成3年10月20日時点における評価額について検討する。
原告が昭和62年に一部売却した地上権の単価は,昭和61年に取得した際の単価の約2倍であり,さらに,証拠(乙41)及び弁論の全趣旨によれば,原告がサイパンに有する各地上権の単価の時価はほぼ同額であると認められるところ,昭和63年に取得した地上権の単価は,昭和61年に取得した際の単価の約2・5倍であることが認められる。
そして,このようなサイパンにおける地上権の価格の動向に照ら
せば原告がサイパンに有する地上権の平成3年10月20日時点における単価が,昭和63年当時の地上権の単価をさらに約2・5倍した金額に相当する1平方メートル当たり55米ドルであったとしても,直ちに不自然,不合理であるとまではいえず,このことは,他のサイパンの地上権が,平成2年6月の取引実例に基づき,1平方メートル当たり40米ドルと評価されていることからも裏付けられるというべきである。
これに対し,原告は,上記資料における地上権の単価(1平方メー
トル当たり55米ドル)が,被告による本件各更正処分に係る調査の際,被告からの要請を受けた原告が急いで回答しようとして,現地のブローカーに問い合わせたところ,当該ブローカーにふっかけられた金額であり,原告が地上権を有する土地が原野であるのに対して,上記単価が商業地の価格であることなどに照らしても,上記単価を採用して評価することは誤りであると主張する。
しかしながら,原告が主張する上記事実を裏付ける証拠はなく,
かえって,証拠(乙41)によれば,上記単価の算定の基礎とされた現地のブローカーの回答は,被告による本件各更正処分に係る調査に先立って得られたものであること,上記単価は,現地のブローカーの回答を踏まえながらも,原告が近隣の開発計画,将来の需要等について自ら検討を加えたうえで判断した金額であることが認められる。
このように,上記単価は,サイパンにおける地上権の取引の経験
を有する原告が,自ら検討したうえで判断したものであることに加え,上記金額が,本件各更正処分以前に原告自身が被告に示したものであることからすれば,上記単価は信頼性の高いものということができ,原告の上記主張は採用できないというべきである。
また,原告は,平成3年ころにおける他のサイパンにおけるリース
権の具体的な取引事例に基づいて,原告の有する地上権の単価が1平方メートル当たり10・79米ドルである旨主張する。
この点,地上権の価格を決定づける要因は多様であるところ,こ
のような要因の多くについて明らかでない上記取引事例が,原告の有する地上権を評価する際の基礎とすべき類似取引事例として相当であるか否かを判断することが困難なことに照らせば,上記単価をもって原告の地上権を評価することが相当であると認めることはできない。
(c)このようなことからすれば,原告がサイパンに有する地上権の評価は,1平方メートル当たり55米ドルの単価に,地積3万3517平方メートルを乗じた価額184万3435米ドルを,平成3年10月20日の時点における為替レート(1米ドル128・30円)により換算した金額である,2億3651万2710円とすることが相当である。
l出資金(帳簿価額7383万1000円,被告主位的主張額7383万1000円,予備的主張額1億0953万5000円,原告主張額9009万5000円)1億0953万5000円
(a)被告は,予備的主張において,出資金のうち,太平洋クラブカントリー,立野クラシックゴルフ倶楽部及び習志野カントリークラブのゴルフ会員権について,それぞれ1800万円,2600万円及び2080万円と評価することが相当である旨主張するところ,証拠(乙41,42)によれば,上記主張に係る評価額は,関東ゴルフ会員権取引業協同組合が平成3年10月20日時点における上記各ゴルフ会員権の買相場として回答した金額に基づくものであること,原告も,本件各更正処分に係る調査の際提出した資料において,上記各ゴルフ会員権の評価額として,会員権取引業者に確認するなどして,それぞれ2200万円,2700万円及び3900万円と記載していることが認められる。
したがって,これらの事実に照らせば,上記各ゴルフ会員権につい
ては,それぞれ1800万円,2600万円及び2080万円をもって評価額とすることが相当というべきである。
(b)これに対し,原告は,取引数が少ないゴルフ会員権について,取引事例をそのまま客観的交換価値とすることは危険であるとして,相続税法に関する通達を引用したうえで,上記各ゴルフ会員権を取引相場の7割で評価すべき旨主張する。
しかしながら,前記(a)の各評価額は,上記各ゴルフ会員権の取引相場を照会した結果に基づくものであり,原告が本件各更正処分に係る調査の際,会員権取引業者に確認するなどして被告に提出した価額よりも低額であることに照らせば,上記各ゴルフ会員権の評価額について,さらに評価の安全を考慮して減額すべきであるとはいえないし,原告がその主張において引用する通達(昭和48年2月2日付け直資33)は,相続税に関する通達であって,法人税額の算定のために企業継続を前提として原告の純資産価額を評価するに当たって,上記評価額に上記通達を適用して減額評価しないことが不相当ということはできない。
したがって,原告の上記主張は,採用できないというべきである。
(c)そして,上記各ゴルフ会員権以外の原告の出資金について,帳簿価額合計4473万5000円をもって評価額とすべきことは,当事者間に争いがないから,前記(a)の上記各ゴルフ会員権に係る評価額合計6480万円と,それ以外の原告の出資金にかかる帳簿価額を合計した金額である1億0953万5000円をもって,原告の出資金の評価額とすることが相当である。
m差入保証金(帳簿価額15億6763万2707円,被告主位的主張額15億6763万2707円,予備的主張額14億9793万5207円,原告主張額14億9793万5207円)14億9793万5207円
原告の差入保証金を評価するに当たり,後記tの賃借借家権の評価に含まれる差入保証金の帳簿価額6669万7500円及び返還されない入会金の帳簿価額300万円をそれぞれ控除すべきことは,当事者間に争いがない。
したがって,原告の差入保証金は,帳簿価額合計15億6763万2707円から上記各金額を控除した,14億9793万5207円と評価すべきである。
n投資備品(帳簿価額5053万4232円,被告主位的主張額5053万4232円,予備的主張額1912万1692円,原告主張額1912万1692円)1912万1692円原告は,投資備品の評価額を1912万1692円とすべきであると主張し,被告はこれを争わないから,投資備品の評価額は,1912万1692円とすることが相当である。
o投資有価証券(平山ビルサービスの株式)(帳簿価額1億0780万8800円,被告主位的主張額2億0660万4000円,予備的主張額2億1895万2000円,原告主張額1億6214万4000円)2億1153万6000円
平山ビルサービスの純資産価額は,後記(4)のとおり,2億3504万3089円であり,同社の発行済株式総数は4万株であるから,同社の株式の時価は,1株当たり5876円となるところ,前記「前提となる事実」(2)オd及び弁論の全趣旨によれば,原告が平成3年10月20日の時点で,平山ビルサービスの株式3万6000株を保有していたことが認められるから,原告の保有する平山ビルサービスの株式の同日時点における評価額は,2億1153万6000円となる。
p投資有価証券(上場)(帳簿価額2億4852万0385円,被告主位的・予備的主張額2億9717万2240円,原告主張額2億9717万2240円)2億9717万2240円
原告の保有する上場会社の投資有価証券の評価額を2億9717万2240円とすべきことは,当事者間に争いがない。
q投資有価証券(その他)(帳簿価額4億6427万3899円,被告主位的主張額4億6427万3899円,予備的主張額3億7144万1315円,原告主張額1億6083万6610円)3億7144万1315円
(a)上記科目に係る投資有価証券のうち,ファーニーズ社の株式について,同社の純資産価額に基づいて評価すべきことは,当事者間に争いがないところ,原告は,ファーニーズ社の平成3年6月期の貸借対照表(甲20)に計上されている土地,建物及び設備備品の同年11月15日時点における評価額が662万5000豪ドルにすぎず,同社は債務超過に陥っていることから,その株式は0円と評価すべきであると主張する。
しかしながら,上記評価額が収益還元法によるものであり,取得後
間もない土地を含む評価であるにもかかわらず,帳簿価額を著しく下回ることや,上記評価額に含まれる資産の内容が必ずしも明らかでないことは,前記c(b)のとおりであって,同社の純資産価額を評価するに当たり,土地,建物及び設備備品を上記評価額に基づいて評価することは,相当でないというべきである。
そうすると,ファーニーズ社の土地,建物及び設備備品の評価に当
たっては,他に適切な評価方法が見当たらない以上,平成3年6月期の貸借対照表における帳簿価額に基づいて評価することもやむを得ないというべきである。
そこで,上記各資産を含むファーニーズ社の資産及び負債の価額に
ついて,平成3年6月期の貸借対照表(甲25)記載の価額を原則として採用することとし,貸倒引当金及び総業費を0円と評価する方法により算出すると,別表27の「被告の評価額」欄記載のとおりの金額となり,これに基づいて同社の純資産価額を算出し,1株当たりの純資産価額を求め,原告の所有株式数192万5000株(乙41により認める。)を乗じ,平成3年10月20日時点における為替レート(1豪ドル100・85円)により換算すると,別表27記載のとおり,1億2230万5837円となるから,同額をもって,原告の有するファーニーズ社の株式の評価額とすべきである。
(b)また,上記科目に係る投資有価証券のうち,B.Pリソーセス社の株式について,同社の純資産価額に基づいて評価すべきことは,当事者間に争いがないところ,原告は,同社が保有するリース権について,前記k(a)のサイパンにおける取引事例3件の単価の平均値である,1平方メートル当たり10・79米ドルをもって評価すべきであるとし,別表19のとおり,上記リース権を25万3652・43米ドルと評価したうえで,B.Pリソーセス社の株式の純資産価額を1131万6060円と主張する。
しかし,原告が主張する単価を算定した基礎となる取引事例が,上
記リース権を評価する際に参酌すべき類似取引事例として適切か否か不明であり,上記単価をもって上記リース権を評価することが相当であるといえないことは,前記k(b)のとおりである。
他方において,証拠(乙41)によれば,原告が本件各更正処分に係る調査に当たり被告に提出した資料において,平成2年6月の売買実例に基づき,上記リース権の単価を1平方メートル当たり40米ドルと評価したうえで,その評価額を94万0324米ドルとしたことが認められるところ,上記金額は,原告が自ら適正であるとして被告に提出した金額であること,上記金額が上記リース権の時価として相当でないことを認めるに足りる主張,立証がないこと,上記リース権の帳簿価額が明らかでないことに照らせば,上記リース権の評価額については,上記金額を採用することが相当である。
そこで,上記リース権を94万0324米ドルとしたうえで,原告が本件各更正処分に係る調査に当たり被告に提出した資料における各科目の金額を前提に,創立費及び開業費を0円と評価して,B.Pリソーセス社の株式の純資産価額を算定すると,別表28記載のとおり,77万6421・89米ドルとなり,前記(a)と同様の方法により,原告の所有するB.Pリソーセス社の株式の評価額を算定すると,同表記載のとおり,9961万4928円となる。
(c)そして,上記科目に係るその余の有価証券について,合計1億4952万0550円と評価するのが相当であることは,当事者間に争いがないから,上記科目に係る有価証券の評価額は,上記金額に,ファーニーズ社の株式の評価額1億2230万5837円及びB.Pリソーセス社の株式の評価額9961万4928円を加算した,合計3億7144万1315円と評価することが相当である。
r長期貸付金(帳簿価額7億4479万8251円,被告主位的主張額7億4479万8251円,予備的主張額6億6038万1992円,原告主張額4億6667万8278円)6億6038万1992円
原告の長期貸付金のうち,外貨建てに係る長期貸付金の帳簿価額が
425万5053・43豪ドル及び66万4217米ドルであり,平成3年10月20日時点の為替レート(1豪ドル100・85円,1米ドル128・30円)で換算するとそれぞれ4億2912万2138円及び8521万9041円となること,邦貨建てに係る長期貸付金の帳簿価額が1億4604万0813円であることは,当事者間に争いがない。
しかるに,原告は,ファーニーズ社に対する長期貸付金418万1822豪ドルについて,同社の資産及び営業状態にかんがみ,回収可能率54・07パーセントによる減額評価をすべき旨主張するが,原告のファーニーズ社に対する債権の評価に当たり,このような減額をすることが相当でないことは,前記c(b)のとおりである。
したがって,外貨建てに係る長期貸付金の邦貨換算額と,邦貨建てに係る長期貸付金の帳簿価額の合計6億6038万1992円をもって,長期貸付金の評価額とすべきである。
s長期立替金(帳簿価額1億7953万3452円,被告主位的主張額1億7953万3452円,予備的主張額1億6279万9259円,原告主張額1億1691万4173円)1億6279万9259円
原告の長期立替金のうち,外貨建てに係る長期立替金の帳簿価額が
99万5564・51豪ドルであり,平成3年10月20日時点の為替レート(1豪ドル100・85円)で換算すると1億0040万2680円となること,邦貨建てに係る長期立替金の帳簿価額が6239万6579円であることは,当事者間に争いがない。
また,原告は,前記rと同様,ファーニーズ社に対する長期立替金
99万0602豪ドルについて,回収可能率54・07パーセントによる減額評価をすべき旨主張するが,このような減額が相当でないことは,前記c(b)のとおりである。
したがって,外貨建てに係る長期立替金の邦貨換算額と,邦貨建てに係る長期立替金の帳簿価額の合計1億6279万9259円をもって,長期立替金の評価額とすべきである。
t賃借借家権(帳簿価額1億4158万9389円,被告主位的主張額1億4158万9389円,予備的主張額1億7000万円,原告主張額1億7000万円)1億7000万円
原告が有するθビル1階及び3階並びにιビル1階の借家権について,原告が本件各更正処分に係る調査に当たり被告に提出した資料に基づいて評価した金額の合計1億7000万をもって評価額とすることが相当であることは,当事者間に争いがないから,賃借借家権の評価額は上記金額とすべきである。
u保証料,組合加入金,プログラム料及び開発費(帳簿価額各28万5000円,170万円,31万2000円,1億1666万6667円,被告主位的・予備的主張額0円,原告主張額0円)0円
上記各科目をいずれも0円と評価すべきことは,当事者間に争いがない。
v減価償却費(帳簿価額0円(記載なし),被告主位的主張額0円(主張なし),予備的主張額△2032万4000円,原告主張額△2032万4000円)△2032万4000円
被告は,減価償却資産について,平成3年8月1日から同年10月20日までの期間に対応する減価償却費として2032万4000円を資産の額から控除することが相当である旨主張し,原告はこれを争わないから,上記金額を減価償却費として資産の額から控除することとする。
w賞与引当金(帳簿価額5000万円,被告主位的主張額5000万円,予備的主張額0円,原告主張額5891万4852円)0円
法人税額を算定するために企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行う場合,評価時点において現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,賞与引当金を負債に計上すべきでないことは,前記(2)スのとおりである。
また,原告が賞与引当金として主張する金額のうち,平成3年7月期決算賞与支給明細書に記載された決算賞与の支給額合計440万円については,同年10月20日の時点で支給日が到来しておらず,「総務部社員の決算慰労金支給伺い書」に記載された決算慰労金106万円についても,同日の時点で支給が決定されていたことを認めるに足りる証拠はないから,これらについても,評価時点において現実に具体的な債務として確定していないことに照らして,負債に計上することは相当でないといわざるを得ない。
x退職給与引当金(帳簿価額309万6109円,被告主位的・予備的主張額309万6109円,原告主張額1736万6124円) 309万6109円(a)前記のとおり,企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行うに当たり,評価の時点において現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,退職給与引当金ないし退職金についても,評価の時点において退職の事実がない限り,原則として負債に計上しないことが相当である。
もっとも,財産評価基本通達186は,法人税法55条2項に規定する退職給与引当金勘定の金額に相当する金額について,負債に計上することを認めているが,上記法人税法の規定は,退職金が将来費用として支出される蓋然性が高く,その金額をある程度合理的に算出できることにかんがみ,所得の計算上,特に損金の額に算入することを認めたものであり,財産評価基本通達は,上記退職給与引当金について,具体的な債務として確定していないものの,政策的な立場から,特にこれを負債として計上することを認めたものと解されることからすれば,上記規定の要件を満たす退職給与引当金については,純資産の価額から控除する負債として計上することが認められるというべきである。
(b)そこで検討するに,原告の退職給与引当金として帳簿上計上された309万6109円については,上記の理由から,これを負債として計上することが相当であるが,原告が退職金として負債に計上すべきことを主張する金額のうち,309万6109円を超える部分については,退職給与引当金勘定に繰り入れられていないことから,法人税法55条2項の要件を満たす金額ということはできず,負債として計上することは認められないというべきである。
また,原告は,平成3年10月20日時点において給付すべき退職金の合計額が1736万6124円であると主張するが,上記主張に係る退職金の支給対象者について,同日において実際に退職した者が存在することを認めるに足りる証拠はない。
(c)したがって,退職給与引当金の評価額は,309万6109円とすることが相当である。
y株主配当金及び役員賞与金(帳簿価額各0円(記載なし),被告主位的主張額各0円(主張なし),予備的主張額1000万円及び790万円,原告主張額1000万円及び790万円)1000万円及び790万円
原告決算報告書の利益処分計算書に記載された株主配当金及び役員賞与金の金額が,それぞれ1000万円及び790万円であって,これらを負債に計上することが相当であることは当事者間に争いがないから,上記各金額を株主配当金及び役員賞与金として,それぞれ負債に計上すべきである。
z原告の資産及び負債に係る各勘定科目のうち,上記aないしy以外の各勘定科目について,帳簿価額により評価すべきことは当事者間に争いがないところ,これらの各勘定科目の評価額は,別表6のとおりである。
ウ原告の純資産価額に関する結論
以上によれば,原告の平成3年10月20日時点における純資産価額は,別表30のとおり,9億0036万1622円と評価することが相当である。
(4)平山ビルサービスの純資産価額について
ア総論
前記のとおり,原告は,平成3年10月20日の時点において,平山ビルサービスの発行済み株式総数4万株の過半数に当たる3万6000株を保有していたものであるところ,弁論の全趣旨によれば,同社の株式については,証券取引所に上場されておらず,気配相場のある株式にも当たらず,評価の参考になる売買実例や,事業規模等が類似する他の法人の株式も見当たらないこと,同社が同日以降も解散することなく営業を継続していることが認められるから,同社の株式の時価についても,企業継続を前提として,時価純資産価額方式により評価することが相当である。
そこで,以下,平成3年10月20日の時点における平山ビルサービスの時価純資産価額について,資産及び負債に係る各勘定科目ごとに検討する。
イ平山ビルサービスの純資産価額に関する具体的な検討
a有価証券(帳簿価額1億4139万9133円,被告主位的・予備的主張額1億4913万6080円,原告主張額1億4913万6080円)1億4913万6080円平山ビルサービスの保有する有価証券(上場株式)について,証券取引所における平成3年10月18日の取引価格の終値を基に,別表10のとおり算定した金額1億4913万6080円をもって評価するのが相当であることは,当事者間に争いがないから,上記金額を有価証券の評価額とすべきである。
b貸倒引当金(帳簿価額△130万円,被告主位的主張額△130万円,予備的主張額0円,原告主張額△130万円) 0円
取引相場のない株式の価額を求めるためにり,企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行う場合には,現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,貸倒引当金についても,これを負債として計上することが相当でないことは,前記(2)ウaとおりである。
c内装設備(帳簿価額831万2378円,被告主位的・予備的主張額831万2378円,原告主張額0円)831万2378円
証拠(甲56)によれば,上記科目に係る帳簿価額は,いずれも賃借不動産における内装設備費,空調工事費,改修工事費及び消火栓工事費の合計額でありることが認められるところ,原告は,これらの設備について,平山ビルサービスが賃貸借契約の終了時に原状回復義務を負うか,又は原状回復に代えて賃貸人に無償で所有権を移転しなければならないものであって,独立した所有権が認められず,有益費償還請求権の対象にもならないから,交換価値は存在しない旨主張する。
しかしながら,本件株式の評価時点において,これらの内装設備が資産として実際に存在し,原告の事業の用に供されていることに照らせば,資産としての価値が認められるべきであり,その評価は帳簿価額によることが相当であることは,前記(3)イgのとおりである。
したがって,内装設備の評価額は,831万2378円とすることが相当である。
d工具器具備品(帳簿価額2756万8565円,被告主位的・予備的主張額2756万8565円,原告主張額1929万7995円)1929万7995円原告は,平山ビルサービスの工具器具備品について,賃貸物件に備え付けられていることから,帳簿価額の70パーーセントで評価すべき旨主張するところ,被告は,上記工具器具備品が建物とともに賃貸に供されていることを明らかに争わず,また,建物とともに賃貸に供されている工具器具備品について,建物と同様の割合による減額評価を認めることが相当であることは,前記(2)カのとおりであるから,上記工具器具備品については,帳簿価額の70パーセントで評価することが相当である。
したがって,原告の工具器具備品の評価額は,帳簿価額2756万8565円の70パーセントに相当する,1929万7995円とすべきである。
e出資金(ゴルフ会員権)(帳簿価額1760万円,被告主位的主張額1760万円,予備的主張額2860万円,原告主張額2080万円)2860万円平山ビルサービスの保有するゴルフ会員権のうち,富士エースカントリークラブの会員権を260万円と評価すべきことは,当事者間に争いがない。
また,立野クラシックゴルフ倶楽部のゴルフ会員権について,2600万円と評価すべきであり,評価の安全を考慮して減額すべきでないことは,前記(3)イlのとおりである。
したがって,原告の出資金(ゴルフ会員権)の評価額は,上記各価額の合計金額である,2860万円とすることが相当である。
f権利金(帳簿価額128万7406円,被告主位的主張額128万7406円,予備的主張額0円,原告主張額0円)0円
被告は,予備的主張において,平山ビルサービスの権利金が返還されない権利金であることから,資産として評価しないことが相当である旨主張するところ,原告はこれを争わないから,上記権利金は評価すべきでない。
g減価償却費(帳簿価額0円(記載なし),被告主位的主張額0円(主張なし),予備的主張額△266万1000円,原告主張額△266万1000円)△266万1000円
被告は,減価償却資産について,平成3年8月1日から同年10月20日までの期間に対応する減価償却費として266万1000円を資産の額から控除することが相当である旨主張し,原告はこれを争わないから,上記金額を減価償却費として資産の額から控除することとする。
h賞与引当金(帳簿価額900万円,被告主位的主張額900万円,予備的主張額0円,原告主張額2165万9267円)0円
法人税額を算定するために企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行う場合,評価時点において現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,賞与引当金を負債に計上すべきでないことは,前記(2)スのとおりである。
i退職給与引当金(帳簿価額1052万0110円,被告主位的・予備的主張額1052万0110円,原告主張額(退職金)2630万0275円)1052万0110円(a)法人税額の算定のために企業継続を前提として時価純資産価額方式により評価を行うに当たり,評価の時点において現実に具体的な債務として確定していないものを負債に含めることは相当でないから,退職給与引当金ないし退職金についても,評価の時点において退職の事実がある場合や,法人税法55条2項に規定する退職給与引当金の場合に限り,負債として計上することが相当であることは,前記(3)イxのとおりである。
(b)そこで検討するに,平山ビルサービスの退職給与引当金として帳簿上計上された1052万0110円については,上記の理由から,これを負債として計上することが相当であるが,原告が退職金として負債に計上すべきことを主張する金額のうち,1052万0110円を超える部分については,退職給与引当金勘定に繰り入れられていないことから,法人税法55条2項の要件を満たす金額ということはできず,負債として計上することは認められないというべきである。
また,原告は,平成3年10月20日時点において給付すべき退職金の合計額が2630万0275円であると主張するが,上記主張に係る退職金の支給対象者について,同日において実際に退職した者が存在することを認めるに足りる証拠はない。
(c)したがって,退職給与引当金の評価額は,1052万0110円とすることが相当である。
j株主配当金及び役員賞与金(帳簿価額0円(記載なし),被告主位的主張額0円(主張なし),予備的主張額200万円及び160万円,原告主張額200万円及び160万円)200万円及び160万円
平山ビルサービス決算報告書の利益処分計算書に記載された株主配当金及び取締役賞与金の金額が,それぞれ200万円及び160万円であって,これらを負債に計上することが相当であることは当事者間に争いがないから,上記各金額を株主配当金及び役員賞与金として,それぞれ負債に計上すべきである。
k平山ビルサービスの資産及び負債に係る各勘定科目のうち,上記aないしj以外の各勘定科目について,帳簿価額により評価すべきことは当事者間に争いがないところ,これらの各勘定科目の評価額は,別表7のとおりである。
ウ平山ビルサービスの純資産価額に関する結論
以上によれば,平山ビルサービスの平成3年10月20日時点における純資産価額は,別表31のとおり,2億3504万3089円と評価することが相当である。
(5)本件株式の評価額に関する結論
ア以上によれば,平山不動産の資産及び負債の各勘定科目の平成3年10月20日時点における評価額は,前記(2)アないしソのとおりであり,同社の同日時点における純資産価額は,別表29のとおり,15億2079万4920円であると認められる。
したがって,平山不動産の発行済全株式である本件株式の適正な価額は,15億2079万4920円となる。
イこれに対し,原告は,本件評価合意書における本件株式の評価方法にも合理性が認められるとして,本件評価合意書における平山不動産の純資産価額評価に基づく本件株式の評価額9億4328万円をもって,本件株式の適正な価額と認めることが相当である旨主張する。
しかしながら,本件評価合意書に基づく上記評価額は,前記アにおいて求めた平山不動産の純資産価額15億2079万4920円を大きく下回るのみならず,その評価時点及び評価方法においても,本件評価合意書における評価時点である平成2年12月31日と本件株式の引渡しの日である平成3年10月20日との間に約10か月の時間的経過があること,清算所得に対する法人税額等相当額を控除していること等,相当とはいえない点のあることが認められる。
また,本件評価合意書の評価においては,平山不動産が保有する原告の株式の評価について,原告の純資産価額に基づく評価額に100分の50の割合を乗じており,さらに,原告の平山ビルサービスに対する出資の評価においても,同様の割合を乗じていることが認められるところ(乙2),原告は,原告及び平山ビルサービスが多額の不良債権等を有することから,このような評価をした旨主張するが,このような評価方法が相当でないことは,前記(3)イc(b)のとおり,債権において回収率を考慮した減額評価を行うことが相当でないことからも,明らかというべきである。
このようなことからすれば,本件評価合意書における評価は,前記アにおいて求めた平山不動産の純資産価額と比較して,合理性が乏しいといわざるを得ないから,本件評価合意書に基づく上記評価額をもって,本件株式の適正な価額であるということはできない。
(6)本件株式に係る受贈益の金額について
前記(5)アのとおり,本件株式の平成3年10月20日時点における時価は,15億2079万4920円と認めることが相当であるところ,原告は,本件売買契約により,本件株式を9億4328万円で購入したものであり,原告による本件株式の購入価額が,本件株式の譲受けの時点における時価と比較して低廉であることは明らかというべきであるから,原告には,時価と購入価額との差額に当たる5億7751万4920円の受贈益が発生したものと認めることができる。
7原告に発生した受贈益の計上時期(争点5)について
原告は,原告が本件株式を低廉な価額で取得したことにより受贈益が発生したとしても,その発生時点は,本件売買契約を締結した平成3年3月27日であるから,上記受贈益は,原告の同年7月31日までの事業年度において計上されるべきであり,本件各更正処分が上記受贈益を本件事業年度において計上したことは違法である旨主張する。
そこで検討するに,法人税法における所得とは,経済上の利得を意味するものであり,所得の発生の有無は,実現した経済的成果に即して決せられるべきであるから,当該所得が実現した時点をもって,所得の発生時点とすべきであることは,前記3(2)のとおりである。
そうであるとすれば,本件株式の譲受けによる原告の受贈益は,その発生の基となる本件株式を離れて取引されるものでなく,本件株式の引渡しの時点においてその有無及び金額が確定するものであるから,本件売買契約を締結した時点において,上記受贈益が実現したということはできず(このことは,特に本件売買契約の場合,本件覚書において,平山不動産の平成3年7月期の確定決算書の内容に基づく売買価額の修正が想定されていたことからも裏付けられる。),上記受贈益は,本件株式が原告に引き渡された時点において,原告に確定的に移転することにより,はじめて実現したものというべきである。
したがって,原告に上記受贈益による所得が発生した時点は,本件株式が引き渡された時点である同年10月20日というべきであるから,これを本件事業年度における所得として計上することは相当であって,原告の上記主張は理由がないといわざるを得ない。
8理由附記の不備の主張(争点6)について
原告は,本件事業年度の法人税を青色申告により行ったものであるところ,本件更正通知書に附記された更正の理由からは,本件株式の評価時点が不明であるから,本件法人税更正処分には理由附記の不備の違法がある旨主張する。
そこで,本件更正通知書の理由附記に不備があるか否かについて検討するに,法人税の青色申告に対し,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては,その更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから,更正通知書記載の更正の理由が,そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものではないとしても,更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り,法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないと解される(前掲最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決)。
そして,本件更正通知書に附記された更正の理由は,前記「前提となる事実」(3)アcのとおりであるところ,その内容は,原告による本件株式の評価額の算定における誤りを具体的に指摘し,本件株式を再評価した場合の価額を示して,当該金額と当初の契約金額の差額が受贈益となることから,これを本件事業年度の所得金額に加算するというものであって,納税者である原告による帳簿書類の記載自体を否認するものではなく,本件株式の評価について,原告と法的な評価を異にしたことに基づくものであることが認められる。
そうであるとすれば,本件更正通知書に附記された上記理由は,本件株式の評価時点については明らかにしていないものの,本件法人税更正処分の根拠について,更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示したものということができるから,更正理由の附記として不備があるということはできない。
したがって,本件法人税更正処分に,理由附記の不備の違法があるとはいえないから,原告の上記主張は理由がないというべきである。
9処分理由差し替えの違法の主張(争点7)について
(1)原告は,本件各更正処分が本件株式の評価時点を引渡しの日である平成3年10月20日としながら,被告が第2回口頭弁論期日に陳述した準備書面(一)において,評価時点を本件売買契約締結の日である同年3月27日と主張したことが,法人税法130条2項の趣旨を没却する理由の差し替えであって,認められない旨主張する。
しかしながら,被告は,本件訴訟において,当初,本件各更正処分と異なる評価時点における本件株式の評価を主張をしているものの,いずれの主張も,本件各更正処分における収益の計上に当たり,原告が譲り受けた本件株式の評価に係るものであって,課税される事業年度,課税の対象となる収益,課税の根拠等が同一であり,このような主張の変更は,係争処分の同一性を害するものでない。
(2)また,原告は,被告が第4回口頭弁論期日に陳述した準備書面(三)において,本件株式の評価時点を再度平成3年10月20日としたことが,原告の防御権を侵害し,違法である旨主張するところ,このような主張の変更は,原告の防御権の行使や,迅速な訴訟手続の観点から,決して望ましいものではないものの,変更後の評価時点が,本件各更正処分における評価時点と同一であり,原告が被告の主張する評価時点として当初想定していた時点であることにかんがみれば,原告の防御権の行使に格別の不利益を与えたとまではいえないから,原告の防御権を侵害した違法なものであるとまではいえない。
(3)そうであるとすれば,このような主張の変更が許容されないということはできない。
10調査義務違反の主張(争点8)について
原告は,本件法人税更正処分について,原告の法人税に関する帳簿書類等の調査を行わずにしたものであることから,法人税法130条1項に反して違法である旨主張する。
しかし,証拠(甲1,9)及び弁論の全趣旨によれば,本件法人税更正処分に先立って,資料調査第一課の担当職員が原告の帳簿書類等の調査を行ったことが認められるところ,東京国税局の職員である資料調査第一課の職員は,国税通則法27条に規定する「国税局の当該職員」に該当し,その調査に基づいて本件法人税更正処分が行われているのであるから,その後調査を引き継いだ調査部の職員が,帳簿書類等を直接検討して調査しなかったとしても,そのことから本件法人税更正処分が国税通則法27条及び法人税法130条1項に反して違法となるとはいえない。
また,原告は,そもそも本件法人税更正処分に先立って十分な調査が行われなかったことが違法である旨主張するが,原告はその裏付けとして,被告の評価方法や訴訟における主張の変更を挙げるところ,これらの事情をもって,十分な調査が行われなかったことを理由に本件法人税更正処分が違法となるとはいえない。
第4結論
1前記第3の6(6)及び7のとおり,本件売買契約による原告の本件株式の取得は,低廉な価額による資産の譲受けに当たり,原告には,本件事業年度において,時価と購入価額との差額に当たる5億7751万4920円の受贈益が発生したものと認められる。
また,前記第3の8ないし10のとおり,本件各更正処分に手続上の違法を認めることはできない。
2そして,本件各更正処分は,本件株式の時価が15億3104万4000円であり,本件株式の購入価額9億4328万円との差額に当たる5億8776万4000円の受贈益が原告に発生したとして行われたものであるところ,本件株式の取得により原告に発生したと認められる受贈益の額は,5億7751万4920円であるから,原告の本件事業年度における法人税に係る所得金額は,上記受贈益の額に,当事者間に争いのない法人所得金額1億6589万8112円を合計した,7億4341万3032円となる。
また,原告の本件課税事業年度における法人特別税の課税標準法人税額(ただし,国税通則法118条1項の規定により,1000円未満の端数切捨て後のもの)は,上記所得金額に対する法人税額2億7801万9875円から,法人税額の特別控除額310万8420円及び定額控除額400万円を控除した,2億7091万1000円となる。
したがって,本件各更正処分のうち,上記各金額を超える部分は,いずれも違法というべきである。
3よって,原告の請求は,主文第1項記載の限度において理由があるが,その余の部分については理由がないから,主文のとおり判決する。
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